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復讐の後日談

ザマァの後日談と称した更なるザマァです。

そしてAIは奇跡を起こし…………

84話


「…………」


 アレウスが清々しい表情で空を見上げている。

しばらくたつと、緑色の山猫が落下してきた。


「お帰り、ウィント。よく頑張ったな!」

「フニャァ」


 完璧なタイミングで山猫をキャッチし、労いの

言葉をかけた。山猫ウィントも安らいだ表情で

返事を返した。そう、かつて自らを虐めた悪質

テイマーへの復讐を成し遂げたのだ。


「お前は本当に頑張ったぜ。けどな、まだまだ

アイツへの復讐は終わりじゃねーぞ」

「にゃ?」


 ウィントはアレウスの発言にどう言うこと?

といった表情で返事をした。


「俺達が幸せになってこそ、アイツへの復讐は

完遂出来るんだ。だからさ、これからも俺や

スパロウと一緒に暴れまわろうぜ!」

「ギギギッ」


2人の声かけに


「…………ニャアッ!!」


 表情を輝かせ、力強く返事をした。周囲の

ギャラリーになっていたテイマー達からは、

拍手が飛び交った。


 一方…………


「くうううっ…………! いつまで飛ばされるんだよ!!

何でAIごときを虐待したからってこんな目に

あわされるんだ! あのガキ、現実で会ったら

再起不能にしてやる!!」


 悪質テイマーの男は自らの愚行を少しも

悔い改めようとせず、アレウスの中身を知る人

からすれば、どう考えても不可能な事を志していた。


「くそっ! 予定より30分も遅れてる!

んなことしてる場合じゃねーのによ!!」


 この男には現実でとあるやましい事情があり、

一刻も早くログアウトしたい状況にある。


「何で空中だとログアウトが出来ねぇんだよ!!!」


 男は更に苛立つ。この過剰なまでの苛立ち方と

やましい事情は、今男の耳に聞こえている

"外部からの音"で全て説明がつく。


『ワン! ワン! ミャー、ニャー、バウッ!!』


 不自然に多い犬猫の声。更に補足で


「うるせぇぞ! 糞共!! 後で拷問用の鞭で

百叩きだ!!」


 自らの"私生活"をわめき散らしたのだ。そう、

男は悪質テイマーであると同時に悪質ブリーダー

だったのだ。それも最低クラスの(タチ)の悪さである。

 今の声だって、SAFログイン中は本人が

休眠状態であるため、犬猫達には聞こえない。

したがって、このまま男がログアウトしたら、

理不尽に鞭でぶたれる事になる。


「くそっ! 早く…………早く!! よし、下降し始m…」


 上昇速度が落ち、希望を宿した男の顔は、

下降局面に移った瞬間、絶望に変わった。


(高い………………!!!!!!!!!!)


 ごく自然な、陸上生物ならほぼ全ての個体が

有しているだろう高所に放り出される恐怖だ。


「うわああああああ!!! こんな高さ死ぬに

決まってんだろおおおおおおおっっっっ!!!

!!!!」


 激流のごとき涙、鼻水、唾液を撒き散らしながら、

腐ったゾンビのように目玉が飛び出かねない表情を

見せて、ぐんぐん下へと加速していく。


 更に追い打ちをかけるがごとく…………


『ウーーーーー! キキッ!! バン! 特殊部隊、

これより突入を開始する!』

(クソッ! もうサツが来やがった! ブービー

トラップも設置してねぇし、そもそも俺も動物達(かねづるども)

逃げれてねぇ。無防備だ!!)


 一刻も早く自分だけでも逃げ出したい男は…………


「さっさと落ちろおおおおおおおっ!!!」


 鬼の形相で地面に向かって怒号をわめき散らした。

が、次の瞬間…………


「あああああっ!! じびだぐだい(死にたくない)

ーーーーー!!!!!」


 情けない事に、落ち始めた時の表情で死の回避を

何かに懇願し始めた。


『ドタドタドタ! ターゲットの部屋に突入開始!

バン!!』


 遂に男の部屋へ特殊部隊がなだれ込んできたようだ。


「頼む!! 俺を牢屋に連れていくなぁ!

落下させるなぁ!! 仏!! お前だけは

信じるがらぁ~~~~~~!!!!」


 とうとう粗末にも程がある祈り方で仏に祈り始め、

都合の良い懇願をわめき散らした。


『……容疑者確保!!』


 男自身の声で時刻と男の名前が聞こえて

こなかったが、とうとう手錠をつけられた

ようだ。そして、男のアバターの画像も

地面にぶつかる寸前で荒ぶり、不自然に

動かなくなった。


『これは…………早急に獣医と連絡を取れ!

何て惨さだ…………貴様、ただで済むと思うなよ!』


 もし、男が未だにSAFで生きていたら、

こんな声を聞きながら悠々と遊んでいた

事だろう。


~グラス・コープ~


「ア・レ・君~!」


 声の方を向くと、同じギルドの女性3人が

並んでいた。


「あ、マリリンさん、それに仲良し2人組

じゃねーか!」


「試合を見てたよ、アレウス君」

「3人とも大暴れだったね!」


「おう! これも2人の力あってこそだぜ!」


「あっ、ウィント変異したんだー! ちょっとだけ

撫でさせてー」

「フニャ…………」


 "ちょっとだけ"ということで、ウィントは

渋々マリリンに撫でられる事にした。


「この蜘蛛ちゃんが……」

「ルインで写メ送ったスパロウだぜ!」

「キリキリ…………」

「イシュタルよ。よろしくね」


 イシュタルもスパロウを撫で始めた。

スパロウは目以外は大体スキンシップを

許容しているらしい。


「むー、皆取られちゃったよー…………

ってことでぇ~」

「俺なのね。…………まぁ、どちらかというと、

俺もウィント達に見えるんだろうな」


 モンスター達を2人に取られて不貞腐れた

ミューは、アレウスの頭を撫で始めた。


「まぁまぁ、こんなところで話していてもあれだし、

皆アレ君に乗って帰るわよー!」


 マリリンがそう言うと、3人は素早くアレウスの

背中や両肩に乗った。


「いや…………街中は流石に恥ずかしいっす…………てか

2人も乗るの!?」


「うふふ、悪い?」

「お邪魔しますわ」


 ごく自然な返答が帰ってきた。それだけでなく…………


「フニャッ!」

「シュッ」


 ウィントが頭に、スパロウがお腹にしがみついて、

結局5人ともアレウスに搭乗した。


「ほらほら、腐ってないで行くのよ。隊長達は既に

パーティーの準備を終えたらしいし、そのうち副長も

帰って来ちゃうよ!」

「パーティー…………レッツゴー!!」


 パーティーと聞いた途端に時速50kmで

駆け出した。とても自重の7割程の重りを

担いでいる人間の走りとは思えない。


 そして祝勝会では手短にテイマーとして

ギルドの名声を広げた感謝を聞いた後、

黒毛和牛を大暴食した。


「あー、うまかった! けど30分たてば小腹空くな。

鶏肉でも焼いて食うか」


 SAFをログアウトして、アレウスから隆二に

戻ってから、腹の調子を考慮して台所に降りた。

そして自分の分と、たまたま居た父親のツマミの

分を作った。


「「いただきます!」」


 それぞれのペースでそれぞれの食事を食べ始めた。


「プハッ。隆二、勉強の調子はどうだ?」


 ビール一杯を飲んだ隆二の父親が、こう言うことを

聞くときは、大抵急かすためではなく単に息子の

状況を聞きたいだけの時が多い。


「拓人と的場さんと有意義に出来たから、

国語すら高得点を取れるかもしれねぇわ」


 そのため、隆二も正直に話している。


「そうか。それは楽しみだなぁ」

「へへへ、結局は解答してみねぇと分からんけどね」


 父親の喜ぶ顔を見て、隆二も幸せになった。

そしてふとテレビを見てみると…………


『速報です。今夜19時、数年間逃げ回り、

暗躍を行っていた悪質ブリーダーの男が逮捕

されました。男は逮捕時、VRゲームを遊んで

おり、その隙に特殊部隊が逮捕したとのことです。

その場に居た動物達は凄惨な状態で放置されており

…………』


「…………酷い人間も居るものだ。とても同じ人間だと

信じられん。なぁ、隆二」


 父親が隆二の方を見ると、隆二の顔は

意外にも明るかった。


「…………どうした隆二? いつもなら怒りだす所だが」

「ん、ああ。勿論男は死んでも許さねぇけど、

何て言うか…………それ以上にあそこに居た動物達の

一命を取り留めた獣医さんへの尊敬の情? みたい

なのが出てきてさ」


 その言葉に父親は少し驚いた後


「確かにな。酷い人間が居る一方、素晴らしい人間も

居る。隆二も今後そんな人達と沢山出会えるといいな」


 笑顔でそう答えた。


「向こうから来ずとも俺の方からも見つけようと思うよ」


 隆二も笑顔で答えた後、鶏ステーキを食べながら

物思いにふけた。


(時間帯からしてもアイツが逮捕された可能性が

高そうだ。だとしたらさ…………)


 緑色でヒゲのキューティクルが特徴的な

山猫を思い浮かべた。


(ウィント、お前は単なるAIじゃねぇ。他の

AIやゲーマーだけでなく、現実の犬猫まで

救えるスゲェ偉大な奴なんだ。俺はお前との

出会いを誇りに思う。スパロウも出会ってくれて、

ウィントを手助けしてくれてありがとな)


 そして完食し


「ごちそうさまでした!」


 忘れずに食後の挨拶と皿洗いを終えたのだった。

ブクマ、評価、感想、レビューが励みになっています。

寒くなってきたので、体調には気を付けましょう。

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