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1.ヴェルエラ

 そもそも、ヴェルエラ自身、政略結婚で夫アルエストと結婚した。

 

 当時、まだ二十歳だった。



 ・・・

 ヴェルエラの家は、貴族だった。羊毛の生産と売買で利益を上げ、大貴族の仲間入りをしていた。

 アルエストの家であるハーネスト家と、ヴェルエラの家であるバーミリアン家は、歴史を辿ると同じ家から分かれた分家同士だった。バーミリアン家の財力でアルエストを出世させ更に領地を増やそうと言う、両家の利害が一致した。

 

 アルエストは五歳年上。最初の顔合わせの時は、お互い殆ど喋らなかった。この一か月後には正式に結婚と成り、初夜を過ごした。


 二人の間には、娘が一人いるが、息子は出来なかった。


 ヴェルエラは、中々男子が生まれない事で、自分は実家に戻されるのではないかと、気が気では無かった。今では考えられない程、くよくよと気に病み、自室に閉じ籠った。


 アルエストは、ある時、妻を湖まで連れ出した。ハーネスト家の別荘である。

 帆の付いた小さな船に乗り、ゆったりと過ごした。二人は何度も口づけを交わした。


 館に戻れば、二人は夕食もそこそこに体を結んだ。何度も。何度も。


 ヴェルエラは、枕に顔をうずめて泣いた。跡取りを産めない自分が情けなかった。夫の役に立ちたかった。

「ヴェルエラ」

暗闇の中で、夫が囁いた。

 ヴェルエラは、声を殺した。返事は出来ない。とっさに寝ているふりをする。

 アルエストは、右腕を折り畳んでその上に自分の頭を乗せると、左手で妻の髪を一房握ってキスをした。

「息子が必要なら、養子を取ればいい」

 背中で聞いていたヴェルエラは、息を飲んだ。

「俺にはお前が必要だ。お前は、ずっと俺の傍にいるんだ」

 ヴェルエラは、たまらず上半身を起こすと、夜目の利いて来た目で夫を見た。涙が止まらなかった。

 夫は、微笑んだ。

 ヴェルエラは、夫の胸に飛び込んだ。


 柔く。強く。熱く。

 二人は、一つになった。

 

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