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授業風景(後編)

ちょっと筋肉の生物学的うんちくが出てきます。

最後に言いたいことの要約があるので、すっ飛ばし

ても問題ありません。そしてご都合主義に見える

かもしれませんが、悪しからず。

65話


「隆二、昨日魔王幹部を倒したときの事を聞せてくれよ」

「あっ、聞きたいー!」


 拓人と美優が、昨日SAFで行われた百鬼夜行イベントで、

隆二が行った戦闘について聞いてきた。


「良いぜ、最初は俺が全力の一撃をおみまいする

ところから始まった。けど、あんまり効いてなくてさぁ、

受けたら即死攻撃のオンパレードをかわしながら、

何とか通用する攻撃を探る泥仕合に移ったんだ」


「うわぁ…………普通そんなのの攻撃を何度もかわせる

訳無いだろうに…………」

「金子君だからこそ出来る芸当だよね」


「俺だって長時間の集中は無理だ。その上、ヒュジラ

4体を召喚? して一斉にブレス攻撃をさせるなんて

ふざけた真似までしてきやがった。ヒュジラは問題なく

倒せても、ウロボロスはそうはいかない。そんな時に、

あのSSS級ユーザーさんが来たんだ」


「サイボーグって所がシンプルにカッコよかったな」

金子(アレウス)君やイシュタルちゃんとはまた違う形で

強そうだよね」


「おう、実際彼と連携してから回避や攻撃を円滑に

行えるようになったしな。能力の感じ的には、あらゆる

属性の強い攻撃や魔法も扱える、どんな奴でも対応できる

完璧超人って感じだったな」


「まるでデキスギ君みたいだね!」

「オールラウンダーか。なんだかんだ物理押しな隊長は

憧れてそうだな」


「そして美優とイシュタルが放った攻撃が命中して、

ウロボロスは大ダメージを受けた。これによって弱点は

魔法だと分かったから、彼が放った魔法を増幅して

受け流す技で、ウロボロスに直撃させて倒したって訳だ」


「魔法を…………受け流す??」

「柔術家ってそんな技もあるのか…………不遇職

だったから、俺も知らなかったよ」


 実際、柔術家は剛術家と比べてSTRが低いと言う点から

人気が無く、ここまで使いこなしているのは隆二(アレウス)位の

ものという側面もあるのだ。


「いやー、jobを経験すればするほど、どんな

スタイルを極めるか迷っちまうんだよなぁ。

兎に角2人とも昨日は助かったぜ。ありがとよ!」


「俺は2人をバイクで運んだだけだよ」

「えへへ…………照れるなぁ…………」


「さて、ご馳走さまっと。呼吸しながら

昼寝するぜ、お休み~」


 隆二は、食卓を囲むために合わせていた机を元の

位置に戻し、腹式呼吸をしながら寝るという行動を

とった。 下手なイビキの何倍もうるさい。


「…………昨日も思ったけど、金子君のこれって何なの??」


 美優が怪訝そうな表情をしながら拓人に訪ねた。


「何かねー、隆二の筋肉の質が変わったかもしれない

から、それに合わせてATPを大量生産するために、

常に呼吸を意識しているらしいよ」

「えーっと、ATPってミトコンドリアから作られる

あの?」


 美優は理系科目で唯一生物だけ得意であるため、

直ぐに点と点が結び付いた。


「それそれ。それで、筋肉には大きく分けて

3種類あるって知ってる?」

「う~ん、分かんないや」

「一番速く動く速筋、動きは遅いが持久力が高い遅筋、

速筋と遅筋の中間的な性質を持つ中間筋の3種類ある

んだ」

「…………あっ、保健体育で習ったやつだ! 確か速筋が

糖分を使って、遅筋が脂肪と酸素を燃やしていたよね。

ってことは…………え? 金子君ってゆっくり動く遅筋が

増えちゃったの!?」


 上記の情報と拓人の説明から、美優は隆二の筋繊維

比率において、遅筋繊維の割合が増えたと思い込んで

しまい、とても驚いた。


「ノンノン。それがそうじゃないんだ。さっきも言った

通り、隆二の過呼吸はATP生産の為に行われている。

より強く速く動けるようになるためにね」

「うんうん」

「だけど遅筋繊維が増えてしまえば、弱く遅くなって

しまう」

「でもATPを生産するミトコンドリアは遅筋繊維に

多く存在する」


 完全なる矛盾である。


「そこでこの矛盾を解決する為に考えられる仮説が、

ATP貯蔵・分解に特化した新たな筋繊維の分化説だ」

「新しい…………筋繊維?」

「そう、新しい筋繊維だ。運動には大体3種類の

運動形態があって、強度の高い順にそれぞれ

ATPーCP系、解答系、有酸素系と呼ばれている」

「金子君は絶対ATPーCP系に特化しているよね」


 ここで授業のチャイムがなり、生物の授業が始まった。


「もちろんその通りだ。隆二は度重なる全力の筋トレで

ATPーCP系を極限まで磨き上げ、本来持つ速筋、

中間筋、遅筋で可能なATP分解をキャパシティ

マックスまで行っていたと考えられる」

「SAFをやりはじめてから、更にリミッターが

外れてきているよねぇ…………」


 美優は苦笑いしながら最近の隆二について指摘した。


「そう、ただでさえ限界まで筋力を発揮していた

隆二が、更に筋力を発揮しなければいけない環境に

置かれた。その時、単純な筋肥大やリミッター解除

だけでなく、未知の筋繊維分化が起こったと考える

ことが出来るんだ」

「うふふ…………面白い説だね。だけど、具体的に

どう変化すれば、更にパワフルな筋肉になるの

かなぁ?」

「俺と隆二の見解では、速筋のミトコンドリアが

微増した筋肉が出来て、その筋肉内のミトコンドリアが

常に飽和状態になるまでATPを生産・貯蔵していると

考えている」

「つまり…………ATPーCP系をフル駆動するために

ATPを作り続ける筋肉が出来たってこと?」

「そう言うこと」


 ふと隆二の方を見ると、授業を聞きつつ常に呼吸を

意識していた。


「この筋肉は中間筋のミトコンドリアを少し減らし、

ATPを貯蔵するスペースを増やしても出来そうだし、

何なら遅筋からでも多少出力が低いけど分化出来ると

考えられるんだ」

「それに、金子君はクレアチンリン酸も大量摂取

しているから、そう言う意味でもその超速筋?

みたいなのが出来る環境が整っているね!」


 一昨日ヤクザ襲撃事件で助けられた時に、持って

いったお礼の1つにクレアチンがあったことを思い出し

ながら、考察を加えた。


「まぁ、ATPを作って筋肉に送るだけなら、

血管回りの細胞のミトコンドリアを増やすだけ

でも出来そうだけどね」

「きっと筋肉も細胞も両方ミトコンドリアが

増えているんだよ!」


 話を要約すると、隆二の筋肉に兎に角、

前代未聞の速さで収縮するタイプの筋繊維が

現れ、そのポテンシャルを発揮させるために

過呼吸を行うようになったということである。


「あっ。もう終わりかよ」

「あ~、生物終わっちゃったよ~。化学苦手だよ~」


 生物が好きな隆二と美優は非常に残念がった。


「や、やっと終わったぜ…………」


 逆に生物が苦手な武三は安堵の息をついた。


~6時間目・化学~


「やあ、道先君。来週のテストは僕が一位をもらうよ」

「デキスギ…………ま、精々頑張ることだな」


 勉学ツートップがこの学校的にレベルの高い

トークを行った。…………が


「でも結局どっちも100点取って終わりだよなぁ」

「俺たちからすりゃイヤミ以外の何でもねーぜ」


 達観して見届ける隆二、武三と


「molって何!? 麦芽(モルト)の一種か何かなの!?

食べれるの!?」


 理系選択者だが、殆どの理系科目が苦手な

美優であった。


~放課後~


「今夜もSAFで合おうぜー!」

「うん!」

「じゃなー!」


 いつも通りそれぞれの場所に向か…………


「隆二! 突然で悪ぃが、夏大会手伝ってくれ!」


 今日の体育で隆二が凄まじいホームランを打った

ことから、武三が野球部の助っ人として誘ってきた。


「良いけど、4番でもやれば良いか?」

「出来れば投手も少し手伝ってくれ!」

「まぁ…………良いぜ」


 SAFで属性ポーションをマッハスローしているので、

大丈夫と判断した。それからそれぞれ、ある程度遅く

まで部活に打ち込み…………


「…………帰りもボディーガードが必要なのね」

「うん。…………お願い」


 実際はボディーガードじゃない目的で隆二を誘う

美優と共に帰ることになった。


「金子くーーん!」


 自転車置き場で法二に声をかけられた。


「どうした? そんなに慌ててデキスギらしくねぇぞ」


 隆二がらしくない法二の行動を心配していると


「突然で悪いんだけど…………陸部の短距離の選手が

1人怪我で出れなくなったから、2ヶ月後の大会に

金子君が出てほしいんだ。お願いだよ!」

「良いぜ。100m走なら新記録出してやるぜ!」

「ありがとう! あ、的場さんもちょうど良い所に!

女子の方も人手不足だから、良かったら走って

くれないかい? クラスで一番速かったよね!」

「え、ええっと…………」


 自分が陸上の露出の高いユニフォームを来ている

姿を想像し、躊躇した。


「大丈夫だ。自信がねぇなら俺がインストラクターに

なって、効率的に鍛えてやる! だから折角だし出て

みようぜ。弓道大会まではSAFのリアルフィジクス

モードメインで特訓すれば良いしさ」

「そ、そうだね。デキスギ君、私も登録するって

女子の責任者さんに伝えて」

「2人ともありがとう!……というか、2人ともSAFを

やっていたんだね。金子君は前に聞いていたけど」

「ああ、そうなんだ。的場さんとはSAFを通じて

仲良くなったんだよ」

「そ、そうなのよ~」


 相変わらず少し照れながら話したが、隆二が

ノーリアクションなのも相変わらずだった。


「リアルフィジクスモードで特訓というのは

中々素晴らしいアイデアだよ。最近金子君みたいな

見た目のユーザーが、リアルフィジクスモードで

身体能力の向上に成功したって言っていたし、きっと

速くなれるよ!」

「うん。頑張ってみる!」

「インストラクターの卵(自称)として、責任を

もって的場さんを速くするぜ」

「じゃあ2人ともよろしくね!」


 こうして最近は退屈でもない学校が終わった。


「バイバイ。明日も一緒に行き帰りしようね」

「ああ、俺がいる限り、ヤクザの指一本にも

触れさせねぇぜ」

「…………うん」


 明らかに頬を赤らめた美優に気づかずに、

手を振りながら自宅へ自転車を走らせた。


(それにしても、昨日のサイボーグさん…………

どこかデキスギっぽさがあったせいか、ついつい

タメ口で話しちまったな。マナーは守らねぇとな)


 そして法二も…………


(僕としたことが、リアルフィジーカーの彼に、

金子君と話すように接してしまったな。今度

会ったら一言謝らなくちゃね。それと、

ウロボロス討伐の連携についてのお礼も

言わないとね)


 お互いの正体に気づかぬまま、それでいて

生産性を上げ続ける2人であった。

武器(扇)について


スターやアイドルみたいなjobが装備できる武器。

ブレスに強く、切断や様々な効果の風属性特技を

多く習得できる。反面、質量に対してリーチが短いため、

攻撃速度及び命中にやや難を抱える。

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