泥仕合になったが、泥仕合になる前に決着をつけよう
激戦を制するのは…………??
79話
「よく探るんだ。絶対に見つけれるぜ」
「フニャ…………」
『シュー…………』
アレウス、ウィント、スパロウは現在、地中に姿を
隠したドラゴン2匹を音や振動、殺気で探っている。
「………………ニャッ!!」
『カッカッカッカッ!!』
ウィント、スパロウがほぼ同時に敵の動きを伝えた
「ウィント走れ! スパロウ、跳んで足全体に
スパイダーネット!」
地竜の爪攻撃に対し、あらかじめ風で速力を
増していたウィントを走らせることで回避させた。
水竜の高圧水流に対しては、水を弾き、鋼鉄よりも
頑丈な糸をスパロウの足全体に纏わせることで、
一撃必殺の鉄砲水をバケツの水かけ程度のダメージに
押さえ込んだ。そしてアレウスは、飛んでいった
スパロウの糸に鞭を引っ掻けて助けつつ、地竜の顎に
強烈な蹴りをおみまいした。
『グオオオッ!!』
「ストップ!」
それを見た水竜がすかさず鉄砲水をアレウスに
撃とうとしたが、アレウスの打撃を2回も受けて、
既に瀕死の地竜が巻き添えを食らえば死ぬと
主のドラコは判断したため、制止がかかった。
(俺のグランドを蹴り2発で瀕死とかあいつ
テイマーじゃなくてモンスターだろ!!)
地の利はこちらにあるにも関わらず、武力だけで
ひっくり返しかねないアレウスに、ドラコはかなり
焦りを見せている。
「俺達も潜っ…」
「ウィント、乱れカマイタチ!」
「フニャニャニャニャニャ!!!」
地中に潜ろうとする水竜に追い打ちをかけるが
如く、ウィントは両腕の爪から真空波を連発した。
「猫の癖になんて威力だ…………」
ドラゴン系B級モンスターであるオーシャンの
HPを1割削ったウィントにドラコは苛立ちを覚えた。
加えて
『ぐわぉぉお…………』
「オーシャン! グランドと一緒にもう少し頑張るんだ!
あんな雑魚ども一瞬で終わらせれるさ!」
スパロウの毒牙によって毒に侵された身体が
悲鳴を上げ始めている。
「よし、攻勢に打って出ようか! ウィント、
そこの穴に向かって乱れカマイタチ!」
ウィントが穴の中にカマイタチを連発したところ、
穴の内部が一部崩れた。それと同時に
「カッカッカッ!!」
スパロウが牙を打ち付け、別の穴から風圧が
発生していることを伝えた。
「予想通り穴は繋がっている! ならばスパロウ、
穴全体を糸で覆え!」
スパロウは俊敏に動き回り、他の穴を糸で
全て封鎖した。
『グオオッ!!?』
スパロウの気配を頼りに襲撃をかけようとした
地竜が、穴から出られず混乱した。
「オーシャン、ハイドロストライク!」
『グオオオッ!! グオアッ!?』
「危なっ!? 何がかかっているんだ!?」
ドラゴンを操るドラコからすると、蜘蛛の糸
ごときがドラゴンの攻撃に抗う頑丈さを持つことを
知るよしも無く、完全にパニック状態になっている。
「へへっ、蜘蛛の糸の対抗手段としては、
高熱や炎があるが、そういうのが得意な
飛竜は真っ先に倒したからなぁ」
「んがっ!?」
衝撃の事実を知らされ、ドラコは絶望に
叩き落とされた。
『グオオオオオオッ!!』
しかし、それに発破をかけられた地竜が
"地面"を掘ることにより、一先ずの脱出に
成功した。
「かかったな! スーパードリルストライク!」
「ニャーーーーー!!」
アレウスが早投げでウィントを最小限の
加速で投げ飛ばし、ウィントはその速度のまま
回転爪アタックを地竜におみまいした。
「グランド、戦闘不能!」
HPゲージが空になった地竜は戦闘不能と判断され、
控え室に転送された。
「さてと、後は水竜k……んん?」
自分が沈みかけている事に違和感を感じる。
「カッカッカッカッ!!」
「ふにゃにゃ!?」
スパロウやウィントは違和感の正体に気付き、
アレウスに警告を発した。
「そういうことかっ!」
アレウスはその正体を理解したや否や、スパロウを
闘技場の端まで投げ飛ばし、遠方のウィントを鞭で
捕獲しつつ、自身もスパロウの方へ駆け出した。
「あの水竜、大量に水をぶちまけて地盤沈下を
起こさせてやがるっ!!」
地盤沈下の影響は直ぐにアレウスの位置まで侵食し、
足場が泥んこになった。しかし、その頃にはウィントも
アレウスの背中に張り付いていた。
「全力で風を発生させろ!」
「ニャゴロロロロッ!!」
最大パワーで風圧を発生させ、アレウスと自身の
下降を最小限に留める。
「偉そうに指示を出すだけなのはテイマー
じゃねーんだよ!!」
そう言いながら、全力で泥を踏んで、これまた
横方向の減速を最小限に抑えた。
「スパロウ! 新技頼む! 俺に向かって
ヴィスケスフレイル!」
スパロウは指示通り先端部に粘性物質を蓄えた
太めの糸を精製し、それを鎖鉄球の如く振り回して
アレウスに付着させた。ナゲナワグモそっくりだ。
「全員で乗りきるぞ!」
「ニャゴロロッ!!」
「フシューーー!!」
糸を引き、風を起こし、脚力で踏み抜き、
どうにかこうにか全員で沼から脱出した。
「さすが俺の相棒達だぜっ!」
脱出成功して直ぐに2匹を抱きしめた。そして
「出てきやがれ、ドラコ!!」
その声に答えるが如く、水竜の背に乗った
ドラコが泥沼から浮かんできた。
「今まではお前達に遅れを取ってきたが、
もうそうは行かん。血祭りに上げてやる」
『グオオオーーーーーッ!!!!』
主も水竜もカンカンに怒っているようだ。
「へっ、それはこっちの台詞だ。今まで小さい
モンスター達を侮辱してきたこと、後悔させて
やるぜ。この環境の攻略法もバッチリだぜっ!」
ウィント、スパロウと目配せして、
ドラコ達に振り返った。
「やれるものならやってみろーーーー!!!」
ドラコの叫びと同時に水竜が鉄砲水を
繰り出してきた。
「作戦通りにやればどうにでもなる!
俺達の絆を見せつけるぞ!」
アレウスがウィントを頭に、スパロウを背に
しがみつかせながら、沼の周りを時速70kmで
駆け回っている。
「さぁ! オーシャンの鉄砲水を避けたアレウス
選手が沼の周りを走り回る~~! その速度は
人間技じゃな~~~い!!」
司会もクライマックスとばかりに
盛り上がっている。
「オーシャン! 薙ぎ払うように撃て!」
オーシャンは鉄砲水を薙ぎ払うように放った。
しかし、アレウスは最小限の跳躍でそれを
回避する。
「まだまだ攻め立てろ! そうだ、フィールド全体を
沼地にしてやれ!!」
アレウス達にとって、これ以上無く悪条件と思われる
環境整備を行い始めた。
「スパロウ、出来たか?」
「ギギッ!」
スパロウは何かの準備を終えたようで、アレウスが
唐突に闘技場の壁を走り始めたかと思いきや、
水平方向へ大跳躍を行った。
「!!、撃ち落とせ!」
向かってくるアレウスに対し、高圧水流で
一網打尽にする腹づもりだ。
「見せてやるぜ!」
アレウスはスパロウから受け取った流線型の円盤を
用いて水流を受け流したかと思うと、横にそれた
自身の体勢を直しつつ、先程の円盤に両足を乗せた。
「こ、これはーーーー!!」
司会が驚愕した理由。それはアレウス達の
撃沈により、跳ねた泥の量ではなかった。
「先程の円盤を使って、サーフィンをしている!?」
アレウスがスパロウの作った糸円盤でサーフィンを
始めたことだった。
「ウィント、その調子で頼むぜ」
「フニャ!」
ウィントの風起こしを動力として、高速機動を
実現している。
「連続水砲!!」
対する水竜は、連続で水鉄砲を放つことで、
アレウス達の接近を防ごうとしている。
「ほっ、ほっ、よっと、オラッ! いゃっふぅ~~!!」
アレウスは巧みにボートを操作し、水鉄砲を悉く
回避し続ける。それだけでなく、ジャンプや
急カーブ、果ては水鉄砲に乗ることで受け流す等、
誰も真似できない技まで見せつけた。
「「「おおーーーー!!」」」
これには全観客が歓声を上げた。
「スパロウ、水竜にヴィスケスフレイル!」
スパロウは粘球糸を水竜に投げ飛ばし、
くくりつけた。
「近づけさせるなぁ! 鉄砲水!!」
極太の高圧水流でこれまた一網打尽を
狙うようだ。
「対水圧特化のスパイラルショット!」
対するアレウス達は、スパロウの水を弾く糸、
ウィントの水分子を分散させる風を纏った鞭を
螺旋回転させながら放つことで、高圧水流の下部を
分散させた。太い分、水圧自体は多少低くなって
おり、容易く弾くことが出来たのだ。
「なんて無茶苦茶な奴らだ…………それに、
なぜ後退しない…………」
普通、大技を放てば反作用で大きく下がってしまう。
しかし、アレウス達は殆んど下がっておらず、
それどころか次の瞬間には前進すらしているのだ。
「糸のゴム的特性と、俺自身が常に糸を手繰りよせて
いるからだな。とどめさすぜ!」
アレウスは凄み、更に加速をする。
「っ今だあっ!!」
ドラコは焦りながらも勝機をうかがい続け、
この瞬間に水竜に尾の叩き付けを命じた。しかし、
アレウスは更に1枚上手だったらしく、これを
逆手に取った技を繰り出す。
「ウィント、逆噴射! おぉらよおっ!!!!」
ウィントの逆風で急減速しつつ、その勢いと糸を
引く勢いを乗せた、関節を外した腕ごとしならせる
鞭の一撃『激・痺れ撃ち』を繰り出したのだ。
『グガッ……ガガッ…………!???』
「うおおっ!?」
この攻撃は尾に被弾した水竜だけでなく、
主のドラコまでダメージを与えた。理由は単純、
マッハ5を超えた加速を見せた鞭が発生させた
プラズマを、電気属性の攻撃として命中させる
ので、単に水竜からドラコへ感電したからだ。
「決めるぜ! ドリルストライク! アクセルファング!
そしてサーフライダーキーック!!」
フィニッシュは3人同時の物理突撃攻撃で、
麻痺した水竜にとどめを刺すことで決めた。
「オーシャーーーン!! ガポポッ!?」
ドラコは倒された水竜から落下し、泥沼に沈んだ。
「オーシャン戦闘不能! 主人であるドラコ選手に
降参の意思を尋ねます!」
「ドラコ、降参する?」
「するっ…………からっ…………さっさと…………引きっ…………」
どうやらドラコは泳げないらしく、窒息することの
無いSAFの環境下であっても、泥沼から浮かぶこと
すら敵わないようだ。
「上げろっ…………!!」
そう言って、完全に沈んでしまった。
「わかったぜ! ウィント、スパロウ、泥に手を
突っ込んで助けるぞ!」
アレウスは責任感のある目付きで返事をし、
3人共同で泥沼に腕を突っ込んだ。
「うーん、変だな。この辺に沈んだと思ったん
だけど…………」
アレウス達はいつまでたってもドラコの腕を
掴めないことに首を傾げる。と、その時
「ドラコ選手戦闘不能! よって、チームアレウスの
勝利!」
「「「うおおおおおおおおっ!!」」」
「あれ!? ドラコ窒息死しちまったの!?
…………まぁ、勝ったし良いか!」
「にゃ~~!」
「ギギギッ!」
アレウス達も勝ったので、喜んだ。その後は
当然流れるように勝ち進み、グループバトル
部門も優勝を飾った。
評価ポイント600達成、そして…………総合ポイント
1300達成ありがとうございますっ!!
本当に励みになりますっ! 今後もご愛読をしてくださる
と、更に色々と発想力が高まりそうです!
12/4 本日1時台に更新します。




