対ユーザー能力
あらすじ:ギルドに申請しに行ったら、
何か図々しそうな奴に絡まれた。
5話
「お前……リアルフィジクスモードをやっているのか?」
唐突に聞かれたので、一瞬だけ思考が止まった。
「……そうですが、それがどうかしましたか?」
「どうもこうもねぇだろ。下調べ無しに
SAFを遊んでんじゃねーぞ、カス!」
「は? 何でリアルフィジクスモードを遊んだだけで
お前なんかに罵倒されないといけないんだ?」
ここまでの話では、完全に隆二が言いがかりを
つけられているようにしか見えない。
(知らねぇ人間に敬語抜きに高圧的な態度を
取る事といい、こいつ……ネット弁慶の小学生か?)
最低限の礼節を知らないでオンラインゲームを
やっていることも問題だが、実はもう一つ問題点が
ある。
「だーかーらぁ! 下調べすらせずにこのゲームに
参加しているんじゃねぇよって言ってるんだよ!
最低限の義務もこなせねぇのか??」
「そんな義務は誰からも聞いたことねぇよ。
何が気に食わなくてゲームで威張ってるのか
知らねぇが、お前、このままじゃ中学行って
から盛大に虐められるぞ? 後、このゲーム、
15歳未満禁止だからな」
SAFはR15指定のゲームなのだ。キャラクリ次第で
アバターが魅惑的な見た目になる他、敵モンスターの
中に存在する刺激が強いもの、任意で切り替えられる
グロ描写等が原因だ。
「…………プッ! アハハハハハッ!! このゴリラ、
マジで頭沸いてるぜ。雑魚くなること待ったなしの
モードを選択するわ、俺の事を小学生と勘違いして
説教垂れるわ…………小学生はテメェだろ! その気持ち
悪いアバターでマウント取ろうとしやがってよぉ!!
本当はクソガリのテナガチンパンジーなんだろ??
え?」
「顔は変えたが、ガタイはミラーメイクシステムで
投影したぞ。俺はボディビルやってるんだよ」
そしてテナガチンパンジーってなんだよと思った。
「おー、おー、分かるよぉ…………分かる! 大きく
なりたいんだよねぇ。でもさ、悲しいかな?
ボディビルで着けた筋肉は使えないって決まって
いるんだよ。すぐ息切れするし、遅いし、重いし
…………尚且つ非力極まりない! 現実に気づこうね、
僕」
隆二はこの時点でコイツとの会話は無駄だと悟った。
「…………お前とは話すだけ無駄らしい。もう二度と
話しかけてくるなよ」
そう言って、非常識ユーザーの横を通りすぎようと
したが、彼は隆二を行かせないように通せんぼした。
「…………聞こえなかったか? 二度と話しかけるなと
言ったんだ」
あまりにもしつこすぎるため、本当に威圧的に
凄んだ。
「お前さ、人様に迷惑かけようとしてんじゃねぇぞ。
皆! このクソ迷惑雑魚野郎が、二度と遊べないように
思い知らせるぞ!!」
頭の上に名前表記のあるユーザーの殆どが隆二を
囲うように集まった。
「…………おいおい、不良のカツアゲじゃねぇん
だからさ、本当に呆れるぜ」
隆二的には正直なところ、「拓人は何でこんな
ゲームを薦めてきたんだろう」という気持ちが
沸いている。
「カツアゲ? そんなの比じゃねぇほど恐怖の
どん底に落としてやる! かかれっ!」
全員がそれぞれの得物で襲いかかろうとして
きたので、素早く間を詰めて、ずっと喋って
いる非常識ユーザーの腕を掴み、鈍器代わりに
ぶんまわした。
「うわあっ!」
「嘘だろっ!?」
「キャアッ!!?」
「はあっ!?」
非常識ユーザーぶん回しは殆どの取り巻きに命中し、
その大半のHPは半分以下に。剣士・盗賊系のjobの
癖して、反応できなかった者のHPは空っぽになり、
自分達のギルドへ死に戻りをする結果となった。
「おのれ!」
「バカやめろおい!!?」
遠距離を陣取っていた魔法系の一部は、魔法を
放ってきたのだが、これは非常識ユーザーを盾に
すればどうにでもなる問題だ。
「どうした? リアルフィジクスモードを遊ぶ俺は、
皆に迷惑をかける程弱いんじゃなかったのか??」
「ぐうぅうっ!」
HPゲージが4分の1を切り、ピンク色になった
非常識ユーザーは、完全に油断していた。
(どう言うことだよ、ギルドに申請して、ましてや
ノービスから下級職にjobチェンジした俺達が、
ノービスフィジクスのクソヤロウに何故遅れを
取る!?)
「なぁ、おい。俺はコイツを二度と悪さできない
くらいに躾てから、ギルドに申請するつもりだが
…………お前らまだ邪魔をするのか?」
他の連中を睨み据え、威圧的に聞いてみる。
「…………ふっ、何を言うかと思いきや、お前が
ギルドに申請するだと?」
「笑わせないでよ。やれるもんならこの数に
勝ってみなさいな」
「さっきのようにはいかねぇぞ」
そう言って、荒い連携攻撃を繰り出してきた。
「ベノムダガー!」
盗賊職の1人が素早い身のこなしで斬りつけてくる。
「あくびが出るぜ」
蹴りの間合いに入ったタイミングで中段蹴りを
ジャストヒットさせた。
「くらえっ!」
『ヒュッ!』
「おらよっ」
大剣を振り下ろしてきた戦士に対しては、
その直前に飛んできた矢をしゃがんで回避
しつつ、反作用で超加速させた木刀で大剣を
切り上げることで、大剣ごと空の旅へと
ご案内した。
「今度こそ!」
魔法使いがマグ・ショットの強化版、
メガ・ショットを放ってきたので、
当たるすれすれで回避しつつ、向こうに
気づかれないようにマグ・ショットの
準備を済ませた。
「しまっ……」
このままマグ・ショットを撃つのではなく、
自ら魔法使いの方へ加速して、マグ・ショット
ごと接近した。
「マグ・キャノン!」
「ぶぼぁっ!?」
魔法使いの顔面に命中させたこの攻撃は、
魔力球射出というか、最早熊手突きだった。
「もう怒った! お前を一撃で殺す!!」
大分数が減った取り巻きの内の1人が
怒り出し、謎のオーラを出し始めた。
「よ、よせ! こんな奴にMPを大量消費する
技なんt…」
「良いぜ、見せてみな」
その剣士と同じパーティーメンバーと思われる
男が制止しようとしたが、隆二は側面から飛来した
矢を回避しつつ、敢えて挑発した。
「そうかよ! 後悔すんじゃねぇぞ?
デンゲキソード・ファストフォーム……」
(ん? 何かの漫画で聞いたことあるような……)
隆二からすると、どこか聞き覚えのある技名に
思考を巡らせつつ、構えから居合斬りと判断した。
「ふぅぅ……ヘイズ」
相手が剣に手をかける直前に、隆二は跳躍しつつ、
マグ・ショットをその場に留めておいた。
「スラッシュ!!」
正に一瞬の斬撃。隆二が想像していた、バラエティー
溢れる戦士達が人喰い竜を漫画の居合技そのものであった。
「やったか!?」
「やったろうな」
「けど漫画の技名言うのは止めとこうよ。運営と
作者が訴訟を起こしたら遊べなくなっちゃう」
「そうそうそんなこと起きねぇよ。なんにせよ
アイツは死n…」
「ばーか、誰が死んだって?」
「「「「フォオォォオオッッッ!!?」」」」
振り替えると、いつの間にやら隆二が隣に
立っていたのだ。
「それとなーにがヘイズスラッシュだよ。
紫電一閃って技じゃねーか」
必殺技は履歴に書かれるので、それを指差し
つつ指摘する。
「ど、どうやってレオンさんの攻撃を避けた……!?」
「なぁに、ヘイズスラッシュ(笑)のタイミングに
合わせてジャンプしたんだよ。ついでに魔力球を
ポイ捨てしたら、丁度顔面に当たって技の終わりと
同時に死んだぜ?」
「あがが…………」
大技すら対応されたことで、いよいよ全員が
青ざめた表情になった。
「で? まだやるの??」
「…………ぶっ飛ばす!!」
「そっか」
残りの有象無象はかわして殴るという、
ボクシングの教本のような動きで残り
1人まで減らした。
「あっ…………あの…………見逃して…………下さい…………」
ピンク色ストレートヘアーの女が、ようやく
追い詰められたことに気付き、見逃して欲しいと
懇願し始めた。
「何で? 姉ちゃんも俺に弓放ちまくってたじゃん。
しかも地味に的確な援護だったぜ~」
「お、おっ、女の子を殴るなんて、男の風上にも
置けないじゃないですかぁ~~!」
ここに来て女尊男卑を謳い出した。
「…………確かに。女を殴る男はみっともねぇよな!」
「そう! そう! っだから、私を殴るのは無し!」
「分かった。じゃあ、"現実"では絶対に殴らないよ」
「やった…………現実??」
違和感しかない言葉に顔を青ざめる。
「VRならさ、痛くも痒くもないじゃん?」
「でもっ! "ぐわっ"てくるじゃん!」
恐怖から、震えと汗が止まらなくなっている。
「顔にも傷が着く訳じゃねぇ。衝撃くらいスリルと
して楽しんだらどうよっ!」
彼女が反応することすらできない速度で
ボディブローを決め、空中へと殴り飛ばした。
「キャーーー!! う"っ!?」
そして15m先の大木に命中させ、彼女の
ギルドへ死に戻りさせた。
「全く…………あんな雑魚共のくせして、
今までよくカツアゲなんか出来たよな。
後で拓人にアイツら何なのか確認して
みるか」
野次馬たちの視線を無視し、ギルドに
申請するため足を踏み出した。
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