白熱の決勝戦(後編)
決着!
82話
「んぁ? ッチ、寝てる間にもう決勝戦まで
来たのか…………」
金髪オールバックの男は自身が寝ている間に
決勝戦の中盤まで差し掛かっていたことに
悪態をついた。
「…………おいおい、赤い髪の男はこの決勝で
ウィンドキティなんか使ってるのか? テイマーズ
モンスターバトル舐めすぎだろ」
アレウスがウィントを使っていることに、
不快感をいだいたようだ。
「ん…………?? もしかしてアイツって………………」
彼はウィントを見て、何かを思い出そうとしている。
そしてアレウス達にも動きが見られた。
「ウィント、ドレイクは強い。だけど毒も効いてるし、
お前なら身体能力で対抗可能だ」
「ニャゴ!」
しかし、相手は予想外の行動を取った。
「ドレイク、チェンジ!」
「「!?」」
なんと、相手が切り札の暗黒竜を交替させたのだ。
「行けっ! ウィズ!」
「おっとぉ! ここでフィンチ選手はドレイク
選手とウィズ選手を交替させたぁ! 何か策が
あるのでしょうか?」
サイスウィーズルという名前の、カマイタチ攻撃を
得意とするイタチモンスターだ。
「…………本気になったんじゃなかったのか?」
アレウスはフィンチに聞いた。
「ええ、本気よ。万が一に備えて、出来るだけ
その猫ちゃんを消耗させる作戦で行くわよ」
「なる程、ならこちらもかすり傷1つ負わねぇ
覚悟で行くぞ! ウィント、ゲイルダッシュ!」
「ニャニャニャニャッ!!」
「ウィズ、こちらもゲイルダッシュよ!」
「キュキュキュッ!!」
お互い足首に風を纏い、高速になったのだが…………
「フシャッ! ニャゴォ!!」
「キュッ!?」
ウィントが完全に上回っており、軽い小競り合いで
ウィズのHPを3分の1程削った。
「猫爪連斬!」
「フニャニャニャニャニャアッ!!」
「キュウウウウッ!!!」
「ウィズ、戦闘不能!」
まさに秒殺だった。
「ウィズ、お疲れさま。よく猫の本気を引き出して
くれたわね。後1踏ん張りよ、ドレイク!」
『グオオオオオオオッ!!』
再びフィールドに言葉に出来ない圧力が広がった。
「ウィント、紫電の頭突き!」
「ニャニャニャニャニャニャニャニャニャアッ!!!!」
『グオオオッ!!』
幸先良く先手を打つことに成功した。ダメージも
1割ほど稼げている。
「ドレイク、黒炎波!」
「なんと容赦の無い一撃! ウィント選手万事休すか!?」
呪いの炎を波状に広げるように吐いてきた。
「全力のカマイタチでドレイクごと両断しろ!」
「フシャアッ!!!!!」
『グウゥ…………』
「全てを両断する、凄いカマイタチです!」
風のブーストも活かした大規模なカマイタチで
防御と攻撃を同時に成した。
「負けてられない! 風圧!」
『グオオオオオッ!!』
ドレイクは全力で羽ばたき、暴風を巻き起こした。
空気抵抗の影響を受けやすいウィントのような軽い
モンスターにとって、風は厄介な足枷となる。
「黒炎放射!」
スパロウをオーバーキルした必殺の一撃を、
風の力で強化して放ってきた。
「フルパワーでトルネードスピンだ!」
「フニャアアアアッ!!!」
「何!?」
対するウィントはなんと、その場で風の力をフルに
使いつつ高速回転を開始したのだ。風の力は小さい
ながら高密度な竜巻を作り、黒炎を巻き取っていく。
「これは凄いっ! ウィント選手黒炎を纏ったーー!!」
「「「おおおおおおっ!!」」」
あまりにも滅茶苦茶な作戦で、格上相手に
張り合うウィントに観客は大きく湧いた。
「ドレイクっ! 飛b…」
「黒炎の乱れカマイタチ!」
「飛ぶのよ!!」
一瞬遅れてドレイクは飛翔したのだが、飛翔
タイミングで数発、空中旋回時に2発ほど
被弾した。
「フニャ…………」
ウィントの猛攻も、軽度の混乱で終了した。
「そこだ! ダイビングクロー!」
その隙を逃さず、急降下爪攻撃を繰り出してきた。
「かわせ!」
「フニャッ!」
しかし、ウィントは現在足首に纏っている風を
全て爆発させ、その力だけで最小限の動作で
回避した。
「攻め立てるわよ!」
「ゲイルダッシュ!」
「す、凄まじい技の応酬だぁ!!」
互いに瞬時に体勢を取り直し、今度は接近戦に
なった。ドレイクが爪を振るえばウィントは
伏せつつスライディングで回避して、脇腹を
引っ掻く。ドレイクが尾で突いてくれば、
両足の肉球を器用に使って受け流しつつ、
カマイタチを背中に撃つ。それに応じて
ドレイクが全身を反らせながら、背後の
ウィントに黒炎の牙を食らわせようとすると、
ウィントは高速スピンによる風圧で回避&着地し、
瞬時にドリルストライクを繰り出した。そして
ドレイクは咄嗟の蹴りでウィントを受け止めつつ
ステージの端まで吹き飛ばし、自身も半身分後退した。
「ウィント、真下に風圧! そして5接地転回法!」
最後の技は何を覚えさせとんだといった
感じもするが、肉球持ちのウィントが行えば、
想像以上の衝撃緩和効果を発揮するのだ。
「このまま勝つわよ! 飛びながら火炎放射!」
自ら推進しながら炎を吐くことで、炎の圧力を
高めて受け流しを防止する算段らしい。
「ゲイルダッシュ!」
一先ずは風圧で消費した風力を確保。そして
ウィントが炎の目前まで迫ったタイミングで
「真横に切り返してサイクロンクロー!」
アレウスと初めて友情を芽生えさせた地竜戦の
とどめの一撃を真横で放ち、自らは推進力で
回避しつつ、ドレイクは風圧で返した炎で
カウンターを行った。
「甘い!ドレイクに炎が効くわけ…………」
「本命はこれだ! 乱れカマイタチ!!」
「しまっ……」
敢えなくカマイタチの連撃を食らう羽目となった。
「こうなったらとことん泥仕合に付き合ってもらうわ!
大空へ舞って!」
突如、ドレイクがウィントの届かなさそうな
高所まで飛び立った。
「上から連続して火球よ! 全てを焼き尽くすわ
よぉーーー!! おーっほっほっほっほ!!」
何故かマダムのような笑い声を上げながら、
ドレイクに炎を吐かせまくった。
「これくらいしそうだとは思ったぜ。だったら
もう一段階ゲイルダッシュ!」
「なっ、なんとっ! ウィント選手は2回分の
ゲイルダッシュで速力を上げたー!!」
「ちょこまかちょこまかと…………ドレイク。
よーく猫を観察して動作を学習するのよ!」
『グオオオオッ!!』
「ウィント! 頭の良さはお前に分があるはずだ!
先に攻撃を通す隙を見つけてやるぞ!!」
「フニャアアアアッ!!!」
分かってらぁ! とでも言いたげに返事をし、
華麗に火球を避けながら観察を行う。
「見えた!」
「ニャア!」
アレウス、ウィントが同時にドレイクの隙を発見した。
「ウィントォォ!!」
指示を出すべく叫んだ瞬間、アレウスは時間の
流れが遅いことに気づいた。
(な、なんだこれは…………ん? ウィントの姿が
…………変わっていく!?)
ウィントの方を見ると、得意気な顔をしながら
姿が子供から大人に…………そう
(ウィンドキティからウィンドキャットへ変異した!!)
モンスターの姿形がかわり、強くなる"変異"が
起こったのだ。愛らしい子猫の姿から、愛らしさは
残しつつも、猛々しくなった山猫のような姿へと
変異した。
「!? 速くなった…………??」
ドレイクの主、フィンチは突然ウィントが
速くなったことで、その動きを追えなく
なっている。
「ウィント、もう一回ゲイルダッシュ!」
「嘘!?」
普通、身体強化系の技は、訓練を積まねば何度も
行えないものだ。アレウスと楽しい筋トレや
かけっこを繰り返していたウィントでさえ
2回が限界だった。しかし、変異を行ったことで、
その限界が1つ増えたらしい。
「今だ! 紫電の頭突き……」
ウィントは地面が割れる程の踏み込みを行う。
それはもう初速から技の条件の遥か先の速度に
至るほどに。
「瞬!!」
強化技発動後、地面のヒビは大きく広がり、
ウィントは時速800kmで飛び立った。当然
そんな速度、ドレイクであっても反応できる
わけがなく、顎に衝突して戦闘不能になった。
「優勝は…………アレウス選手~~~!!!」
こうして表彰式に移った。
「よっしゃあ!」
トロフィーを掲げ、その両腕にはウィントと
スパロウが片方ずつ捕まっていた。
「おめでと。あなた達の心の繋がり方、
とても参考になったわ」
フィンチが誉めてくれた。
「ありがとう。君達の絆と戦術も凄かった。
2人が優秀じゃなかったら絶対に勝てなかったよ」
「そう? じゃあ…………今度は極限まで5匹……いや、
5人と鍛えてからリベンジするわ!」
「望むところだ!」
そしてとあるギルドのテレビ前では
「さて、祝いの準備をするぞ」
「ラジャー!」
「「了解です!」」
レオナルド、レイル、ジェルマン、クラフトが
テレビからアレウスの活躍を見ていたようだ。
「いやー、面白かったな! また強くなって
大会に出ようぜ!」
「ニャッ!」
「カチチッ!」
ウィント、スパロウ共に今大会で絆が深くなり、
今後の意気込みも十分だ。と、その時
『ザッ、ザッ…………』
「ニャ…………フシャッ! グルルルルルルルッッッ!!!!」
突如足音の方向をウィントが威嚇し始めた。
「ウィ、ウィント!?」
アレウスもこれにはビックリだ。
「お前、ちったぁ強くなったんだなぁ」
足音の方角から男の声が聞こえてきた。
ブクマ、評価、感想、レビューをありがとうございます。
とても執筆の励みになります!
そして次回はウィントの因縁の相手とぶつかり…………??




