チンパン・パニック!
ヤバい…………自分の服のボキャブラリーが無さすぎて、
冒頭で無駄に時間を使っちまった…………そしてタイトル
で分かる通り、めっちゃギャグに偏重してしまった…………
あ、ブクマ210人超え、ありがとうございます!
42話
「鍵よしと」
愛用の高速チャリの鍵かけは忘れることが出来ない。
目に届く場所で乗り逃げされたのなら、追いかけて
容易く捕まえられるが、自分が居ないところで
盗まれた場合、絶対に取り戻せなくなってしまう。
「お、拓人ー!」
「隆二! 後は的場さんだけだな」
「おう!」
こうやって誰かと遊びにいったことは殆ど無い。
初めて拓人と街へ遊びにいった時は何を遊べば
良いのか分からなかった位だ。
「隆二、随分とラフな格好で来たんだな」
「おう、アメリカで昔流行った格好だぜ!」
白い半袖のシャツにジーンズ、そして黒い
スニーカーだ。大柄な男達が好んで着そうな
格好だ。
「そういう拓人も随分とオシャレしてきやがってよ。
俺とカラオケ行った時とは随分違ぇじゃねーか」
大きな赤い四角に黒いラインが入ったチェックの
ポロシャツに、下は無地の深緑色のクォーター
パンツだ。靴も地味に茶色のブーツとシンプル
ながら隙がない。
「当たり前だろ。仮にも女子が同行するんだ。
俺達が変な格好しているせいで、的場さんに
悪評を流すわけにはいかねぇよ」
「あー、なる程な。それは一理あるわ」
「隆二も運動靴じゃないスニーカーを選んだのは
偉かったぞ!」
「いや、何で上から目線なんだよ…………」
と、その時
「お待たせー! 2人とも個性出てて面白いねー!」
「「おお……」」
茶色のベレーキャップに白地の肘丈のトップス、
デニムのショートパンツ、白地に何本か黒い
横ラインが入ったスニーカー。極めつけは、
無数のデコレーションで飾った何か凄まじく
オシャレな肩掛けバックで決めきっていた。
「どうしたの?」
「いや、オシャレさじゃ的場さんには
敵わないなってね」
「皆揃ったし歩きながら話そうぜ」
学校から徒歩7分の電車に乗り、動物園近辺の
駅へと15分で着いた。
「しかし金子君、乗員の中でも一際目立っていたね~」
「いつもの事だぜ」
「隆二と歩いていると、みんな道を開けてくれて、
スイスイと進めるんだ」
今の隆二の見た目は色黒で筋骨隆々な大男が
全身のラインを隠しきれないシャツでアピールを
している状態だ。顔の温和さもかえって怖く見える
人も居ることだろう。
「お陰さまでもう入り口だね」
直ぐに入り口を潜ることが出来た。
「おおっ、猫科最大の虎じゃん!」
拓人が実物を見て感動したような反応を見せた。
「うちの母方の祖父母家の猫そっくりな模様だな!」
隆二と仲良しな猫は、シルバーメタリックの
アメリカンショートヘアーなので、模様が虎と
そっくりなのだ。
「しっかし動物園の虎にしては良い筋肉だな」
「そうなの。この動物園は特殊でね、エサやりの
時に運動させるような仕組みを作っているんだ。
ほら!」
美優が指差した高台の上には牛の肉が十数kg単位で
並べられた。そして虎はむくりと起き上がり、巨体に
似合わない軽やかな3連ジャンプでエサ場まで登った。
「さっすが。アイツなら助走すれば学校の2階まで
ひとっ跳びだな!」
「今の隆二も出来るんじゃない?」
「かもな」
「…………この2人、絶対に動物園の楽しみ方
間違っているよ。次行こうよ」
次はかなり縦長の人工芝ゾーンだった。
「あそこ!」
「おっ、チーターだね!」
「後ろ足の筋肉がマジで美しいぜ!」
殆ど透明な縦長の仕切りに囲われ、チーター4匹が
並んでいる。
「この仕切りって…………」
隆二が何かを思いながら美優に聞いた。
「今からあの子達が競争するんだー。仕切りは
横取り防止のために一時的につけられているの」
「成る程、なら俺はあそこの一番鋭い眼光の
チーターが勝つ事に賭けるよ」
「俺はあそこの全身ムッキムキな漢だ!」
「私は一番手前の目がクリクリで可愛い子!」
『位置について、よーい、ドン!』
合図と共に隠してあった肉が現れ、糸で
引っ張られた。同時にチーター達も駆け出す。
「うおぉーー! 速ぇぇーーー!!」
「がんばれー!」
「ちょ、2人共恥ずかしいって!」
全力でチーター達を応援する2人に、拓人は
苦笑いしながら静粛を求める。
「おっ、やっぱ筋肉は裏切らねぇ!」
隆二が見込んだチーターが1位だった。それも
その筈、現在生存するチーター最速の男である
からだ。その速度は時速135km。
「あー、惜しかったなぁ…………」
「まぁまぁ。えーと俺が賭けた奴は…………」
確認してみると、コースの半分地点を気もそぞろに
トタトタ歩いていた。
「アガッ…………!!!!」
拓人は一応頭脳明晰で名を馳せているので、
この結果は少なからずショックだったらしい。
「いや、この程度で」
「私達幻滅とかしないから、大丈夫だよ」
2人もそんな気持ちを組んでか、暖かく
励ましている。
「う、うん……次行こうか…………」
~ゴリラ園~
「隆二、ポーズ取ってみな~」
カメラマン拓人が、ゴリラの横手前に立つ
隆二に声をかけた。
「サイドライセップス!」
両腕を後ろで組み、顔以外の身体部位を側面に
向けたポーズを取った。
「取るぜ。3・2・1」
『ウホッ!』
後ろで草を食べていたゴリラは何を思ったのか、
シャッターの瞬間に腕を前で組む方の『サイド
チェスト』を行った。
「凄い!」
この1枚には美優も大はしゃぎだ。
「おおー、お前見込みあるなぁ!」
隆二は思わずゴリラにグーサインを送った。
『ウホッウホッウホッウホッ…………』
ゴリラも返事とばかりにドラミングを開始。
実に心が繋がっている2人であった。
~カラカルの庭~
「凄い跳躍力だ」
「しなやかで可愛くて高く跳ぶの!」
「負けてられねぇぜ…………」
~ヒヨコ小屋~
「うひょお~、久々のヒヨコだぜ」
隆二は小学生以来のヒヨコにご満悦だ。
「か、可愛いけど身体の中に入っちゃったよぉ~!
助けて~~!!」
「俺達には無理だ!」
~蛇小屋~
「白のアオダイショウ…………アルビノだな。
…………2人とも、何でそんなに離れてるんだ?」
「金子君…………怖くないの??」
「お、お、お、俺は無理だからな!?」
~イルカの大水槽~
「イルカの大ジャンプは昔から人を惹き付けるよね…………」
「あれぞ信頼の証だよな…………」
「別々の動物同士だからこそなし得る友情だよね…………」
~鷹飛空園~
打ち出されたブーメランに向かって鷹が
飛び立ち、見事にキャッチしてから、
主人である鷹師の元へ戻ってきた。
「鳥って飛べて良いなぁ…………」
美優が鳥に憧れていると…………
「なあ、拓人。俺もウイング持って、さっきの
FLASH君並みのスピードで走ったら飛べるかな?」
「車に羽根をつけたら飛べることは立証されているし、
出来なくは無いかもね」
この2人は相変わらず動物の身体能力を
自身に転用することばかりを考えていた。
因みにFLASH君はチーターの名前である。
「全く…………この2人を誘って良かったのか
悪かったのか…………」
~ゾウ園~
「ではファントム君と金子隆二さんの
リフティング対決…………スタート!」
ゾウのファントム君は鼻で、隆二は右足での
リフティング対決が始まった。ルールは単純、
落とすまで多くリフティング出来た方の勝ちだ。
3分後
「ギ、ギブ…………」
金子隆二の記録、150回。
「スタミナ消えるまで良く頑張ったな」
「サッカー部員顔負けだったよ!」
そして時は更に流れ…………
「あっと、ここでファントム君が150回を
超えたので、勝者、ファントム君~~!」
「凄かったぜ、ファントム!」
互いに腕と鼻で握手をした。
~分岐道~
「いやー、凄い奴だったよ。今度来た時は絶対に勝つ!」
「動物園の楽しみ方としてはどうかと思うけど、
2人の間に火花が走っていたよね」
「確かにな。お、チンパンジーだ」
拓人が指差した方向には、チンパンジー達が
住んでいるエリアがあった。
「どれどれ…………む!」
良く観察しようとした隆二は、ある個体と
目があった瞬間、目付きが鋭くなった。
「2人とも俺から離れろ!」
刹那、1匹のチンパンジーが竹竿を
投げ飛ばして来た。
「「うわあああっ!?」」
拓人と美優は左右に別れて回避したが、
隆二は動かずに、竹竿をキャッチした。
「何のつもりか知らねぇが、やるならタイマンで
決着を着けるぞ!」
『ギキーー!!』
すると、ボスと思われる筋骨隆々の個体は
竹を引っ張り、そのしなりを活かしてこちら側
へと来た。
『キイッ! キイッ!』
仲間に合図を送ると、仲間達が他の折れた竹竿を
投げてきた。ボスはそれを先程の隆二のように
キャッチした。
「に、逃げろーーーーー!!」
誰かの叫びで客全員が逃げ出した。
「隆二! お前も逃げろ!」
「俺はこいつと決着を着ける!」
「いや、幾らなんでも無茶よ!」
ゲームのように、痛覚が無ければポーションで
回復できるわけではない。
「いいや、俺の場合は逃げる方が無茶だぜ。
スタミナがキレたところで引きちぎられちまう。
だから先に逃げな」
そう言った次の瞬間、ボスは大振りで竹を
振るってきた。
「甘い!」
隆二は竹を軽く上へ動かすだけで、
攻撃をいなした。
『ギィギーー!!!』
ラッシュを放ってきたのだが、これらも
軽くいなして見せた。
『ギッッッ!!!!!』
ぶちギレたボスは、眼前の隆二に竹を投擲した。
「!」
フルスイング大根切りで相殺を試みたが、
こちらの竹が弱すぎたのか、壊れてしまった。
『ギッ!?』
しかし、ボスが持っていた竹もバラバラに砕けた。
「剣が無くても拳がある」
隆二の拳によって。
『ギィヤーーーー!!!』
今度は拳で語り合いに来たのだが、隆二には
やはり簡単にいなされてしまう。
「どうした? ボスの実力はこの程度か??」
『ギッッッ!!!!!』
全力の右腕引っ掻きも上段受けで無力化され…………
「ここからは」
『ギョッ!?!??』
「俺のターンだ」
目にも止まらぬ右中段突きを、鳩尾に1発
入れられてしまった。
『ゼェ…………ゼェ…………ギギッ…………』
満身創痍のボスの姿に、向こうの部下達も心配そうな表情を浮かべている。
「さてと、そろそろ帰りなよ。皆心配そうni…」
『パン! パン!』
刹那、注射針がボスの首筋に刺さった。
「ご無事ですか!?」
「いや……それよりもこれは…………??」
「麻酔銃です。眠らせました」
「殺してないなら良かったです。俺はこの通り
五体満足ですので。こちらからの反撃も鳩尾に
拳1発だけに止めました」
「そうですか。念のため診察を受けて下さい」
「分かりました。拓人、的場さん。ちょっと
長引くかもしれん。悪いな」
「いや…………お前が無事だったら何でも良いよ…………」
「死んじゃうかと思ったんだから…………」
それから1時間ほど検査されたのだが、本当に
何処にも怪我が無く、獣害事件にあっておきながら、
形だけの手当て費用を貰って帰ることになった。
そして舞台はSAFへと移る。
「俺は今日、動物達に触れ合ったことで、他者への
気持ちの伝え方を磨いてきた」
アレウスとなった隆二は、目の前の髭の
キューティクルが魅力的な、薄緑色の
毛並みを持つ子猫に語りかけた。
「お前の心を掴む方法は、これだ!」
新技『フード・テイム』を繰り出した。
「さ、お食べ」
子猫は警戒しながらゆっくり近づいてきて、
餌を食べ始めた。
『テイム…………』
「ごくっ…………」
アレウスに緊張が走る。
「「ごくっ…………」」
着いてきた2人も緊張している。
『success!』
「にゃ~」
「よっしゃあーーー! ウィンドキティ、ゲットだぜ!
これからよろしくな。ウィンドキティ」
アレウスは可愛らしい姿のウィンドキティを抱き上げ、
微笑んだ。すると、ウィンドキティは……
「カッ!!」
可愛らしさと裏腹に、キカン顔をしながら何かを
吐き捨てるように主張した。
「「「へっ??」」」
この様子に抱き抱えていたアレウスのみならず、
残り3人まで唖然とする。
「フギャア! グルルルルルルッッ!!」
凄まじい剣幕でアレウスに噛みつき、引っ掻き、
連続引っ掻き蹴りを食らわせ、地面へ降り立った。
「うぉい…………テイム成功したんだよな…………??」
ステータス画面を見ると、確かにテイムモンスター
一覧に、ウィンドキティは乗っていた。
「え~と、人に抱かれたり触られることが嫌い…………」
地面で耳をかいているウィンドキティに一言
「だからってそこまでしなくても良いと思うよ」
そう言った所で、シカトされるだけであった。
ブクマ、星5つを着けてくださると、やる気が上がります。感想やレビューも、お待ちしています!




