暴れ猫ウィント
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本編ではアレウスが初テイムした猫に大苦戦
していて…………?
43話
「なぁ、ウィント。もう少し俺に優しくなって
くれても良いんじゃねーか?」
アレウスはウィントと名付けたウィンドキティに
声をかけた。
「フーッ! カッ! カッ!」
ウィントは別に特段何かに怯えているわけでも
ないのに、威嚇行動で返事を返してきた。
「はぁ、ばあちゃんも昔はシルバーに手を焼いたって
言ってたけど、こんな感じだったのかなぁ?」
部屋中をグルグル駆け回り、壁に爪を引っ掻け、
しまいには天井を平行移動し始めるウィントを
見ながら思いを馳せた。
「流石にここまではねーか」
カーテンからカーテンへ跳び移り、移るカーテンが
無くなったら風を起こして高速スピンを行う様子に、
ウィントが特別キカン猫なだけだと結論付けた。
「なぁ、ウィント。暴れ足りねぇなら、フィールドに
散歩しに行こうぜ」
アレウスはそう言って、外へと向かった。ウィントも
一応着いては来ており、なつき具合は壊滅的だが
テイムモンスターとしての自覚はあるようだ。
~森林エリア~
『グエッ!?』
『ゴポォア!?』
『クギャ!?』
外に出たウィントの暴れ具合は更に凄かった。
重力を無視したかのような動きのウィントによって、
モンスター達は爪で裂かれ、風で切られ、旋風に
吹き飛ばされ、小さな腕から繰り出される猫パンチで
砕かれたのだ。
「スッゲェじゃん! 良い筋肉してるんだな!」
「ふぁぁ~~…………」
アレウスの称賛に興味無さげに毛繕いしている。
「じゃ、今度は俺の番だぜ!」
アレウスも周りの木々を縦横無尽に飛び交いながら、
周辺のモンスター達を粉砕し始めた。
「ドッセエェェイ!!」
全速力の跳び蹴りで、この地域で厄介とされている
巨木モンスターを粉微塵に砕いた。
「どうだ?」
「カッ!!」
ウィントはこの様子を見ても、ツンツンしていた。
「はぁ、俺を舐めてるとかそういう問題じゃない
のか? じゃ、別の場所に行こうか」
アレウスはウィントの様子から、善を急がない
方向で動くことにしたらしい。
「…………」
しかし、彼の背を見ながら着いてきている
ウィントは何やら思うところがあるような
目付きでアレウスを見ていた。
~とあるダンジョン~
「見てろよ~」
アレウスが腕の関節を全て外し、全力で鞭をしならせた。
「ニャ…………!?」
あまりの速度、破壊力、そして多段ヒットにより、
ダンジョンの壁は融解して、裏ダンジョンに続く
道となった。
「流石のウィント氏も度肝を抜かれたと見たぜ。
まぁ、D級ダンジョンの裏ダンジョンだから、
モンスターのレベルも高くてA級が限界だろう」
「…………」
「おいおい、それでもツンツンは崩さねぇのな」
先へ歩いていくウィントに呆れつつ、アレウスも
進んでいった。
「お、アースドラゴンか!」
眼前には巨大で体格の良いドラゴンが立っていた。
「ニャアッ!!」
ウィントが飛び出し、爪からカマイタチを飛ばす技
『ウィンドクロウ』を繰り出した。
『グルルルル…………』
かすり傷は出来たが、HPゲージは殆ど減っていない。
「協力して」
「フギャアッ!!」
アレウスの協力を妨害するかのような動きをしつつ、
アースドラゴンを攻め立てていく。
「…………そんなに俺が嫌いなのか?」
この様子に、流石のアレウスも落ち込んだ。
『グオオオオッ!!』
「ニャッ!?」
怒り、先程よりも速く激しくなったアースドラゴンの
一撃を辛うじて避けたウィントだったが、その表情
には焦りが見られた。
『グオアアアッ!!!』
容赦のない尾の一撃が空中のウィントに襲いかかる。
「させるかっ!」
脚の関節を外したアレウスの蹴りが、アースドラゴンの
尾の軌道をウィントから逸らした。
『グオオオオオッ!!』
間髪入れず、爪の一撃を繰り出したが、これも
アレウスが受け止めることでガードした。
「うおお…………ウィント、俺がそんなに嫌いなら……
後でテイムを解除してやるからさ…………」
「にゃ…………」
ウィントはアレウスに身体を張って守られたことに
心底驚いた表情を浮かべている。脳裏には、過去に
自身を肉壁の1つとして酷使した挙げ句、"弱い"
という理由で捨てたテイマーの顔も浮かんでいる。
「まずは生きて帰るぞ!!」
その一言で、憎きテイマーの顔がかき消された。
刹那、何かが折れたような音と、涙目でのけ反る
アースドラゴンの姿が見えた。アレウスがアース
ドラゴンの腕を蹴りでへし折ったのだ。
「今だ! サイクロンストライク!」
「フシャアアアアッ!!」
ウィントは周囲に風を纏い、両腕を突き出しながら、
爪をドリルのようにして突撃する。
「ただ指を咥えてみてるのがテイマーじゃねーぜ!」
アレウスは関節を外した左腕で鞭を大きく
しならせながら、何度も何度もグルグルと
回した。ウィントと同じ方向に旋風を巻き
起こして回転速度を上げるためだ。
「いっけぇぇぇええ!!」
『グゴアオオオオオッ!!!』
攻撃は弱点の頭に当たり、アースドラゴンは
倒れ付した。
「ウィント、良く頑張ったな! ウィンドキティで
アースドラゴンを倒したのは、多分お前が初めて
だぞ!!」
「ニャッ」
華麗に降り立ち、優雅なポーズを決めた。
「さてと、ギルドに戻ったらいよいよお別れか。
こんなに嫌われてるのに、いざ別れが迫ったら
不思議と寂し…………ん?」
足に感じた違和感に目線を下げると、ウィントが
頬をアレウスの足にすりよせていた。
「ウィント…………まさか、これからも居てくれるのか??」
「ニャー」
「そうかそうか。俺は嬉しいぜっ!」
「ムギャッ!?」
アレウスはあまりの嬉しさに、ウィントが
触られるのを嫌いなことを忘れて全力の包容を
してしまった。……ので
「フシャッグルルルルルルッ!!」
「目がーーーーー!?!?」
全力の目潰しを食らってしまった。ダメージ量的
にはアースドラゴンの爪攻撃以上に食らっている。
「ポーション、ポーション…………」
目が見えなくなったので、回復ポーションを
手探りで探している。
「カッ!!」
またしても何かを吐き捨てるように主張し、
先へと歩いていった。しかし、アレウスの
ステータス欄のウィントのなつきレベルは、
"大嫌い"から"ちょっと仲良し"へと進歩
していた。
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