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#19「心遣いとキモカワチュパカブラ」B

 時間は正午。由人の部屋には砂浜育鈴が作ったうどんが並べられていた。鰹節のつゆを使った普通のかけうどんだ。防子と雷男と共に昼食をしていた。

 どこにでもあるうどんに見えるが麺やつゆも職人が作った物を使っており、素材にこだわった一品だ。


「由人って高級な物とか食べたくないのか?いつも庶民的な物しか食べてないような気がすんだけど?」


「う〜ん、僕は食べられれば何でもいいかな。それに食べられるだけでもありがたいって思うし。」


「でも、もし食べたい物があったら遠慮なく言ってね。」


「ありがとう。防子。それにしても育鈴さんが作ったうどん美味しいな。」


「由ちゃんはまだ病み上がりだからね。食べやすいうどんを作ってくれたんだよ。本当は私が作る予定だったんだけどね。」


「そっか〜。悪いことしちゃったかな?育鈴さんも昼食に誘えば...それも悪いかな?」


「育鈴さんなら今日はもう家に帰ったよ。旦那さんに久々にデートに誘われたみたいで。」


 それを聞いた由人は驚き、啜っていたうどんを吐き出してむせてしまった。

 育鈴に旦那がいたという初耳に驚きを隠せなかった。

 この屋敷のほとんどは美形の人が多い。育鈴はもちろんのこと、この場にいる防子や雷男だってそうだ。結婚していても不思議ではない。

 育鈴とはそれなりに一緒にいる事は多かったが本人の口からはそんな話は出た事がなかったものだから、由人は一層衝撃が隠せなかった。


「育鈴さんの旦那さんの写真見た事あるけどー」


「えっ!?雷男知ってたの!?知っててナンパしてたの!?」


「ああ。知っていた。後、育鈴さんの事はナンパじゃなくて普通に褒めていただけだ!旦那さんは金髪でアクセサリーもジャラジャラ付けてて、チャラい感じの人だったな。」


「...やっぱりそういう男の人の方がいいんだ」


「よ、由ちゃん?」


 育鈴の旦那の特徴を聞いた由人は、顔を俯かせてため息をついた。


「こんな話を聞いた事があるんだ。いじめっ子といじめられっ子だったらいじめっ子の方が人生が充実出来るみたい。昔からヤンチャをしていた方が怖いもの知らずで恐怖というのを感じないんだろうな...」


 自分と違って劣等感を感じてしまい、つい愚痴をこぼしてしまう由人。


「...この前の無茶といい、由人って何か変にへそ曲がりな所があるよな。大体、全員がチャラチャラした奴に寄って来る訳じゃねぇだろ?」


「私はちゃんとした男の人の方がいいかな...」


「だからそんなに落ち込む事はねぇよ。」


「そうだね。気遣ってくれてありがとう。ところで二人は恋人は居る?」


「えっ!?い、居ないよそんな人!由ちゃんったら、聞くのが急すぎるよ!//」


「居たらナンパなんてしねぇよ。そんな事聞いてないで、さっさと昼食を済ませてくれ。俺たちもう完食したぞ。」


 話をして調子を取り戻した由人はうどんを完食して、食器を防子が回収して部屋を出ていった。

 しばらく経つとドアからノックの音が聞こえる。今日は訪問者が多い。

 訪問者は蔵馬愛剥路だった。失礼しますと言って部屋に入って来る。


「ごめんなさい!由君!わ、私、お仕事の方が忙しくて、由君の様子全然見れなくて!看病も出来なくて...うう...」


 今にも泣き出しそうな愛剥路に由人は慌てた様子を見せる。


「いやいやいいから!僕よりもやるべき事を優先して!気持ちだけで嬉しいから!だから泣かないでくれ!」


「ほ、本当ですか?」


「ああ、その心遣いだけでも僕は嬉しいよ。」


「え、えへへ//私も由君が元気になってくれて嬉しいです!」


 愛剥路は満面の笑顔で心から由人の完治を喜んだ。


「それにしても愛剥路さんの黄色いヘルメットがお姉さんだと聞いた時は驚いたな〜。」


「ごめんなさい。雷男君。今まで黙ってて。」


「え〜許せないですね〜由人が来る前からずっと屋敷に居るのに、今まで黙ってたなんて許せないですね〜。」


「ら、雷男?」


「そ、そんな!どうしたら許してくれるんですか!?」


「由人の事も由君って言うように、俺の事も雷君って呼ぶようにしたら許します。」


「わ、分かりました。本当にごめんなさい雷君!」


「ああーいいですねー!いい響きですよ!」


 なんだか喜劇の一幕で見たような気分になる由人だったが、そんな愛剥路に二人にした同様の質問をした。


「愛剥路ってさ、彼氏とかいる?」


「ふぇ!?か、か、彼氏なんて、そ、そんな、あ、あぅ//」


 愛剥路は顔を真っ赤にして、顔が俯いてしまいショートしてしまった。食器を片付けていた防子が部屋から戻ってくると、ショートした愛剥路を見て驚いていた。

 するとアリツフォンから警告音が鳴る。


「由人行くぞ!」


「雷男は今、博士にアリツフォンを預けてるでしょ?」


「そ、そうだったな...」


 博士がアリツフォンをアップデートすると言って全員のアリツフォンを預かっていたのだ。現在手元にあるのは、アップデートを終えている由人と防子だけだ。


「雷男は留守番を頼むよ!愛剥路に変な事しないでよ!」


 二人は現場に向かった。


 今度の現場は能野町の住宅街。チュパカブラカテラスは両手で岩石を投げて町の人々を襲っていた。


「キモ緑の怪物が岩投げて来るぞー!逃げろー!」

「グェー!」

「琴美危ない!キャー!」


 二人が現場に到着した時には、岩石に当たった人々が当たりに倒れていた。


「人々が...愛嬌は見た目だけみたいだ。」


「中身も大事って事だね。」


 二人はアリツチップをアリツフォンに挿し込む。


[Weapon In]

[Defence In]


電子音声の後に待機音が鳴る。


「「武着装!」」


掛け声を言って、CERTIFICATIONの文字をタップする。


[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]

[CERTIFICATION. In Charge of Defence.]


再び電子音声が聞こえた瞬間、二人の周りに光が纏い、アリツウェッパー、シーリアに武着装した。


「キモ緑!これ以上はやらせないぞ!」


「チュパ〜」


「ゴ〜」


 チュパカブラカテラスはゴリークを呼び出し、二人に襲わせる。

 二人はアリツサポートメカ(昆虫)を呼びだして、ゴリークの撃退を開始する。


「よだれを出しているのには気をつけなくちゃね!」


「チュパー!」


 ゴリークの撃退をしている二人にチュパカブラカテラスは岩石を投げた。

 ゴリークに当たっているのをお構いなしに投げ続ける。よだれを垂らしたゴリークにも当たり爆発が起こる。

 その所為でサポートメカが破壊されてしまい、消滅してしまった。

 二人はアリツシールドを出して岩石を防いだ。


「アリツハンドがあれば、岩を砕く事は出来るんだけど...どうする?由ちゃん」


「こうなったら打ち返す!」


 ウエッパーはアリツソードを出して、アリツブレイクチップを挿し込んでウェポンブレイクを発動。

 チュパカブラカテラスが投げて来た岩石をアリツソードをバットの様に振って撃ち返した。


「チュパ!?」


 打ち返した岩石は見事に命中した。

 ついでと言わんばかりによだれ垂らしのゴリークの何体かをチュパカブラカテラスに打ち返した。


「チュ...パ...」


 チュパカブラカテラスは膝を付き、ウエッパーはアリツガン、シーリアはアリツバリアを発動した。

 二人はそれぞれアリツブレイクチップを挿し込む。


[[Break Standby]]


待機音が鳴り始め、ウエッパーのアリツガンから四発のエネルギー状の巨大な針弾が発射され、チュパカブラカテラスの手足に命中して、近くの壁に貼り付けられる。


「チュパ〜!?」


「可愛い見た目して、人々を痛い目に合わせるなんて、とんでもないキモカワさんですね。」


「それはもうキモカワじゃない...キモいだけの生物だ。こいつで終いだ!」


[Weapon Break]

[Defence Break]


 それぞれブレイクを発動させエネルギー弾とバリアが発射された。


「「アリツガンバリアシューティング!」」


「チュパーー!」


 チュパカブラカテラスに命中し、人間の姿に戻り気を失った。

 二人はいつも通りの対処をした。


「では、これにて退散!」


 二人は屋敷に戻った。戻ると雷男が二人の事を迎えてくれた。


「お疲れお二人さん。愛剥路さんは正気に戻って、自分の仕事に戻ったぞ。」


「留守番ありがとう。雷ちゃん。」


「雷男、僕はこの戦いで学んだ事がある。」


「な、なんだよ。学んだ事って?」


「中身も大事と言う事を、ね。」


 それを聞いた雷男は首を傾げていた。

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