大人の時間
「エト」
「なに、しっちゃん」
時刻は深夜、美羽ちゃんはもう寝ちゃってます。つまりは大人の時間なわけですよ。つまりはなにが言いたいかというと、しっちゃんは酔ってます。私も飲んでるけど、酔ってはない。
「明日、ディナー食べに外に行かない?」
「急にディナーって美羽ちゃんどうするの」
「小テストがあるって言ってたし、勉強のために家に居るわ」
「可哀想だから行かない」
「終わってから食べに行くわよ。私はエトと二人きりで食べに行きたいの。美羽抜きで」
「つまりは?」
「デートよ、いいでしょ」
しっちゃん的にはいいのかもしれないけど。私的には良くない。どうにかして回避しないとっ!
「ほら、私残業するから時間が」
「大丈夫よ、遅くまで開いてるお店知ってるから」
「ほらお金下ろさないといけないし」
「奢るわ」
「美羽ちゃん」
「小テスト終わったら連れていくわよ」
「ほら服が」
「買ってあるわ」
「え」
リビングに置いてあった、謎の紙袋。あれは何かなと思ってたそれを持ってきたしっちゃんは、中から買ったら高そうな服を出し始めた。それも一着だけじゃなくて二着くらい。
「似合いそうな服は買ってあるから安心して」
外堀が埋められてるよ、逃げ道がない……いやとっておきがあった。しっちゃんが私を好きなら行けるはず。
「仕事で疲れが」
「チョコフォンデュ」
「うっ」
「チョコフォンデュに鹿肉のソテー。高くて美味しい料理が食べれるけど」
「ううぅ」
食べたい、食べたいけど。食べてみたいけど、食べに行ったらしっちゃんの思う壷だし。でもでも、チョコフォンデュにチーズフォンデュ。憧れの響きが、私を誘惑してくるし。ぬぬぬ……
「行くならまた連れて行ってあげる」
「行きます……」
「ありがと、それじゃあ明日帰ってくるの待ってるから」
食べ物の誘惑には勝てなかったよ……
仕事をなるべく早く終わらせて帰ると、着飾ったしっちゃんがお出迎えしてくれた。このまま出かけたら、見かけた男は半分くらいは目で追いそうだけど。でもしっちゃんは私が好きっていう。美しさの無駄だよね多分。だって私には見慣れたものだから、見惚れたりしないし。しっちゃんに私を落とすことは不可能だね。
「おかえりなさい、それじゃあ着飾ってあげる」
「さすがに着替え位はできるよ」
「髪の方よ、服が良くても髪がそのままだと見栄えが良くないわ」
「そうですか」
「そうよ」
そんなに髪長くないからこのままでいいと思ったんだけど。なんということでしょう。着替えて髪をしっちゃんに任せたら私じゃない私が鏡に映ってるじゃん。
「わー」
「こんなもんね。ほら行くわよ」
「うん」
美羽ちゃんはもう寝ちゃってたから、行ってきますってメッセージを送っておいた。
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