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4.責められる元聖女



 「思い出したぞ! お前、出来損ないの元聖女じゃないか!」


 指を突きつけられたエスメラルダは一瞬呆気に取られたものの、すぐに気を取り直し、とりあえず笑いをこらえて丸まりかかっている父の足をつねった。


「ようやく思い出していただき、嬉しく思いますわ。王太子殿下」

 エスメラルダは、スッと立ち上がって、うやうやしく頭を下げた。もちろん片足を引いてスカートをつまむのも忘れない。淑女ですもの。

 

「おお、あの聖女じゃったか」

「まあ、本当ですわ。よく見れば」


 国王陛下と王妃様にも思い出していただけたようだが、これっぽっちも嬉しくない。

 忘れられているのなら、そのままやり過ごそうと思っていたのに。


「だが、そなたはその怠惰によって、その称号を取り上げられたはず! なぜここにいるのか!?」


 ……お父様が呼ばれたからですけど。そのお父様に無理矢理連れて来られたからですけど。


「祈りを放棄して、贅沢三昧! さては、国庫が空になったのは、そなたのせいではないのか!?」


 は……? さっき税収は増えてるっておっしゃったじゃない。私がいたのはもう二年も前のことですのよ?

 それに、聖女用の予算を聞いたら、神官たちは王家がいくらでも負担してくれるって言ってらしたけど。


「今の言葉は聞き捨てなりませんな」

 ああ、お父様。あなたはいつも私の味方でいてくださるのね。

「国庫が空とはどういうことでしょうか。融資には担保というものが必要ですが」


 ……お父様……。


 そこで、国王陛下がようやく自分の息子をたしなめ始めた。

「こら。座らんか。仕方なかったのだ。まさか神官の誰も、偽物の聖女と見抜けないとは思うまい。今は、あの聖女の印もないただの娘じゃ。じきにまた新しい本物の聖女が現れ我が国を救ってくださる。

 おお、そうじゃ、それこそが、我が国の宝! 祝福された国なのだから、借りた金などすぐに返せるぞ!」


 もちろん、会頭は微笑みを浮かべたまま、それに首を縦に振ることはなかった。

「それは担保にはなりませんな。で、先ほどの国庫が空、というのは事実ですかな。もしそうならば、こちらでも改めてさせて頂かなければ。とても融資のご相談に乗ることは出来ません」

「いや、だから、新しい聖女が」

「金と聖女は関係ございません」


「ふぐぅ」

 国王陛下が変な声を出された。


 もしかして、国庫が空って本当なのかしら。私、聖女時代に買い集めた、今後値の上がりそうな宝石を、非常用の財源にと国庫に納めてから家に帰ったのですけれど。

 まさか、それには手をつけておりませんわよね? だって、あれから本当に値上がりして、かなりの価値になっていますもの。あれだけでもあれば担保にはなるはず。

 もちろん、これはお父様もご存知の事。


「ちなみに、いかほどの金額の融資をお望みでしょうか。私どもはあくまでも商売人。商売上、取引相手や支払い価格に応じて融資も致しますが、それもこれも回収の見込みがあってこそでございます」


「そ、そうじゃな、今は十の月であるからして、残りの今年の分で、金二千枚といったところかの」

「具体的な数字をお願いしたいのですが。さらには国庫に納められている金や品々の詳細な内容、及び、ここ数年の具体的な税収額もお願いしたい」

「ふ、ふぐぅ」


 あ、これは……。絶対に貸したらダメな相手ですわ。自分のお財布の中身を知らないのですもの。

 それにしても、大臣はなぜ出て来ないのかしら。あの方達ならば、流石にここまでひどくはないと思いたいけれど。


「国王陛下。担当の大臣をお呼びしては?」

 会頭は、今や本気の仕事モードの精悍な顔で言った。先ほどまで笑いを堪えて丸まっていたとは、誰が想像出来るだろうか。


「だ、大臣は休暇で旅行に行くと行ったきり、まだ戻っていなくてな」

「……職務を放棄して、でございますか?」


 あ……もしかして……。これ、持って逃げられたパターン……。

 それか、泥舟から逃げたパターン……。


「申し訳ございませんが、我が商会では融資は致しかねます。他をお当たり下さい」


「な、な、なんと不敬な! 国王陛下のご命令であらせられるぞ!」

 王太子が叫んだ。


 この方、大声で担当でいらっしゃるのね。


「ご命令だとおっしゃるのなら、融資は致しましょう。しかし、先ほど申し上げた通り、国庫の中身と、税収目録は改めさせていただきます。これは最低条件です」


「ふぐぅ……。し、仕方がない。許す」

 会頭はうやうやしく頭を下げ、実にさらっと言った。


「では、我が商会の会計主任と娘で改めさせていただきます。私は次の予定がございますので、先に失礼させていただきます」

「おい! 待て! お前の娘、あの偽物の聖女だぞ! 何か盗んだり、書類を改竄したりするかもしれん!」

「では、殿下ご自身なり、近衛なりに見張らせるとよろしいですよ。では、失礼」


 ……お父様は本当に、私と会計主任に丸投げして帰って行った。

 後で何かおねだりしてやるんだから!!



つづく……


お読みくださり、ありがとうございます!

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