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動画製作(後編)

日付変わった…………orz

309話


~再生ボタン・ON~


 城内に、乾いた風の音と、不気味なBGMが響き渡る。


『コツ、コツ、コツ』

「オラ、魔王。勇者様が来てやったぞぉ!」


 見た目が最早山賊と変わらない勇者が、魔王の

部屋の門前で到着を伝えた。同時に、BGMが不気味さ

と壮大さを併せ持った物へと変わる。


「…………」


 カメラは魔王の部屋を写し、魔王が玉座に座った

まま、無言を貫く様子を流した。


『ガンッッ!!』

「居るなら早よ開けろゴルゥア!!」


 その態度に苛立った勇者が、見た目相応に怒りを

(たぎ)らせ、門を殴りつつ怒声をあげた。


「ククッww。脳筋が、開けれるもんなら開けてmi…」

「オラッ!!」

『ドゴォォオオガァン!!!!』

「グゴォアッッ!?」


 扉の前で立ち往生を食らわされた勇者を、魔王が

鼻で笑おうとしたところ、勇者は門を全力で蹴破り、

その門が魔王に直撃してしまった。


 そして、またしてもBGMが緊迫した物へと変わった。


「開けろって言ってんだろゴルゥアア!!」


 勇者が怒鳴りながら入室する様は、魔王討伐と

いうより、山賊による他組織への殴り込みといえる

様相だった。


「ック、人間風情が、やるではないか…………」


「魔王と言う割に、貧弱なヤツだなぁ、オイ」


 門の直撃で虚を突かれた魔王は、言い合いも押され

気味になった。


「そう思えるのは今のうちだぞ? 貴様ごときの攻撃、

百発食らおうが、かすり傷すら負わん」


「なら、試してみるか。オラァアッッ!!」

『『『『『『シャキィン!!』』』』』』


 それでも挑発を返す魔王に、勇者は持ち前の筋力を

もって、神速の飛ぶ斬撃を6発ほぼ同時に放った。


『ボウゥン!!!』


 その直後、BGMが消え、部屋一帯に暴風が吹き

荒れたことから、その威力がうかがい知れる。


「プッ、何処を斬ってるんだ?」


 しかし、肝心の飛ぶ斬撃は、魔王の上へと飛んで

いき、1発として命中しなかった。当然魔王は、その

様を鼻で笑った。


 …………だが、勇者も笑っていた。


「何処だと? う・え・だ・よ!」

「何?」


 そして、勇者の返した言葉に魔王が上を向いた瞬間、


「グラビティ!」

『ズン……!!!!』


 クライマックスを思わせる壮大さのBGMが、流れる

と同時に、一瞬、暗くなる錯覚を覚えるような重力の

変化が起き、


『ギュオッ!!』

「グアアッ!?」

『ドグシャアッ!!』


 急加速しながら落ちてきたシャンデリアに、魔王は

玉座ごと押し潰されてしまった。


「クッ! 動けぬだと…………!?」


 魔王は力んだが、ビクともしなかった。


「ヒョロガリに圧殺攻撃は効くだろう? とどめだ。

筋肉剣術・奥義!!」


 その様子を見下ろす勇者は、腰を大きく落とし、

両手に持つ剣を顔の高さで水平に構えた。


 更に、背景に流星群が写る。


「流星大根」

『ギュオッ!!』


 気合いを充填し、背景が元に戻った瞬間、勇者は

一瞬で距離を詰めた。


「落斬閃!!」

『ドゴォォオオオオオン!!!』

「グアアアアッ!!」


 そして、世界最速の抜刀術を遥かに超える剣速で、

大根斬りに被せるように、隕石を衝突させた。


「負け…………か。勇者よ、我を討ち果たすとは見事なり。

だが、我が意思を受け継ぐ者が必ず現れ、貴様ら人間

を根絶やしにすることだろう…………。カハァ……!!!」


 切ないBGMに代わり、破れた血塗れの魔王は、

最期の言葉を残して息絶えたのだった。


 …………だが、次の瞬間、BGMがゆっくり消え、


「フン、テメェみてーな雑魚の意思を受け継ぐ奴

なんざ、誰一人として現れねーよww。さぁーて、

後は国王をぶちのめして、姫を拐い、ここの連中に

リフォームさせてマイキャッスルにし、全国民に

参勤交代させる極楽生活の始まりだぜーー!!」


 バイオリンとトロンボーン、チューバ、バリトン

サックス、そしてエレキギターとドラムが非常に

パンチを効かせた、超邪悪なBGMが流れ出し、魔王

を破った勇者が、本性を現して剣を掲げたのだった。


~豬雄の部屋・パソコン机前~


「…………まぁ、CGのチープさとかは置いといて、

初めてにしては、迫力とかはあったと思うぞ?

…………けど」


「マジで投稿するのか…………??」


 とことん奇をてらった怪作を投稿することに、隆二

と拓人は躊躇いを見せていた。


「あったぼーよぉ!! 配信者が最も重視すべきは

掴みぃ! 初っぱな中の初っぱなともいえる初投稿

でぇ、どんだけインパクトを与えれたかが運命の

分岐点だぜぇ!! ゥオ"オ"ォ"ーケィイ!?」


「「お、OK…………」」


 だが、豬雄の熱演に押されてしまい、一泊置いて

控えめに了承したのだった。


「じゃ、投稿するわー。まずはアカウントにログイン

して、「動画を投稿する」ボタンを押して、各種項目

を埋め尽くして、「投稿する」ボタンをポチっとな!」

(こんなプロセスなんだな。なるほどなるほど)


 隆二は今後のために、豬雄が投稿する姿を強く記憶

したのだった。


「やー、それにしてもお前ら、イシュちゃんとミュー

は同じ学校なんだろ?」


 豬雄が、アグロフラッシュ女子について聞いてきた。


「あー、言って良いのかな? コレ」

「まー、豬雄なら大丈夫だろ?」


「ああ、無理なら言わなくて良いぜ」


 だが、2人の迷う様子を見て、無理をしないように

止めた。


「いや、大丈夫だ。ミューは同じでイシュタルは

違うぜ」


「おお!? そうなんだ! まぁ、ミューは"知らん男の

部屋なんて行けないわ!"って、至極全うな断り方を

してたから合点いったけど、イシュちゃんとは現実

でもお友達なのか??」


 それでも隆二は教えてくれたので、豬雄は納得と

追加の質問を投げかけた。


「これはその内明かすとするぜ」

「お前が友好的に接し、健全さを伝え続ければ、

その内色々と教えてやるさ」


「リョーカイ。友人だと解釈しとくぜ」


「好きにしな」


 しかし、月季は流石に複雑な立場の人物なので、

2人は豬雄と更に仲良くなってから話すことにし、

彼も諦めて自己解釈で満足した。


「ってことはさぁ、ミューは友達以上恋人未満的な

存在なんだろ? お前ら2人のどっちが先に付き合うか

勝負したりしてるの?」


 そして、2人と近い場所にいる美優の事を質問した。


「いや、特にしてないな」

「てか、多分俺ら以外の誰かを好きになってそうだと

思ってるぜ?」


 だが、拓人に思っていた事と違う返答をされた上、

隆二が斜め上の事を言ったため、


「ええ!? 俺はてっきり、隆二と距離が近づいて、

拓人が嫉妬してるとばかり思ってた…………」


 目を開閉させて驚き、自分の想像を話した。


「ああ、美y…ユー、俺に筋トレ習ってるから、ついで

に俺に触れて筋肉の構造を勉強してるんだよ」


「というか、隆二の運動能力で遊んでるよな(昨晩と

いい、隆二がヘマしそうで怖いな…………てか、美優

のリカバリーが楽勝な件)」


 2人は、現状で知りうる彼女の行動を伝え、隆二は

危うく彼女の本名を言いかけていた。


「だから、モデル体型になって、どっかのイケメンと

付き合いてぇんだと思うぜ」


「なる程ね~。…………と、言いたいが、本当にイケメン

目当てでお前にあこまで懐いているのかなぁ?」


 だが、ここまで聞いても、豬雄は納得しなかった。


「女子ってそんなもんじゃね? 男視点で好きな素振り

を見せても、イケメンじゃなければそうでないことが

殆どだって聞いたことあるし。豬雄は違うと思うのか?」


「ああ。ズバリ隆二、お前のことが好きだと思うぜ!」

(まぁ、正直それでも全然不思議じゃないとは、最近

思い始めている)


 隆二が拓人に教えられた知識で反論しても、豬雄は

美優が隆二を好きだという意見を曲げなかった。また、

実は拓人もそう思い始めているようだ。


「いやいやまさかぁ、日本最強ヒュージガイな俺が、

日本の女子に好かれるなんてことぁねーって!」


「そんなに言うか? 昔女関係で苦労したのかよ?」


 あまりにある種の自己否定をする隆二に、豬雄は

ついつい直球で質問を投げ掛けてしまう。


「ショボい規模で嫌な目には数えきれねぇ位あってた

ぜ」


「まぁ、お前がそれで良いなら無理にくっ付けない

けどよ」

「少なくとも、俺もお前らなら応援できるから、

告白する勇気が出ねぇ時や、されちまった時は言って

くれよな」


 直球質問にすら答えせしめた隆二に、流石の豬雄も

尊重の意思を見せ、拓人は隆二のどの選択にも応援

する意思を示した。


「拓人まで…………、ま、ねーと思うけど、そんなことが

あったら言うわー」


 最後は穏やかな雰囲気で終わる。…………そう思った

瞬間、


「モタついてると、俺が付き合っちまうかもなーww」


 豬雄が地雷を踏み抜いた。


「「いや、お前は絶対無理だと思う」」

「テメェら2人して即否定すんなボケェ!!」


 当然、2人の突っ込みにより、地雷が爆ぜ散る。


「それと、お前がその気なら、イシュタルにお近づき

になるのは俺ってことで、良いんだよな?」


 こうなると、拓人もガンガン地雷を踏み抜く為、


「バッキャロォ!! イシュちゃんだけは絶対俺と

カップルになるんだよぉ!!」


 口論という爆発は広がる一方で、


「いーや、俺だ!」

「俺だぁ!」

「「うおおおおお!!」」

(好かれすぎだろ、月季ちゃん。スッゲェ納得だけどよ)


 隆二に呆れられるという結末になるのであった。


~17時58分・隆二の自室~


「うし、飯食ったからSAFに潜るか!」

『マッスル!』


 隆二が時間前にSAFに潜ろうとすると、


「えーと、美優が晩飯で遅れるのか。こればかりは

筋肉都合でシャーナシだな。そうだ、朝のお返しを

してやろっと」


 美優からルインのグループチャットに遅刻

メッセージが来たので、個人チャット文章を

送った。


「さて、幹部一人とラスボス覚悟しろよー!」


 5人は今夜も月面を駆ける。

最後までご覧下さりありがとうございます。


明後日辺りから、ガッツリバトル展開になると思います!

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