パワー・アクセル・ストライク!!
・ちょっとアレウスの現在のjobについて。
job名は気功士で、格闘家から派生した中級jobです。
打撃、斬撃、衝撃、風、守の波動を駆使して格闘を
繰り広げます。本編でも解説が入りますが、波動の
基本威力は最大HPの高さに依存し、HPが少ない程
威力が倍増します(最大5倍程度)。
70話
アレウスとジャンヌはモンスター達を蹴散らしつつ、
今回のクエストのターゲット、タトレックスが巣食う
沼地の中心に到達した。
「絶対居ますよね」
「だな。全方位注意だ」
背を合わせ、全方位を見渡す。
『ザババアッッ!!!!!!』
刹那、10個の甲羅が現れた。
「避k…」
10個の甲羅から、異次元の速度で頭が1つづつ飛び出し、
ジャンヌの発した掛け声ごと2人を押し潰した。
「…………今のは最高のアシストだな」
「たまたま俺の長所を活かせただけのことッス」
2人は押し潰された訳ではなく、跳躍で回避したようだ。
付け加えると、アレウスがジャンヌを抱えることで、
彼女の跳躍力を補ってもいたらしい。
「アイツに向かって私を投げろ!」
ジャンヌは頭ゴッチンこして混乱しているタトレックスの
内、1体に向かって自身を投擲するようアレウスに指示を
出した。
「!……ラジャー!『刃の波動展開』、『波動供与』」
アレウスはジャンヌを時速200km程度で投げる直前、
自らに波動を纏わせ、その波動をジャンヌに与えた。
「はあっ!!!」
ジャンヌは普段使っている『前回転剛鉱斬』を強化した
『超前回転剛鉱斬』を放った。アレウスの投擲によって
強化技の条件を達成できたらしく、元の技の威力がSTRの
2.5倍計算だった所、強化技はSTRの25倍計算となる。
加えて波動補正もかかっているため…………
『グゴオオオオッ!?!?』
タトレックスを一撃の元、粉砕することに成功した。
ジャンヌ個人の能力だと、STR、TEC、AGIのどれを
とっても強化技の条件を満たすためには、大幅に不足
していた。しかし、アレウスの力を借りることで条件を
満たし、自身の特化させているSTRを存分に活かすことが
出来たのだ。加えて
「反動ダメージも無し。これ以上無い相性だな!」
リアルフィジクスモードのアレウスと違い、
ノーマルモードのジャンヌは反動ダメージを
受けることが無いため、(パワー系)リアル
フィジーカーとノーマルユーザーの良いとこ取りが
出来たのだ。
『『『『『『グワオオオオオオオッッッッ!!!!!!』』』』』』
しかし、大技を放ち終えて無防備なジャンヌを
付近にいるタトレックス達が逃がすわけがなく、
すかさず食い付きの狙いを定めた。
「衝の波動展開・超連殺真空拳!!」
アレウスは籠手装備の格闘家が覚える『舞空連殺拳』の
亜流『連殺真空拳』を強化した、『超連殺真空拳』を
6体のタトレックスを中心に放った。
ややこしいが端的に言うと、攻撃速度に応じて高威力な
波動を連続で発射する技だ。因みに波動そのものは
使用者の最大HPの高さに応じて強力になるため、
最近著しい筋肥大と過剰な呼吸によって、著しく
心肺機能が向上しているアレウスにとって、波動は
最高の戦力と言える。
『グオオオ…………』
「硬ぇ奴には衝撃が有効なんだがなぁ」
6体には5分の2程度のダメージを与えられたが、
素早く頭を引っ込めた残り3体には殆どダメージを
負わせれてなかった。
「ならばもっともっとぶちかませば良いだろう?」
ジャンヌが大剣を掲げながら声をかけた。
「ですねっ!」
アレウスはジャンヌに衝の波動を渡し、
もう一度自身にも纏わせた。
「波動勁!」
アレウスは素早くタトレックスの懐に潜り込み、
格闘家時代に取得した発勁に、衝の波動を乗せた
亜流技で攻撃を開始した。2発撃ち込めば確実に
倒れるので、素早く技を発動できるMP消費の方法で
立ち回った。
「うおおおおっ!!」
ジャンヌは六連続の回転技『バスタースピン』を
絶妙な位置とタイミングで発動させることで、
タトレックスの甲羅、右前足、左前足に6回ずつ、
合計18回被弾させた。
『グオオオオオ…………』
ただのバスタースピンだったらタトレックスが
沈むことは無かったが、今回は衝の波動を纏って
いたため、食らえば食らうほどHPをゴリゴリ削られて、
倒されたのだ。
「オラ! オラ! オラァ!!」
「うおおおおっ!!」
『『『『グギャアアアアッ!!!!』』』』
たちまち更に4体が沈み、残るは五体満足の3体だ。
『グルルルルルルッ!!』
すると3体は、頭手足を甲羅に引っ込めて、
どこぞの携帯獣や魔物のように高速で回転を
始めた。
「!、風で受け流せ!!」
甲羅から赤い光を見つけたジャンヌは、
すかさずアレウスに助言した。
「炎! なる程…………」
2人は精神を落ち着け、同時に技を放った。
「風迅裂斬!」
「風の波動・ウィンドクロー!」
お互いが持てる力を全て使った風属性の攻撃を放ち、
タトレックス達が放った炎を全て当人達に返した。
『ヌガアアアッ!!』
次は高圧水流に切り替え、強風を水という"質量"を
もって強引に押し退けてきた。
本当にどこぞの亀の携帯獣にそっくりだ。
「無理に力で対抗するな!」
ジャンヌは大剣の角度を水と鋭角になるように構え、
堅実に受け流した。しかしアレウスは決して攻めの
姿勢を崩さなかった。
「衝の波動・スーパードリルストライク!」
圧倒的速度、回転力、そして水を弾く衝撃の力をもって、
真正面から高圧水流を弾きながら爆進を始めたのだ。
『グオオオッ!!!』
ジャンヌを攻め立てていたもう1体が加勢しようとも
無意味であり、その勢いのままタトレックス1体の
甲羅を破壊しつつ、瀕死までHPを削った。
「私としたことが情けなかった!」
アレウスの姿勢に奮い立たされたジャンヌも
タトレックスとの距離を詰め始める。
「超波動勁!」
いささか衝撃要素に特化した発勁を五体満足の
1体に命中させ、即死させた。
「前回転剛鉱斬!」
虫の息の亀にはSTRの2.5倍の衝撃で十分だ。
『グオオオッ!!』
残り1体のタトレックスは、四面楚歌の状況だ。
故に背水の陣の覚悟で、異次元速度の食らいつきを
構えた。
「流せば問だi…!?」
大剣による受け流しの構えを取ったが、何かに
弾き飛ばされ、大きく移動した。
「アレウスッ!?」
アレウスはジャンヌに軽く笑みを浮かべると、
タトレックスの餌食になった。
「……………………何を…………して…………いる…………????」
まさか自分を庇って死ぬとは思っていなかった
ジャンヌはクエスト失敗したと考え、呆然と
メニュー画面を表示した。
「……………………ん??」
よーく味方のHPゲージを確認すると、アレウスは
瀕死であるが生きていた。
「やー、危なかった。守の波動と5接地転回法の
ダブルコンボを達成できなきゃ死んでましたよ」
アレウスは全身から溢れんばかりの波動を放ちながら、
先程のアクションを説明した。どうやら『守の波動』で
防御力を上げ、その上木にぶつかる時に得意の5接地転回
法を使ったことで、異次元速度の首伸ばしを耐えきった
のだ。直撃でなかったことも助けになったのだろう。
「さぁて、背水の陣の覚悟は俺も同じだぜ。
打の波動展開…………」
あろうことか、タトレックスには1番効果が薄い
打撃属性の波動を纏った。
『グッ…………オオオオオオオオオッ!!』
タトレックスも再び首を押し縮め、溜めを作った。
「間に合わんっ!!」
ジャンヌがどのような技を放とうとも、
既にアレウスの死は確定的だった。
「波動砲ォォォォォオオオオッッ!!!!!」
『グオオオオオオオオオオオッッ!!!!!』
異次元の速度の波動と肉弾のぶつかり合い。
勝敗は………………
『バキボキゴキィ!!!!』
何かが複雑にへし折れる音と共に、タトレックスの
首がひしゃげ潰れ、甲羅が粉々に砕けてHPゲージが
一気に空になった。
勝者はアレウスだった。
「勝ったーーーーーー!!! やりましたぜ副長!!」
アレウスは大きな達成感を感じながら、
ジャンヌと喜びを分かち合った。
「……………………」
「…………副長??」
うつむいて動かなくなったジャンヌを心配し、
声をかけた。
「おーi…おおわっ!?」
急に抱きつかれ、アレウスは動揺した。
「うおおおっ! 遂に…………遂にA級に上がれたっ!!
レイル達に追い付かれる前にA級に上がれたぞぉぉっ!!
アレウス!! 本っっっ当にありがとう!!!!」
ジャンヌは長い間ランクアップ出来ていなかったらしく、
メキメキとのしあがってくるレイルやクラフトといった
メンバー達にも焦りを感じていたようだ。そのため、
こうして無事にランクアップ出来たことに感極まって、
泣き出したのだ。
「そ、それは何よりです…………因みに俺が追い付いた
ことに関しては…………??」
顔を真っ赤にしながらちょっと気になったことを言った。
「ん? お前は例外だよ。しょっぱなから隊長と
張り合える奴相手に真っ先に比べるなんて無意味にも
程があるだろ」
嬉しそうに、それでいて真っ直ぐにアレウスの目を見て
サラッと言ってしまった。
「や、やっぱりですか~~…………なんか寂しいッスよ~」
「そう落ち込むな。強かろうが弱かろうが差別はしない。
兎に角今日は協力してくれてありがとう」
「いえ、俺もA級に上がれてめっちゃ嬉しいッス。
それが副長と一緒だと尚更!」
2人は満足げにタトレックスのドロップアイテムを
回収しながら、帰りは並んでゆっくりと雑談しながら
ギルドに戻った。
「ア、アレウス君…………いつの間に副長と
お近づきに……………………」
たまたまグラス・コープの入り口でクエストに
発とうとしていたミューが2人の仲良さげな様子を
見て、勝手に大きな勘違いをしていた。そもそも
いくらSAFで仲が良くても、現実で会ったことの
無い他人同士である以上は早々付き合わないし、
付き合っているかどうかはチームメンバーの
プロフィールを見れば、交際相手の有無欄で
確認できるのだ。
最も、アレウスがジャンヌに抱きつかれていた時は、
中身がオッサン疑惑を1ミリも浮かべること無く、
照れていたことは事実だが。
「アレウス、暇があったら俺と共に未開の地を
探索してみないか?」
アグロフラッシュ本部に戻って早々、レオナルドに
声をかけられた。
「たしかにめっちゃ暇ですが、内容をお聞かせ
いただけますか?」
「結論から言うと、その未開の地に魔王軍の幹部が
居るとの情報があるのだ。どうだ? 来てくれると
俺としても嬉しいが」
情報を一字一句も違えずに聞き込み、1度深く
深呼吸をしてから
「是非いきましょおおおおうっっっ!!!!!」
全身全霊の大声で返答した。
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