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月と比べて…………??

大変お待たせしました。その分、今週土曜日にも

投稿予定です。

227話


「回ってるなぁ~~」


 アレウスは、煙越しに見える物体に対し、

そのまんまな感想を述べた。


「怖すぎなウサギ、変なカニと来て、次は何が

現れるのかしら?」


 ミューは、今までの幹部の種類から、目の前で

回転している対象の種類を考えている。


「月に関連する動物だとは思うのだけれど…………」


 イシュタルは、ミューの発言から、月由来の

動物である可能性を示唆した。


「え? シンプルにUFOじゃねーの??」


 一方、このイベント自体初見のトリトンは、

一見すると斜め上な考察をしている。そして、


「いや、(かめ)だな」


 クラフトが、断定した。


『スッポーン! じゃなくて亀でーーーす! 正解ッッ!!』


 クラフトの予想通り、亀が回転を止めたと同時に

"スッポーン!"と叫びながら、頭・手足・尻尾を

"スッポーン!"と勢いよく出し、クラフトを()めた。


「「「「「・・・・・・」」」」」


 その様に、全員が言葉を失った。


「スッポーンが(こう)()から…………スッポーンって…………ウププ…………」

「いや、亀っつってるけど…………月はスッポンだよなぁ…………」


 酷いギャグで笑ってしまうことを、必死で

こらえるミュー。そして、相手の正体に混乱

するアレウス。


「月とスッポン。ねっ」


 アレウスの欠落した語学を補うイシュタル。


「イシュちゃんはお月さまだよー!」

「フフッ、ありがとっ!」


 ここぞとばかりに、イシュタルにアピールする

トリトン。


「だが、アイツはやっぱり亀だな」


 そして、クラフトは改めて目の前の相手を亀だと

断定した。


「何で?」

「ウサギとは関係ありそうだが、月と関係あるかぁ?」


 筋トレ師弟の2人は、その事に納得がいかないようだ。


「アイツの甲羅が厚いだろ? 亀ってスッポンよりも

立派な甲羅を持ってるんだよ」


「一方、スッポンやウミガメは素早く動くために、

背中を(おお)う甲羅が分厚い皮膚程度の厚さしかないの」


 だが、博識(はくしき)な2人は生物的特徴から、説明して

みせた。


「ヒュ~♪、イシュちゃん博識~~!!」

「フフフフ、トリトン君ったら」

「俺も褒めろ!」


 トリトンは、相変わらずイシュタルにアタック中だ。

当然、クラフトはツッコミを入れる。


『白系ヘアーな2人の言う通り! 俺は月でウサギと

シノギを削る亀! その名はジェリー・バイツ!!』


「ジェリー…………ゼリー」

「バイツ?」

「バイティング、()む、(かめ)

「あっ、台湾料理の亀ゼリー、()苓膏(れいこう)が元ネタね!」

「うおぉ~~! マーーージで博識且つ鋭いっっ

しょ! イシュちゃーーーん!!」


 今回も、即座に元ネタの料理名が判明した。


「…………ミュー」

「どしたの~~? アレウス~~」


 何かに気づいたアレウスが、ミューに小声で

話しかける。ミューはアレウスに話しかけられて、

嬉しそうに聞き始める。


「トリトンがさっきから連呼している"イシュちゃん"

って、マリリンさんの専売特許だって言ってなかった

っけ?」


「あー、ここにいたら間違いなくトリトンに魔法

(とな)えてるわー!」


「確かミュー、マリリンさんのルイン持ってたよな」


「ウフフっ! 後で動画のURL送っとく!」


『おい! そこの2人!! 話聞け!!』


「「ぁあ??」」


 話をシカトされてキレた亀が、乱暴に命令した

ところ、会話を(さえぎ)られた2人がキレた。


『俺はよぉ! 狂気の食人ウサギ、トップ・ポギーの

ライバルなんだよっ! 特にそこの筋肉重鎧、ポギー

を唸らせたお前を倒し、俺が上だと証明してやるぜ!!』


「…………へぇ~~、そんなに自信があるなら、期待

しちゃうぜ~~!!」


「直ぐに負けたら、運営にアンタの文句言ってアゲル!」


 亀の因縁を聞き、アレウスは戦闘意欲が俄然沸(がぜんわ)き、

ミューは亀にプレッシャーを与えた。


「…………運営に訴えられても知らんぞ」


 ミューの無鉄砲さに、トリトンは(あき)れてしまった。


『スピニング・フラッシュフルード!!』


 開幕早々、亀は回転しながら高圧水流を放ってきた。


「あ~らよっとっとーい!」


 リアルフィジーカーなら、当たれば即死クラスの水圧

なのだが、アレウスは攻撃の隙間を容易く掻い潜り、

接近していく。


「ウィルプルース!」


 一方で他のメンバー達は、イシュタルの魔法により、

正面からの攻撃を防ぎきった。


撥水(はっすい)加工!」

「爆風連射!」


 一方、クラフトは盾の撥水性を高める技で、鉄砲水

をほぼノーダメージに抑え込み、ミューはより風属性

を強めた爆風の矢で、ガードの隙間から飛来する水を

防ぎきった。


「ハゲコンドル、HAGE・バースト! ホラー貝、

サウンドストライク!」


「ギャオオーーー!」

『ヴオ"オ"オ"オ"ーーー!!』


 トリトンは、水流の隙間を()って、速射性の高い

攻撃をモンスター達に命じた。


『バシャーn…ズン!!』

『ほう、早速俺にダメージを与えるか』


 光速爆撃こそ、甲羅表面の水で無効化されたが、

音の塊は、水や甲羅を(とう)()して、内部にダメージを

与えられた。


「殴り合おうぜ!」


 そして、アレウスは既に目前まで迫っていた。


『ウォート・ラッシュ!』


 亀は、甲羅の隙間から水属性を纏った手足を

伸ばし、殴りかかってきた。


「隙間からザクザクザクッ!!」


 アレウスは、茂みに隠れる猫科動物並みに、身を

屈める事で下へ避難し、亀の四肢が上を通る度に、

両手斧を振り抜いた。


『ぬおおっっ…………バイツ!!』

「遅い!」

『ガメッ!?』


 亀は、すかさず(しゅん)(びん)な噛みつきを繰り出したが、

殺気を読まれて回避され、優れた動体視力から頭に

強烈な斬撃を入れられた。


「赤熱速射!」

「電磁砲!」

「アイスランス!」

「スピンHAGEバースト! サウンドラッシュ!

フェザーラッシュ!」

「ギャオオッ!!」

『ヴォ! ヴォ! ヴォ! ヴォ! ヴォ! ヴォ!』

「ブブブゥーーー!!」


 アレウスが作った好機を活かし、次々と追撃を

繰り出していく。


『誰がノロマじゃ、ボケェーー!!』


 だが、亀は一部の攻撃の被弾を妥協し、瞬発的に

身を弾く事で、()(めい)的なダメージを負うアイスランス

を確実に回避した。


「お前がノロマだー!」


 しかし、月面上でレーシングカー並の速度に達せ

られる、アレウスを振りきることはできず、甲羅に

猛烈(もうれつ)なラッシュを受けることになった。


(とはいえ、ここまで食らってHPが3割程度しか

削れていねぇのは、大した防御力だな。更に、極力

頭とか手足の被弾を回避するTEC、アイツのライバル

を語るだけはありそうだ)


 だが、現状有効打となったのは、弱点を斬った

アレウスと、属性相性に優れたクラフトの電磁砲のみ

であり、先程の一斉攻撃も、自然回復防止程度の効果

しか得られなかった。


「(…………おっ!?)何か来る!!」


 超パワー(ゆえ)に、甲羅の上から削り続けたアレウス

だったが、亀の異変に気付いて皆に注意を(さけ)んだ。


『ヒュゴオオオオオッッ!!』


「「なんだぁ!?」」

「「キャアアッ!!」」


 突如、亀甲羅から猛烈な蒸気が吹き出し、全員の

視界を奪ったのだ。


「風使いは(きり)を吹き飛ばせ! 霧が晴れるまでは殺気

と視覚以外の五感で奴を捉えろ!」

『出来るかよ!』

「逃がすかぁ!!」


 亀はアレウスの忠告を一笑に付し、他のメンバー達

の方へ突撃した。


「ハリケン扇風(せんぷう)()ーー!」


 状況を打開すべく、クラフトは声高らかに、自慢の

発明品を取り出した。…………だが!


「ブフォ!」

「クラフト君…………ウププ」

「ネーミングセンスダッセェ! って」


 3人は、壊滅(かいめつ)的なネーミングセンスに吹き出して

しまった。そして、それが致命的な動きの遅れに

(つな)がった。


「ジャアアアッ!!」

『ヴォオ"ォオ"ッッ!!』


 温度感覚・地面の振動を感知できるエアネーク、

音波で反響定(はんきょうてい)()が可能なホラー貝が、トリトンと

他2匹のモンスターに危機を伝える。


「「左右に散れーーー!!」」


 亀甲羅の後ろに付くアレウスと同時に、叫ぶ。


「くっ!」


 クラフトは、反応できた。


「あっ…………」


 しかし、イシュタルが僅かに遅れている。


「パーフェクトバリアー!」

「クラフト君っ!?」


 そこで彼女の前に(じん)()り、3割程度のダメージと

引き換えに、双方の命を繋いだのだ。だが、ここでも

誤算は起きた。


「キャアアアアッ!!」


 それた方向に、ミューがいたのだ。亀の速度なら、

余裕で体当たりを決められる。


「アレウスーーーー『ヴッ!』ーーゥゥウ!?」


 死に戻りを覚悟しながらも、助けを呼んだミュー。

亀の影が目前まで迫った次の瞬間に、上方向への

急加速を感じた。更に次の瞬間、今度は減速を感じた。


「間に合った!」

「アレウス…………」


 背後を振り替えると、ロングコートからはみ出た

大胸筋が見えた。どうやら、ロングコートをムササビ

のように広げて減速するアレウスに、張り付いている

ようだ。


「間一髪、四足走行で拾えたぜ!」


「怖かったよ~~!」


「安心はまだ早い。真下にありったけ風属性の矢を

ぶちかましな!」


「OK. 爆風連射!!」


 風を(まと)った矢が、無数に放たれる。同時に、別の

2ヶ所でも、


飛豚(とびぶた)、ハゲコンドル、羽ばたき!!」

「ギャオーーーー!!」

「ブブブーーーー!!」


「科学の暴風じゃーーーー!!」

霧後(きりのち)()れになりますわ!」


 強烈な風を起こしていた。


『ブワァァアアッッ!!』


 結果、霧は跡形(あとかた)もなく晴れ上がった。


「ミュー、真上に突風起こせるか?」

「もちろん!」


 ミューは、アレウスの肩の隙間から顔と腕を出し、

風属性の矢と爆発属性の矢を同時に放った。


『ブォン!』

「うし、ありがとな!」

「う、うん!!」


 風が起きた結果、共に落下を開始したのだが、

密着度が増した為、ミューの気分が更に高揚(こうよう)した。


『ボオオオッッ!!』


「「「「「!!」」」」」


 突如聞こえた燃え盛る音に、5人は反応を見せる。


「ジャアアアアアッッ!!!」

「そんなに熱いのか!」


 更に、エアネークがトリトンに、ソレがあまりに

高熱故に危険であることを伝えた。


『こんなに熱くなったのは1日振りだなぁ。それこそ、

スッポンポーンになりたいくらいの熱さだぜ…………』


「フフッ、冷ましてくれてありがとうね」

「少々ヒートショック現象気味だがな」

「つーか、昨日も最低でもこれくらい(ねば)ったチームが

居たんだな」

(あ~ん、もうちょっと密着していたかったよ~~)


 アレウス達も降り立ち、第2ラウンドの準備は

整った。しかし、


(ギャグは相変わらず寒いが、あの燃え盛る甲羅

…………リアルフィジーカーが、触れるなんて無理

だろ。アレウス、どうやって殴るつもりなんだ?)


 トリトンは、決定打になりうるアレウスの攻撃が、

通じなくなる事を危惧(きぐ)していた。


『第2ラウンドファイアーーー!!』

「燃え盛るぜぇ!!」


 時は待ってくれず、爆炎の勢いでバトルが再開した。

「アレウス…………」


「ん?」


「とんでもねぇ戦い方してんなぁ! カラス一匹で

3タテされたのも、納得だわ!」


「な~に、筋トレして、リアルフィジクスモードで

感覚を研ぎ澄ませりゃ、ヨユーだぜ。トリトンも

鍛えときなよ」


「まぁ…………腕立てから始めてみるわ」


最後までお読みくださりありがとうございました。

ブクマ750件たっせい、感謝です。

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