美羽ちゃんのトラウマ
なんかちょっとシリアスになってます。なんでだろう
土曜日、それは学生は休みの日であり。社会人にとっては休みだったり休みじゃなかったりする曜日。まあ何が言いたいかっていえば、私は仕事美羽ちゃんは休みなのよねー。
美羽ちゃんが来て初めての土曜日。とりあえず食材は買ってあるから、美羽ちゃんがご飯を食べれないということはない。もし何かあるとするならそれは、
「仕事行きたくない……」
「聡里さん、頑張ってください」
「美羽ちゃんっ!」
今日は休みだからまだパジャマな美羽ちゃんを、ギューって抱きしめる。
抱きしめると、美羽ちゃん恥ずかしくて顔が赤くなって、それがまた可愛いのよねー。一線超えた日は襲われたけど、私は大人。美羽ちゃんに負けるわけが無い、あの日は酔ってたから断じて負けではない!
ってあれは勝ち負けとかないわよね。そもそも越えちゃダメな線なわけで。あの日以来そういうことは無い。まあこうしてスキンシップ程度に抱きついたりはするけど。私からだし。これが普通よね、あの日がおかしかったのよ。
うんうん。
「それじゃ行ってくるね。お昼は勝手に料理して食べていいから。フライパンの場所とかわかるよね?」
「はい」
「今日も夜遅くなるから、夜も食べてていいからね」
「はい」
「先に寝てていいからね」
「はい」
「ゲームばっかりしてないで勉強も……」
「聡里さん、行ってらっしゃい」
「うぅぅ、行ってきます」
美羽ちゃんと話をするというささやかな出社拒否は、美羽ちゃんによって呆気なく砕かれたのであった。
そして太陽が真上に上り、西に沈み夜が来て。
「枝豆、焼き鳥、焼き魚は美味しかった♪ ジョッキビールにハイボール、日本酒ーはお酌だけ……一滴すらも飲んでない……」
今日は新入社員の歓迎会だった。まあ、部署のだけど。行先はもちろん居酒屋。飲むものといえば当然お酒、だが。今日は終始上司のお酌をさせられ。食べることは出来ても飲むことが出来なかった!
「聡里のお酌レベルが五上がった……あー酒飲みてー」
業務用スーパーの前を通り過ぎて、そして戻る。
業務用ウイスキー……炭酸水……レモン……
気がつけば片手にはビニール袋を持っていた。
「美羽ちゃん、たっだいまー」
美羽ちゃんが起きてるか分からないけど、ただいまーと言うのが帰ってからの最近の流れ。
そしてリビングに入ると異臭が鼻を直撃する。
「なんか焦げ臭い?」
キッチンの中に行くと所々焦げ付いたフライパンがあった。美羽ちゃんが料理しようとしたんだと思うけど、どうしてこうなったのかな。
「美羽ちゃーん?」
「聡里さん……ごめんなさい」
涙目の美羽ちゃん可愛い!
じゃなくて、泣き顔に興奮してどうするのよ。
「いいのいいの、酔っ払って私もよくやるし。洗えば綺麗になるから」
「ごめんなさい」
あー、これはトラウマ的なあれを刺激したかな。美羽ちゃんがごめんなさいを言う機械みたいになっちゃってるし。美羽ちゃんをこんなふうにした誰かを私は許さない!
と決意を固める前に、美羽ちゃんどうにかしないと。抱きしめてみようかな。
「ぎゅー」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。捨てないで、捨てないで、捨てないで、捨てないで、捨てないで」
ダメだこりゃ、完全にはいっちゃってる。働きすぎた時の私のように、闇落ちしてるわ。まあ、あれよね。こういう時は他のことに注意を向けるのが一番なのよ。私がお酒を飲むがごとく。
とはいえ、美羽ちゃんにお酒飲ますわけにも行かないし。やっぱりあれしかないかな、もうあんなことした後だしねぇ。宜しくはないけどこのままよりはマシよね。
「美羽ちゃん」
「ごめんな、んっぅ!」
とりあえず口塞いじゃおってことで。
「美羽ちゃん戻った?」
「聡里さん」
「んーよしよし。別に怒ってないから謝らなくていいんだよ。誰だって失敗するし」
「料理した事ないのにしようとしたから」
「誰だってそんなもんだよ、私が教えてあげるし」
「洗濯」
「それも教えてあげる。あれはボタン押すだけだし。洗剤入れ間違えなければだけど。他にある?」
とりあえず美羽ちゃんが何か言う前にかぶせるように言う。心配事は全部取り除いてあげないとね。あの怪我が両親による虐待の可能性も高いし。
「私居ていいんですか」
「もちろん、好きなだけ居ていいし。私が美羽ちゃんに居てほしいんだけど」
「私居たいです、聡里さんのそばに」
「もー可愛い。それじゃあ、早速料理してみる?」
「はいっ!」
美羽ちゃんと一緒に料理をして、それをつまみにハイボールを飲んだ私は。翌日二日酔いになったのだった。ついでにキスしたことにも若干の後悔を残して。
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