行ってらっしゃいは悪くない
昨日のことを思い出して、とりあえず。どうしよう!!
確実に美羽ちゃんは未成年。これって不純異性交遊じゃ、って同性よね。問題ない、訳ないわよねー。マジでどうしよう。
なんて考えてたら、美羽ちゃんが起きた。
「おはようございます」
「ああ、うん。おはよう」
昨日の夜のことを、忘れたわけじゃないと思うけど。それにしてもずいぶんとあっさりとしてるっていうか。今時の子ってこういうものなのかしら。動揺してるのが私だけって、なんだかすごく。私がおかしいみたいな感じになるけど。この状況自体がおかしいわよね。うん。まあ、でもとりあえず。
「お風呂沸かしてくるわ」
落ちてる下着をつけて、そのまま風呂場直行する。服は今更よね。裸見られて、あんなことまでしたわけだし。昨日みたいに、お風呂の給湯ボタンを押して。顔を洗う。冷たい水が、微睡んでた意識を目覚めさせて。改めて、この状況をどうするか考える。昨日好きなだけ居ていいって言った手前、放り出すわけにも行けないし。お風呂場で見た、傷とか怪我のこともあるから余計ね。
リビングに行くと、昨日飲んだ缶の空が残ってた。片付けないでベット行ったんだっけ。片付けてる間に、美羽ちゃんも起きてきた。ちゃんと服を着て。これじゃ下着の私が痴女見たいね。
「お風呂先入る?」
「後からでいいです。聡里さんお仕事あるから」
「そう、じゃあ先に入るわ」
お風呂に入ってさっぱりした所でスーツに着替える。
「聡里さん」
「なに?」
忘れ物がないかカバンを漁ってたら、お風呂から上がって制服に着替えた美羽ちゃんが話しかけてきた。
「あの朝ごはんとかは」
「道すがら食べるつもりだけど。そうよね、美羽ちゃんの分が必要か。カップ麺でいい?」
「はい」
夜の、お酒のお供にと買ってきてあるからカップ麺をテーブルの上に置いて。
「お湯くらいは湧かせるわよね。電気ポットあるし」
「大丈夫です」
「じゃあこれ家の合鍵だから、鍵かけてちょうだいね」
「鍵、いいんですか?」
「同居することになるし、私朝は早いし夜は遅いし。結局必要になるのよ」
「ありがとうございます」
制服を着た美羽ちゃんを見てると、怪我だったり傷がある場所は、制服で隠れてちょうど見えないようになってた。腫れてた頬も元に戻ってるから、見た目は何もないように見えるわね。
虐めか、虐待か。美羽ちゃんから聞かないことには分からないけど。聞くまでが長そうよね。
玄関で靴を履いてると、リビングから美羽ちゃんが来た。
「あの、聡里さん」
「なに?」
「行ってらっしゃい」
「っ!行ってきます」
行ってらっしゃいなんて、何年ぶりよ。でも、悪くないわね、誰かに見送られるのは。
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