清楚系(?)神様
暗黒を彷徨った。目も、耳も、感触も感じなかった。
何とか頭で思考を回す。(今は病院で意識を失っているだけ)そう思いたいが、あのトラックは八十キロは出ていた。生存は絶望的。運よく生きていたとしても、まともな生活はもうできないだろう。
何かを考えるたび、ノイズが邪魔をする。ないはずの体が、深淵に飲まれるような感覚に陥る。(まともに…何かを考えるのが辛くなってきた…)眠るように深く、深く、落ちていく…
変化は突然起きた。頭からノイズが消え、十時間もなかったはずの感覚が戻り、何かに座っている感じもする。
(まじの奇跡でどこもケガしてないとかか!?しかしそれだとしたらなんで座ってるんだ?)病院なら病室のベットでもれなく横にでもなっているはずだ。今の体の状態と周りの状況を確認するため、恐る恐る目を開けると…
ロリがいた。
俺の目の前になぜかロリがいる。「やっと起きたか…わらわがわざわざ起こしてやったんじゃ、感謝せい」
金髪の髪をストレートに伸ばし、修道服のような恰好をしている。顔は欧米風で結構整った顔立ちをしていて、一見すると普通の修道女だ。
しかし…「なんだこのクソガキ…」「クソガキとはなんじゃ!わらわは消える魂を救った清楚で最高に美しい神様じゃぞ!」「清楚は格好だけだろ!しかし、ここはどこだ?」
古代ギリシャに建てられた神殿にでも見える、建造物の真ん中で俺は質素な椅子に座らされている。「少なくとも病院じゃねえよな」「正解…ここは天界じゃ」「まぁ…状況的に考えてそうだよな…」「いや、おぬしは"死んだ"ということなのに妙に呑み込みが早いな。」正直、俺自身も自分の冷静具合に驚いている。ただ、状況的に考えて、心の中ではそうではないかと思っていた。「だけどお前が神は信じたくないな…」「なぜそこは呑み込めないのだ!まぁいい…早く手続きを済ませるながさきじゃ」「手続き?」「そう…お前はこれから転生するのじゃ」「転生!?やった!これでバイトとつまらん大学生活とおさらばだ!」ただ気がかりなことが一つ「どんなところにどんなところに転生するんだ?魔法のないただの紛争地域とかだと困るんだけど」「思い当たるのがあるはずじゃよ」思い当たるといってもそんな…「ヒント、図書館で見つけたやつ…」こいつ、なんつった?図書館?それでいて転生のは…「まさか…」「そう、過酷で筋肉であふれた世界じゃ」なんだそれ、超絶にいやだ「まぁ、さすがにそのまま送るのはかわいそうなのでな…ひとつ力をやる」「チート能力きたー無双して女の子にモテまくって…で、どんな能力なんだ?」「筋トレでの筋力値の増加がすごい、これがお前の能力」
なにを言っているのか全く分からない。
筋トレなんてマッチ棒と陽キャ組に馬鹿にされた俺とは遠いものだ。「おっと、もう時間じゃ…」「えっちょまっ…」「まぁ、おぬしも頑張ればなんとかなるじゃろ」俺の体は光に包まれ、転生完了。