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取り敢えずプロローグくらいは連続投稿

 さて、第一話。

 過去回想ここにいたるまでを自己紹介付きでお送りしよう。


 俺こと、優斗のことを一言で説明するのなら、「変わり者」と言う言葉が相応しいと思う。

 細かく言うと、人がやらないようなことを平気でやってしまう、同級生に嫌われている、チートな従姉妹がいる、主人公のような悪友がいる、凡そ日常とは思えない災難が襲いかかってくる、等々色々な理由があるのだが、全部まとめて「変わり者」とするのがこの場合俺を表すのに的を得ている。

 あとぶっちゃけ説明が楽。


 こんなことでは自己紹介とは足りえないかも知れないが、少なくともよく物語である様な普通の中学生とは程遠い人間ではある。

 普通の中学生は理由なく授業をサボッたりしないし、ましてや立ち入り禁止の筈の屋上の鍵を持ってたりせず、こうして屋上で寝転ぶだなんて漫画なんかでしかやらない行動を行う人間がまともである筈がない。


 だが、こうなってしまった経緯を事細かに説明するにはあまりに時間が足りない。

 なので、今は現状、俺の目の前で起こっている現象だけを簡潔に説明しよう。

 今、学校の屋上に魔法陣があるのだ。

 これには、幾ら優斗さんでもびっくりである。


 先程非日常をなんてことを言ってしまったが、それはあくまで物理法則内の話で、現実にある範囲の非日常。

 こんな科学社会に真っ向から立ち向かうためにあるような魔法陣ものに心当たりなんてある筈も無く、驚が無い方がおかしい。


 そうして、ひとしきり驚いてみせた後、俺のとった行動はシンプルに近付くというもの。

 これがどういう仕掛けかは分からないし、危険な物という可能性もあったが、溢れ出る好奇心には勝てなかったのだ。


 魔法陣は幾何学な模様と日本語しか取得してない俺には読めぬ文字という構成で作られていたが、近付いて目を凝らすと、その読めない文字は知っている文字へと変化していった。

 まるでグーグルの翻訳機能を使ったかのように、読めない文字から日本語へと変化していった魔法陣にはこうかかれている。


「異世界へと渡りたい気持ちがあるのならば、この上に……ね」


 悩む時間は勿体無かった。

 右足から前へと進み出た俺の顔は、多分笑みを浮かべていただろう。




「では、受付番号58番のユウトさま、こちらかけたままお待ち下さい」

「あっ……はい」


 指示された通り、椅子にかけて呼ばれるのを待つ優斗さん。

 いや、なんか、違くね? これ?


 魔法陣に乗って出た先は、まさかの受付だった。

 しかもロビーにはごった返す、おおよそ現代人としか思えない人々たち。


 受付の人に声をかけるとエントリーシートを書かされ、ここへと通され、面接の準備をしておくようにと説明された。

 そう、魔法陣を抜けた先は面接会場だったのだ! 何故に?


 隣の人はぴっちりしたスーツで、「御界に志望した動機は……」なんて、ことをぶつぶつと呟いて、面接の想定をしている。

 御界ってなんだ? 御社みたく、御異世界を略して御界ってことか?


 もしかして、というか現状の推論ありのままに言うと、どうやらこれは異世界行きの切符をかけた採用面接だと思われる。

 謎の使者にーとか、目が覚めたらーとか、トラックに引かれてー、なんてのはもう時代遅れらしく、今時の異世界転生は面接で決めるのであれば、異世界も末だ。


 つか、やべぇよ。俺だけ私服だよ。

 服装なんて指定された覚えないぞ……?

 飛び入り参加可だとしても、何も聞かされず放り込むのは、どうなのだろうか?

 中学生という年齢からして関わるのが暫く先であろう採用面接という奴の雰囲気に、思わずそわそわしてしまう優斗さん。

 こういうお堅い雰囲気は最高に苦手だ。


 暫く待って、名前を呼ばれると、扉をノックして、部屋へと入り、座っていいとお達しがあったので椅子へとかけた。

 どうやら、俺の面接を担当するのは、ザ、魔法使いの様な趣きを持つ老人と、ザ出来る秘書と言った趣のメガネの女性の2人の様だ。


「それでは第二次面接を始めます。お名前と、ご職業は?」


 面接はそんな質問から始まる。

 俺は素直に質問に答えていくが、その反応は予想とは違うものだった。


「ほぉー、中学生か……、これまた、ポイント高いのぉ〜!」

「ですが、こんな重大な日に私服で来るなんて、少々意識が低いのでは……?」

「いやいや、急に巻き込まれたという点もポイントが高い! 実にそれっぽい!」


 うんうん、と満足気な笑みを浮かべる老人と、的外れなことを言う女性に呆気にとられてしまう。

 面接なんて受けたことは人生で一位度もないが、少なくともこのやり取りだけで、これは面接という名の定を保っただけ違う何かであるというのは把握できた。


 いや、なんでだよ!

 ここまで来たのなら、頑張れよ!


「少年、好きな作品は?」

「男×男についてどう思いますか?」


 質問の内容も最早面接とは関係無いものになっていて、思わずため息が漏れる。

 そっから、先の流れは、もう察して欲しい。

 結局、面接とは名ばかりのただのオタク談義は30分ほど続いた。


「ふむ、異世界転移物はバッチリ抑えておるの。……それと、魔法少女ものを抑えているのは、個人的に高評価じゃ」

「B……真なる愛の書について抑えていなかったのは残念ですが、ジャンプ系統、加えて土曜の夕方を抑えているので、こちらとしても文句は無いですね」

「完全に趣味だよね、それ」


 俺の指摘に目を逸らす2人。

 この30分で2人とは大分距離が縮まった気がする……面接ってなんだっけ?

 まぁ、オタクとはそういうものであるから仕方ない気もするが……。


 一応、名ばかりの面接でも得られるものはあった。


 まず、2人の名前。

 魔法少女や少女アニメなどの大きなお友達中心が守備範囲の、如何にも賢者といった風体を持つ老人がハドソンさん。

 ジャンプ等少年漫画系統と、彼女いわく真なる愛の書が守備範囲なメガネの似合う秘書のっぽい女性がナターシャさんである。


 彼らは長年、自分達の世界と異世界を繋ぐ研究をしていた。

 結果、1年ほど前、俺たちの世界と繋ぐことに成功。

 しかし、人を通行させるまでには至らず、初めは手紙による文通からスタート。

 文章による話し合いの末、互いの世界の影響鑑み、今は秘密裏に交易を行っているのだとか。


 日本と異世界が繋がっているとか、なにそれ初耳なんだけど。

 一般人おれらが知らないだけで、世界って割と進んでるなぁ。


 ちなみに、オタク知識に関しては、交易で流れてくる品から得たものである。

 交易品として武器等は論外。

 美術品、郷土品も、最初のうちこそ喜ばれたものの、あまり実用性に乏しい。

 そんな風に送る物に難航していた時に誰かが嗜好品として提案されたのが日本の誇るオタク文化なのだとか。

 アホなのか?


 その感染力は、凄まじかったらしく、強請りに強請った結果、今では毎週月曜日に某有名少年誌の最新号まで届く始末。

 もうだめだこの研究機関。


 ちなみに老人の推しはこ◯亀、秘書さんの推しは黒◯スだとか。

 知ったこっちゃないがな。

 あ、みなみに俺はめだ◯ボックスです。


 いやまぁ散々否定したけど、分からんでも無い。

 実際日本のオタク文化は海外でもムーブメントを起こしている。

 それが異世界でも同じことが起きてるのだろう。

 日本は娯楽について妥協することなく、その中でも切磋琢磨するからなぁ、オタクは世界共通言語うんうん。


 さて、オタク談義は省くとして、お2人の言ってたことの中で重要な物を纏めると大体こんな感じである。


 異世界転移に興味はあるか?

 興味がある場合、何がしたいか?

 それに死の危険がが伴うことについてどう思うか?

 選ばれた場合、私達の期間に所属し、守秘義務を守ることが出来るか?

 もし、この世界に一つだけ持って来れるとしたら、何を持って来るか?


 一応真面目な話もしたんだよ。うん。

 いや、逆に言えば1時間話したうちのこれだけしか真面目な話はして無いんだけど。

 そして、面接が終わると直ぐに元の屋上へと戻された。

 ほんとなんだったんだろあれ。


 お腹を巡る消化不良感に苛まれながらも、授業をサボって昼寝する気分にも慣れなかったので、きちんと授業を受けてその日は帰路についたのだった。

この作品は時代設定が約10年前くらいを意識してます

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