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#9「一夏の思い出」A

 今日もいつも通りの朝が来る。今は夏で日差しが差し込んでおり、この部屋...というよりこの屋敷の全ての部屋にはエアコンが設置してあるから快適で問題はない。しかし今日はいつもと違う所がある。今日の朝食を運んで目の前で一緒に食事をしているのは、防子ではなく同じくこの屋敷に仕えるメイドである砂浜育鈴さんである事だ。


「育鈴さん、今日は防子はどうしたんですか?」


「あれ?由人ちゃん聞いてないの?今日は柔子ちゃんと出かけるから休みですよ〜。」


「そ、そうなんですか?こっちは全く聞いてないんですけど...」


「あいつ!とうとう防子ちゃんを無理矢理誘いやがったのか!」


 一緒に食事をしている雷男が激昂していた。


「いや、でも防子も仕事とは言え、毎日僕に付きっきりというのも大変だから、こうやって友達と羽を伸ばすのも大事だと思うけどね。柔子ちゃんと一緒というのがちょっと心配だけど...」


「だから今日は私が防子ちゃんの変わりなの。よろしくね。由人ちゃん。」


 今日は育鈴さんが防子の代理になるみたいだ。それにしても今日の朝食は昨日の残りのシチューとロールパンなのだけれど、育鈴さんは僕と雷男と比べるとシチューの皿が大きい。そういえばこの人は前も寿司屋で三十皿食べたから多く食べる方だったのを思い出した。


「育鈴さん今日もいっぱい食べますね!いいですよ!」


「ありがとう。雷男君。」


「なぁ、今日は暑いからどっかに出かけないか?」


「暑いって、別に暑くないけど?」


「そうじゃなくて、俺達も羽を伸ばさねぇかと言ってるんだ!」


「いや、でもそんな急にさぁ...」


「柔子だって急に防子ちゃん誘って行ったんだから、俺達だっていいじゃねぇか!」


「だからって...」


「もちろん育鈴さんも一緒にな!」


「い、いいのかしら?」


「俺、お嬢様に許可取ってくるわ!」


 雷男はすぐさま部屋を飛び出して行った。まぁ、この屋敷も休める時は休めるみたいだし、それに俺は使用人じゃなくて住人扱いみたいだから、別に休もうと思えば休めるけど、雷男とか使用人は外出の許可なんて簡単に取れるものなのだろうか?


「なんか...すいません...育鈴さんもなんか巻き込んだような形になって」


「い、いいのよ。でも、やっぱり凄いわね雷男君。」


「凄い?」


「由人ちゃんの事をちゃんと考えて、自分から提案してくれるなんて。」


「そうなの?でも由人ちゃん、何だか疲れてるように見えてるから羽を伸ばす提案をしているように見えたんだけれど...」


「そ、そんな疲れてるように見えます?」


 確かに戦いをするようになってからリラックスする事が出来てなかったかもしれない。まさか僕の事を思ってこんな提案を?手に肘を付きながら考えていると、雷男が部屋に戻ってきた。


「俺達が由人の面倒見るって体だったらいいって!じゃあ早速行くか!」


「許可取れたのは分かったけど、どこに行くのさ?」


「夏といえば海だろ海!日照り輝く水着姿の女性達!最高だぜ!」


 ...やっぱり自分が楽しみたいだけなのでは?雷男はすでに道具を一式揃えており、僕達も各々一旦自分の部屋に戻り準備をしてガレージに集合する事にした。

 着替えを終えた僕達は屋敷のガレージに集まった。すると屋敷の所有しているミニバンの前に女性が立っていた。


「み、みなさんお待ちしてました!」


 待っていたのは、屋敷の車を用意していた蔵馬愛剥路だった。ヘルメットはしておらず素顔の状態で服装も半袖のTシャツにスカートの軽装で車の近くに立っていた。


「愛剥路今日はヘルメット被ってないんだ。」


「ほ、本当は被っていたいんですけど...お嬢様が素顔の状態で行くようにいわれたので...」


「海に行くのにヘルメット被ったままなのも変だものね〜。」


「愛剥路さんの素顔初めて見ましたよー!男らしい佇まいなのに、素顔はキュートなんて、もう最高っスよ!」


「あ、ありがとう。雷男君...でも、そう言われると...恥ずかしい//」


 僕達は愛剥路の運転するミニバンに乗って、能野町の海に向かう事にした。

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