逆もぐら叩き
上半身カエルとの激戦!
4/17長らくお待たせして申し訳ありません。
深夜帯、あるいは昼頃に更新予定です。
301話
「アイスランス!」
人間の胴体を粉砕してしまう氷柱が、大穴から
顔を覗かせているカエルに直進している。
「「やった!!」」
先程まで盾を広げて後衛を守っていたクラフト、
自分のモンスター達の位置を微調整し続けていた
トリトンは、勝利を確信した声をあげた。
「まだよ!」
だが、ずっと矢を引き絞って攻撃の機会を
伺っていたミューは、パーティーで2番目の
AGIも手伝って、カエルの逃避行動を見逃さ
なかった。
「バラけて動き続けろ! そして下に気を付けろ!」
アレウスも、カエルが地面に潜ったことを
見逃さず、全員に撹乱の指示を出した。そして、
「フーー…………」
皆が縦横無尽に駆け巡る中、両足を可能な限り
長時間接地し、そこから伝わる振動の感知に注力
した。
(トリトン!)
そして、"断トツで低い周波数"の振動を元に
カエルが動く方向を見切り、大地を"可能な限り
垂直"に踏み込み、該当する方向…………トリトン
が居る方向へと超加速した。
『ゲコォ!!』
「ぎゃ…」
次の瞬間、右腕を振り上げたカエルが、トリトン
の背後の大地から出現した。カエルはそのまま、
右腕を振り下ろす。
「左に跳べ!」
『ゲガッ!?』
殺気を消しながら浮遊していたアレウスは、
カエルが腕を下ろす前に、背後から脳天へ一撃
を加え、それと同時にトリトンに退避の指示を
出した。
「うわっ!」
『ボゴォッ!!』
トリトンが、身体を右に動かしている最中に、
カエルの右腕による袈裟懸けが炸裂した。
動かなければ、DEFの低い彼は即死していても
おかしくなかった。
「オラッ!」
『ゲコォ…………』
アレウスも、素早く斧を引き抜きつつ、カエル
の背を蹴って後退する。カエルの大振りな右腕が、
盛大に外れているところに、彼の余裕が見える。
『ゲe…コオッ!??』
「そんなものかい?」
お得意の音速に達する舌技も、口を開けた瞬間に
飛ぶ斬撃を連発されて、完封された。
「爆炎連射!!」
更に、ミューが爆破属性と炎属性の矢を無数に
放ち、畳み掛ける。
『ゲゴゴォ!!』
「生物は得意科目だったな!」
アレウスは、両生類の弱点を元に、このカエル
の弱点属性を推察したミューを褒めた。
「エヘヘッ!」
ウインクを返すほど喜んだミューだが、冷静な
思考の元、現実も見ていた。
(また潜ったせいで、あまり当たらなかったなぁ…………)
カエルが再度地中に潜ったことを、見逃さ
なかったのである。
「もっかい来るぞ!」
アレウスも皆に注意しながら、再度周波数
の検出を試みる。
(俺を警戒して動いてねぇな)
このまま探知していては、カエルの動きも
無いと見たアレウスは、
『ドン!!』
勢いよく地面を蹴ってしまった。
「やっべ!」
過ちに気づいた時には、既に遅し。
『ベノミスト~~~!』
「くっ!」
アレウスの次に振動感知能力が優れるクラフト
は、自身の3m後方に現れたカエルの攻撃に、
反応することができた。
「って毒霧かよ!? クソッ!」
しかし、吐き出したのは毒液ブレスではなく、
毒霧ブレスだった為、盾の脇から蝕まれてしまった。
「食らいなさい!」
「アイスラッシュ!」
「オラオラオラオラ!!」
「一斉掃射!!」
カエルの出現に、後から気づいたメンバー達が
一斉攻撃するも、カエルは直ぐに退避を行った。
「!、イシュタル!」
カエルの進撃方向に気づいたアレウスは、
イシュタルに警告を発する。
『カエル叩k…』
「アイスウォール!」
『ゲガッ! やるゲコ…………』
"カエル"自らが地面に穴を作り、そこから
地上の"ヒト"を叩き潰す技だが、圧倒的質量
かつ絶対零度な防壁に阻まれ、穴へと帰って
いった。
『なぁ!』
だが、イシュタルの真下を経由して、警戒
していなさそうなミューの眼前に出現した。
「…………」
だが、普段なら喚き散らしているであろう
彼女は、極めて冷静にカエルを見据えていた。
「バレバレだぜぇ!!」
「食らいなさーーーーい!!」
『ゲガガガガガガガガガッ!!!』
カエルが声を出しながら地中を移動していた
為に、アレウスが粗方距離を縮めていたのだ。
カエルが出現した時には、既に連携可能な体制
が整っており、アレウスは更に距離を詰めながら、
ミューは距離を取りながら連続攻撃を続けた。
『ゲガァーーー!!』
「ま~た逃げるのか~~」
それでもしぶとく逃げるカエルだが、アレウス
は飽き飽きした様子で呟いた。
「袋のカエル、ねっ!!」
ミューは決め台詞を吐くと、今まで空いた穴
全てに、"爆炎が炸裂する矢"を放った。
『ゲガァーーーーーー!!』
「ゆでガエルにしてさしあげますっ! ホット・
スプリンガー!」
「そして科学の雷轟で筋収縮実験!」
『バチバチバチィ!!』
空気から伝わる熱、液体から伝わる熱、全身
を駆け巡る電気。これらを逃げ場のない場所で
食らわされた。
「シメのコルクアイス!」
最後に、イシュタルは行動制限の為の"氷の詮"
を、カエルが掘った穴全てに嵌めた。
「「「ト~リトン♪」」」
そして、現実の同校トリオが、トリトンに
合図を送る。
「ホラー貝、大・音・響!!!!」
『ヴオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!!!!』
合図に答えたトリトンは、テイムモンスターに
爆音を発生させた。固体より液体の方が音速が遅く、
尚且つカエルの速度に制限がかかる特性を活かし、
振動によるダメージを長時間浴びせる算段だ。
…………指示者のトリトンと、物理不得手のミュー
は、そこまで考えて動いていないのだが。
『ドドドドォーーーーー!!』
『怒ったゲコォーーーーーー!!!』
堪忍袋の尾が切れた。HPが残り1割を切った
カエルは、地面から間欠泉のごとき飛び上がりを
見せ、怒りを主張した。
『こうなったら、究極の舌技で君達を葬る
ゲコーーーー!!』
下から見上げた姿は、正に月面に映る上半身
のみのカエル。彼は、生き死にをかけた一手の
使用を宣言した。
「コクリ」
「「「「コクリ」」」」
その真下では、イシュタルの相槌に、相槌を
返すアレウス達の姿があった。
『舌技・致死毒音舌刺しィイィ!!!』
次の瞬間、致死毒が染み出る舌を、音速かつ
連続で、真下のアレウス達に突き刺してきた。
「アイスウォール!! そしてアイスピラーズ!」
イシュタルは、自慢の分厚い氷壁を真上に展開
し、その下に頑丈な氷の柱を数個配置した。
『ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ!!!』
『ピシピシピシ…………』
それでも、メイドイン・リアルフィジーカーの
防壁に、音速の連撃は堪えるらしく、氷壁にヒビ
が入る。
「アゲイン、アイスウォール!」
しかし、圧倒的魔力の持ち主ならば、壁を
もう一枚張ることで、容易く解決してしまえる
のだ。
『ゲコゲコゲコゲコ…………ゲッコォーー!!』
「解除」
最後っ屁が終わったタイミングで、氷の要塞は
温水となって消滅。残った者は、とどめの構えを
取ったアレウス達だ。
「太く短く、そして楽しい時間をありがとな」
『我が屍を越えていくゲコ!!』
彼等の一斉攻撃により、カエルは討伐されたの
だった。
『ゲココ、1つだけ、言い残したいことがあるゲコ』
「ん? 言ってくれ」
地面に横たわったカエルは、最後の話を始めた。
『我に対してしたような攻撃方法で、現実のカエル
に無意味な実験をしちゃダメゲコ。分かったゲコ?』
恐らく、好奇心からの実験で、その辺のカエル
の命を粗末にするなと言いたいのだろう。
「ああ、現実とゲームの区別、どちらでもして
良いこと悪いことの区別は、つけているつもり
だぜ」
「あたぼうよ。配信見てる皆も、生き物を大切に
するんだぞーーー!」
「絶対だよ!」
「私達からもお願いしますわ」
アレウスが答えた後に、トリトンが画面の向こう
の視聴者達に訴えかけ、ミューとイシュタルも、
人気を活かして訴えかけの通りを強めた。
『その返事を聞けて安心したゲコ。来年も機会が
あれば戦うゲコ~~~…………』
自然消滅したカエルの周囲には、ちょっと
多めのアイテムが転がっていた。
「じゃ、皆で山分けしようか」
クラフトの一声で、回収タイムが始まった。
「おお、視聴人数が増えてる! コメントも
穏やかだ!」
トリトンは、自分のチャンネルの様子が改善
されたことを、喜んだ。
「トーリトン!」
「おわっ!?」
いがみ合ってたミューが、いきなり片手を
取ってきたので、彼は驚いた。
「あんた結構良いことするじゃん。ご褒美に
クラフトとポジショニングチェンジさせてあげる♪」
「フフッ、私も隣に失礼するわ」
「お、おお…………是非是非!!」
「ちょ、私が隣に座ることも喜びなさいよー!」
「勿論、喜んでるって!」
アイテムを回収し終えたアレウス達は、
新フォーメーションで移動を開始した。
「…………飛び豚の毛並み、艶々だなぁ~~」
クラフトはクラフトで、飛び豚の背中を
堪能していた。
「しっかし、毒霧噴射したときはビビったぜ」
「DEFの高さと盾装備で堅牢なクラフト君に、
毒を確実に浴びせて継続ダメージを与える
なんて、やはりINTが高いボスだったわ」
「まだ、アレウスありきな立ち回りだけど、
前のボス程追い詰められなかったわね」
「初手の舌は、飛び豚がどうなるかと思った
けどな~~」
「うし、今晩解散後、全員腕立て伏せで
大胸筋を追い込みきること!」
「「「「勘弁して~~!」」」」
最期までご覧くださり、ありがとうございます。




