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ウサギの餅つき

カマセに近い中ボスの予定だったのに、とんでもなく

キャラの濃い中ボスになってしまった…………

20話


「哀れで矮小な地球人の皆さま方ぁ、こんばんはぁ!!」


 影の方から大きな声が聞こえたと思うと、そこには

身長3m程の筋骨粒々な2足歩行のウサギが、ウォー

ハンマーのような(きね)を担いで仁王立ちをしていた。


(((デカい…………)))


 クラフト、ミュー、イシュタルは、ウサギが放つ

謎の貫禄(かんろく)に気圧されてしまった。


「おう! 態度もガタイもクソデケェが、最低限の

礼儀がなってるウサギちゃんだな!」


 アレウスは逆に、自身と同じパワー系であることを

気に入ったようで、ウサギをいきなりちゃん付けして

呼んだ。


「おぉ、1人骨と筋肉のある男が居やがるなぁ! コイツぁ、殺りがいがあるぜぇ!!」


 ウサギはアレウスに軽く触れると、杵を構えて

臨戦態勢(りんせんたいせい)を取った。


「3人ともぉ! 構えろぉ!!」

『『『ザッ!!』』』


 アレウス達も、彼の(かつ)で構えを取った。


餅米(もちごめ)人間共のぉ!」


 ウサギは、ウサギならではの脚力によって、一瞬で

アレウス達との間合いを詰める。


「人間餅つき開始ぃ!」


 そして、腕力相応に杵を加速させ、超速の叩きつけ

を繰り出してきた。


「簡単に突かれるかよ!」


 アレウス以外の3名は、大きく距離を取って回避

したが、アレウスは最小限の体捌きで回避した次の

瞬間に、両手斧を水平に薙いだ。


「ローリング・人餅(じんもち)突き突きぃ!!」

「っと、やるな!」


 が、ウサギは想像を絶するアクロバティックさを

発揮し、跳躍と同時に全身を高速縦回転させ、時折

杵を伸ばすことで、圧倒的手数の連撃を繰り出して

きたのだ。


「オラァ!」

「月突きターン!」


 先程は大振りの回避動作を取ってしまったが、

相手が宙に浮いていることを利用して、一撃を

加えようとした。しかし、ウサギは杵を最大まで

大振りにすることで月面を叩き、その反動によって

アレウスの斬撃を回避した。


「待てや!」


 が、完全に月面上の身のこなしを習得したアレウス

は、すぐに距離を詰め始める。


空餅(そらもち)ショット!」


 魔力で空気を餅のような性質にし、それを音速で

飛ばすリアルフィジーカー殺しの技を繰り出してきた。


「ぅおっ!?」


 アレウスは、ウサギの杵の発光に気付いた事と、

中堅クラスの戦闘経験値により、この攻撃をどうにか

回避することに成功した。


 しかし、ウサギの攻撃目的は、アレウスを仕留める

事ではなかった。


「まぁ~ずは小粒のお米から~♪」


 飛ぶ打撃により、アレウスの動きに制限がかかった

(すき)に、他3人の方へ駆け出したのだ。


「爆速連射!!」

「上にビョ~~ン! そしてぇ!!」


 ミューの速度に特化した6本の射撃に対しては、

杵で神速で叩いた大地を引き戻し動作で、餅米の

ように伸ばし上げて作った壁で防ぎきり、


「!!」

「きゃあっ!?」


 次の瞬間には、イシュタルの間近まで迫った。

そして、


「ドン! ドン! ドン! ドン! ドーーーン!!」

「グオオオオオッッ!!」

「クラフト君っ!?」


 目にも止まらぬ5連打で攻め立てたのだ。幸い、

間に割り込んできた、盾を構えた防御姿勢のクラフト

によって、致命打は防ぐことが出来た。…………だが、


(待て待て待て! 純粋打撃防御特化の盾を持って、

DEFドーピング万全の状態なのに、連打5回で

HP1割以下に削られただと!?)


 アグロフラッシュで唯一人、故に徹底してDEFに

ポイントを振っているクラフトを持ってして、技

1つだけで瀕死まで追い込まれたのだ。


「アイスプレス!」

「ウサギ餅はぁ~♪」


 尻餅(しりもち)をつきながら、イシュタルは凄まじい質量の

氷塊を落とした。しかし、ウサギは氷塊出現時には

既に動いており、


「ヒャアアアッ!!」

「血生臭い~~♪」


 ミューに接近しようとしたので、彼女から迎撃(げいげき)

矢を連射されたのだが、全てを余裕でジグザグ回避

されてしまった。そして、その内の一本が回復

ポーションを携えて、クラフトへと飛んでいった。


『ゴウッ!』

『ザッ!』


 直後、アレウスの飛ぶ斬撃がミューの前方を

通りすぎた。しかし、ウサギは飛ぶ斬撃スレスレ

の位置で回避しており、アレウスの方へ間合いを

詰めていった。


(さくら)(もち)色ぉ!♪!」

「どりゃああっっ!!」

『ズガァァアアン!!!』


 そして、両者の得物が真正面からぶつかり合った。


「科学の業火じゃああああ!!」


 クラフトも、うるさい筋肉2名に触発されたらしく、

叫びながら火炎放射機を駆動させた。


「焼き餅のぉ!」


 フルスイング直後にも関わらず、ウサギは間一髪

で避けた。その先に居るはアレウス!


「スーパーサイクロンアクスッッ!!!」


 しかし、リアル親友のコンビネーションだった

ようで、一段強化した竜巻攻撃に炎を添加した一撃

に、繋がった。


「オーダー入りましたぁ!!」


 が、素早いウサギは諦めの判断も早く、一旦

アレウス攻略を放棄し、ミューの方へと駆け出した。


「アイスラッシュ!」

「オーダーキャンセルDEATH(デス)!」


 と、思いきや、イシュタルの妨害が始まるや否や、

彼女の方へとターンした。その時、


閃爆射(せんばくしゃ)!」

「メガーーーー!!」


 ミューが閃光を炸裂させる矢を放ち、ウサギの視力

を奪うことに成功した。周囲の氷による乱反射も光度(こうど)

増大に一躍買っただろう。


「科学の雷轟(らいごう)だぜぇ!!」

筋肉鎌(きんにくカマ)(イタチ)ィイ!!」


 グラサンで閃光を無効化したクラフト、視力無し

でもウサギの位置を把握できるアレウスの同時攻撃が、

命中した。


 グラサンを持たない女子2人は、眩しい間は目を

瞑るしかなく、アクションを起こせなかった。


「ロドォオォォオオーーーーン!!」


 しかし、ウサギは半分のHPを削られながらも、謎の

寄生をあげながら地面を杵で打ち付け、全方位に()(もん)

を起こした。


「ミュー、ジャンプ!(何かおかしくね!?)」

「ヒャイッ!?」


 普通のユーザーであれば、波打つ速度の遅さを

技固有のモーションだと、気にもしなかったで

あろうが、アレウスはこの波に"違和感"を抱いた。


「イシュタル、ジャンプ!」

「ええっ!」


 しかし、他3人は違和感を感じていなかった。


「ンヘエッッ!?」


 その違和感の正体は、ミューの足が地面に深く

めり込んだ事で発覚した。


「足が沈む!」

「まるでお餅のようだわっ!」


 波打った後の地面が餅になっていたのだ。やや

重量級のクラフトは、足が深くめり込む為に難儀

している。重量級といえば…………


「んなもんラダートレーニング並みに足を動かす

だけじゃあ!!」


 アレウスは更に重いのだが、並外れた脚力と

敏捷性により、大して堪えていなかった。


「第2ラウンド突入だぜぇ!!」


 そして、ウサギの方へと接近し始めた。


「お餅ぃ!」

「おわっ!?」


 しかし、ウサギが地面から引き抜いた何かから、

バズーカ砲並みの速度で餅が飛んできたので、

間一髪避けた。


「帰りはまだまだ早いでしょう? 皆様大変長らく、

お待たせしましたぁ。熱々のお餅が焼けましたのでぇ、

どうぞお召し上がり下さいやがれぇ!!」


 そう言って、右手に杵、左手に(うす)を構えた。


「!!」

「嘘っ!?」


 そして、アレウス陣営にはもう1つバッドニュース

が舞い込んだ。


(地面の餅がへばり付いて、動けねぇ!!)


 足が地面に付着し、動けなくなったのだ。


「お餅は席について、ゆっくりと召し上がりましょうぜぇ」

「上等だゴルゥア!!」

『ベリ!! バリバリバリッ!!』


 最も、アレウスの腸腰筋や大腿四頭筋には関係の

無い話だったようだが。

「やー、中々歯応えのある中ボスだなー」


「見た目は見かけ倒し臭満載なのにねー」


「見た目相応の恐ろしさですわ…………」


「いや…………こんなウサギはコイツだけで

勘弁してほしいよ」


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

総合ポイント2700pt感謝です!

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