マジックショー!(レベリング)
マジシャンLv2 : [パッシブ]マジックスキルの発動で2×[スキルの発動の際に自身のことを視界に入れているプレイヤー及びNPCの数]の経験値を獲得できる
「なるほど、このスキルのおかげで経験値が溜まったのか」
アリスは、この『始まりの街』でいちばん大きな広場の真ん中の噴水に立っている。この近辺にいる多くのプレイヤーがアリスのことを無意識に視界の中に入れているだろう。
アリスは、ステータスの相場が分からなかったが、マジシャンのステータスは戦闘には適していないだろうということは何となく予想がついていた。つまり、戦闘で経験値を稼いでレベルを上げるような、普通のレベリングはできない。しかしその代わりに、マジックショーを行うことで経験値を集めることができるのだろう。
「他のプレイヤーがどのくらいのペースでレベリング出来てるのか分からないけど、もしかしなくてもマジシャンはレベルを上げやすいのかも……」
◆◇◆
「さぁさぁ皆さんお立ち会い! 魔法使いとマジシャンをごっちゃにして、マジシャンになってしまった馬鹿な女のマジックショーだよ! せめて皆で笑っておくれー!」
アリスは大袈裟な身振り手振りで大声を張り上げた。なんだなんだと人が集まってくる。
「マジシャンと魔法使いを間違えちゃったんだって」
「さすがに草、急いでキャラメイクしたんやろなぁ、可哀想に」
「ログイン戦争の犠牲者だな、せめて弔ってやろう」
アリスは人を集めている最中にも、コインを右ポケットと左ポケットの間で何度もテレポートさせて経験値を稼いだ。
ちょっとした人だかりが出来ると、アリスはマジックショーを始めた。
「さぁてさぁてマジックショーを始めるぞ! そこのお兄さん、コインをくれるかい? そこのお姉さんも」
アリスは周りの人からコインを集める。
「はーい、ありがとねー」
そしてコインを普通に財布にしまった。
「よし! じゃあまずはハンカチのマジックをやろうか!」
「いや、コイン使わねぇのかよ!」
「金返せ!」
周囲から笑いとブーイングが巻き起こる。アリスはヘラヘラと笑って見せた。
「まぁまぁそんなに怒んないでよ、コインならもう返したからさ─────君たちのポケットにね」
アリスにコインを渡したプレイヤー達は、慌てて自分のポケットを確認する。プレイヤー達は、次々とポケットからコインを取り出した。
「おおー!」
「すげー!」
拍手が上がり、アリスは帽子を脱いでペコペコとお辞儀をした。
◆◇◆
アリスは思いつく限りのマジックを演じて見せた。人だかりが人だかりを呼び、最終的に、広場には100人ほどが集まる大盛況っぷりだった。
「さぁて私もいよいよネタ切れだ! 皆! 今日は私のマジックショーに付き合ってくれてありがとう! サーバー混雑が解消されて、私が魔法使いになれるよう、皆祈っておくれ〜!」
こうしてアリスの初公演は幕を閉じた。アリスは、『マジシャンネキ』として一躍有名人になった。
人だかりがはけた噴水で、アリスは所持金を確認した。文字通りの投げ銭を結構貰ったので、アリスの所持金はなんと1万ゴールドに増えていた。
「沢山貰えたね……そして、肝心の経験値は、と……」
アリスはおそるおそるステータス画面を開いた。マジックショー中は忙しくて、レベルアップ通知を確認する余裕がなかったのでどのくらいレベルが上がったのか分からなかったのだ。アリスのレベルは─────
「じゅ、14レベル!?」
なんと14レベルにまで上がっていた。『パーム』と『テレポート』のレベルも上がっており、しかも、新たなスキルまで習得していた。
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所有スキル
マジシャンLv14 : [パッシブ]マジックスキルの発動で14×[スキルの発動の際に自身のことを視界に入れているプレイヤー及びNPCの数]の経験値を獲得できる
パームLv2 : [マジック]
テレポートLv3 : [マジック]
マジシャンズハンドLv1 : [パッシブ]自身のDEX+3
アトラクトLv1 : 対象の注意を自身に引きつける 消費MP10
カリスマLv1 : [パッシブ]NPCとの交渉が有利に運びやすくなる