探せ、月面テクノロジー!!
長い間、お待たせしました。
219話
「絶対破壊不能のバリアとか、詰んでるだろ!」
自身の一点集中超物理攻撃も、イシュタルの
超魔法攻撃に加速パワーを加えた天災も、目の前の
バリアに傷一つ負わせる事は叶わなかった。
『フン! 最先端技術とは、理不尽な程素晴らしいと
いうことだ! だが、流石に貴様等が可哀想なので、
6つ揃えてバリアを解除出来るアイテムを、6幹部
共に持たせたぞ』
「これがご都合主義って奴?」
「別名、クソゲー回避術って奴だな」
ミュー、クラフトが、鋭い突っ込みを入れた。
『言わせておけば、好き勝手言いおってぇ!!』
本イベントのボスなだけあり、AIの感情がとても
高次元に作られている。
「まぁ! とても感情豊かなことで」
「つーか、随分と親切な閉じ籠り犯だな~~」
イシュタルは、AIの作り込みに感心し、アレウスは
犯罪者としては親切すぎると評した。
『フン、それ程、このシステムに自信があると
いうことだ。メタ的でアレだが、このシステムを
突破できた人数は、イベント総参加者を100人
としたら、1~2人と言ったところだ』
「つまり、1~2%って所か?」
『ああ。そして、これまでイベント終了までに、
かぐや姫の顔を拝んだ者は、1人として居ない』
「まぁ…………折角気合いを入れてデザインされた
お姫様が、1年以上誰にも会えないなんて…………
可哀想」
「ん~、ひょっとしてさー、当時はかぐや姫の
デザイン的なクオリティ、低かったんじゃない?」
「それで見られたくなくて、滅茶苦茶な難易度に
したんだな! そこんとこどうなんだ? 親切な
立て籠り犯さんよぉ」
『フン! 我が名前は、我が眼前にたどり着けた時に
教えてくれるッッ!! 当然、かぐや姫の裏話も企業
秘密だわッッッ!!!…………まぁ、貴様等が素晴らしき
ペースで、我等を倒しきることが出来た時は、我が
創造主に教える許可を尋ねなくもないな。矮小な
希望を胸に、精々無駄に足掻いてみるが良い!』
「これでやることは決まったわね」
「6幹部と呼ばれる中ボスを倒し、バリアを解き、
親切誘拐犯からかぐや姫を救い出す!」
「色々教えてくれてありがとなー!」
アレウスはそう言って、3人をポジショニング
した。
「また近々そちらに赴きますわ。親切な立て籠り
犯様♪」
イシュタルの置き台詞を皮切りに、アレウスは
3名を背負ったまま走り幅跳びを行い、竹藪の
頂点を駆けることで、大胆なショートカットを
行い始めた。
『…………あのような人間…………初めて見たぞ』
その姿に、立て籠り犯扱いされたボスは、呆気に
取られていた。
~5分後~
「もう竹藪地帯を抜けるのか」
クレーターの1割を覆い尽くす竹藪地帯だったが、
アレウスは約5分で脱しようとしている。
「ちょっと軌道修正しようか。跳ぶぜ!」
ここで、クレーターの1つに対して最短ルートを
確認すべく、跳躍で大きく宙を舞い始めた。
「フワフワして、天に昇るような気分ね」
「右斜め前と、ほぼ前方にあるクレーターが
近そうだわ」
「愚直に突撃! 前方のクレーターから攻略
しようぜ!」
「ま、いずれ6幹部は全員の顔を拝むんだ。
時には最短経路の攻略も悪くないよな!」
4人とも、ゲームに没頭するタイプなので、
普段は兎に角やりこんでしまう。その為、今回
のような時間に追われるイベントに、新鮮さを
感じているようだ。
「進路決定! イシュタル、真上に氷柱を頼むぜ」
「了解!」
イシュタルが出した氷柱を蹴ることで、斜め下
へ方向転換した。そして地面近辺で、ロングコート
(と、本人的に広背筋)を広げることで滑空し、足が
着いてからは、自慢のダッシュで高速移動を開始した。
~8分後~
「ほぼ垂直だな…………イシュタル、悪いが3回ほど
氷柱を頼む!」
「ええ!」
問答の4秒後、アレウス達の身体は宙を
舞い始めた。
「今だ!」
「はいっ!」
1度目の氷柱を蹴ることで、垂直ベクトルを
斜め前方ベクトルに変える。
「次ぃ!」
「はいっ!」
2度目の氷柱は、斜め前方から水平方向へ変える。
「次でラスt…」
「いや、十分だ。ありがとな!」
イシュタルが3度目を放とうとしたのだが、
アレウスは何かを閃き、制止させた。
「ここは、空気抵抗を利用するぜ!」
そう言って、ロングコートをはためかせ始めた。
「キャアッ!?」
「うおおっ!?」
次の瞬間、アレウス達は下方向に急加速した。
「マントを斜め上の角度にはためかせれば上昇する。
だったら、斜め下にはためかせれば、下降するよな!」
そして、クレーターの外側にそびえ立つ山の中腹に
足を着けると、再び最高速度で駆け出した。
「少しでも長く、最高速度で駆けることで、最短時間
で目的地に到達だぁ!!」
最早、殆どのモンスターが視認不可能な速度で駆ける
アレウス達。しかし、モンスター達の洗礼を、全く受けず
には済まなかった。
~10分後~
『バシィ!!』
「ブペアッッ!?」
突如、ミューの横面に何かが直撃し、人に見せられない
表情をしながら困惑した。
「…………あ…………えーと…………」
隣のクラフトは、かける言葉が見つからず、その上
ぶつかったものの正体も分からず、思考停止に陥った。
「水だ」
レーシングカーの如く爆走するアレウスは、
一言だけ呟いた。
「お水?」
「そうだ。俺達と同じ冒険者パーティーと対峙
していた蟹モンスターが放った水鉄砲の欠片が、
こっちに飛んできた」
聞き返したイシュタルに、アレウスは冷静沈着な
様子で答えた。
「ビビブゥブバババッッッ!!」
恐らく、"水が"から言い始めようとしたのだろうが、
ミューの声は空気抵抗に完敗し、上手く話せなかった。
「水鉄砲そのものに集中し過ぎて、こぼれカスまで
気を付けれなかった。この相対速度なら、現実だと
死ぬ威力はあるな。注意換気出来なくて悪かった」
「い"、い"い"の"…………でも回復ポーション1本使う"ね…………」
ミューは満身創痍になりながらも、自分達を担いで
走りながら、周囲の警戒まで行っているアレウスに、
これ以上の負担を与えられないと、今回の件を完全に
無かったことにした。
「それに、水は透明だから見え辛いし、音の聞こえ方も
この速度では変わってくるわ」
「まして、触覚や嗅覚は全く宛にならないだろうな…………」
「月面重力下だから、地球生物が出して良い速度を
倍近く上回っているんだよなぁ~!」
最後のアレウスの発言に、
(((…………倍と言わずとも、地球上で既に上回っている
でしょう)))
3名揃って心の中で突っ込みを入れた。
~20分後~
「!、クラフト、ガード!」
「っお!」
『ギッシャーー!!』
竹藪の上をショートカットしていたアレウス達。
アレウスに肩車をされたクラフトが、咄嗟に盾を
構えた瞬間、両目が血走り、両後ろ足が筋骨粒々な
ウサギが飛び出してきて、その勢いのままアレウス
の速度が乗った盾に激突し、大きく吹き飛んで遠方
の竹の上に落下した。
「し、心臓止まるかと思った…………」
相対的に高速な水に殴られたばかりのミューは、
2人と比べて気が気じゃない様子だ。
「ありゃあ、人喰いラヴィッツだな。C級だが、
速攻型として優秀なステータスだから、油断
してると俺も速攻で死ぬぜ」
話ながら少しずつ減速し、消滅してアイテムを
残そうとしている人喰いラヴィッツの目の前で
停止した。
「…………牙が完全に肉食獣だ」
「ドロップアイテムも牙なのね」
「折角なら、モフモフな毛皮が良かったなぁ~~」
3人が、それぞれ感想を言い合った。
「俺としては、後ろ足の筋肉由来で、生肉をドロップ
しても言いと思うけどなぁ」
アレウスは、後ろ足が発達したカエル型モンスター
やバッタ型モンスターを想像しながら、見解を述べた。
「「「いやぁ…………それは、どうなのかなぁ…………」」」
当然、三者三様、難色を示した。
~5分後~
「良いところにセーブポイントあるじゃん」
竹藪中央付近のエリアにて、ショートカットを
止めてマップに降り立ったアレウス達は、セーブ
ポイントを発見した。
「セーブポイント特有の光は、これまでも幾つか
見てきたけど」
「場所が場所だから、ボスエリアだろうな」
ミュー、クラフトの緊張感が高まった。
「アレウス君、準備はよろしくて?」
「ああ、早速拝んでやろうぜ。6幹部の1角によぉ!」
セーブを終えた4人は、大きな足取りで、ボスが
座す空間へと進んでいった。
『ズン!!』
そしてボスの姿から、天気の良い日に見た、満月で
餅を着くウサギが、4人の脳裏を過った。
「ありゃあ、間違いねぇ。晴れた日に何度も会った
ことがあるぜぇ…………」
「俺もだ。あの頃は、外遊びも多かったなぁ」
「確かに、今ではスポーツもインドアなものばかり
やっているわね」
「それにしても、あの頃って、いつの頃だったかしら?」
「「「「……………………思い出せない…………!!」」」」




