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"Bang"boo -竹藪爆ぜた-

投稿がとてつもなく遅くなって申し訳ありません

でした! リアルでの疲労に、データ消失が重なり、

モチベーションがドン底に落ちていたのが原因です。

今日からは少しずつペースを取り戻します。

216話


 遠方に森が見える大草原、反対に点在する都市の

近くには、世界トップビルダーに匹敵する筋肉量の

男が、ダブルバイセップスのポーズを取りながら、

仁王立ちをしていた。


「点呼!! バック・シールド、準備は良いか!」

「おう!」


 広い後輩筋、その真上を覆う僧帽筋に(また)がる男が

返事をした。


「ボウ・アーチャー、準備は良いか!」

「ヘイ!」


 左側で、盛り上がる三角筋群と前腕筋群、その間で

一際盛り上がる上腕筋群に跨がる女が返事をした。


「マジック・キャノン、準備は良いか!」

「はい!」


 左側と同じく、右側で盛り上がる三角筋群と前腕筋群、

その間で一際盛り上がる上腕筋群に跨がる女が返事を

した。


「点呼終わり! これより、チーム・アレシュラフュー

の進撃作戦を開始する! マッスル・モビリティー、

走行開始ィ!! うおおおおおおおーーーーーー!!!」

「「「うおおおおおおーーーーーー!!!」」」


 合計して、自重と等しい重量の3名を担いだ男は、

まるで猫のごとき加速度で、最終的にシマウマ並の

速度まで達した。


「…………アレウス達、スゲェはしゃいでるな」

「夏休みだからね。勉強から解放されて、

フラストレーションが爆発したんだよ」


 金髪グリムリーパー・レイルと、薄青髪スナイパー・

ジェルマンが微笑ましげに豆粒となった4人を見守って

いる。


「そりゃそうよ。4人でオフ会したんだから、

はしゃぐのも無理ないわよ♪」


 紫髪ダークロード・マリリンは、女子2人から今日の

出来事を聞いていたらしく、納得した様子を見せている。


『『『グギャアアアッッ!!』』』

「上方から3体の人喰いコンドルを確認。

ボウ・アーチャー!」

「発射!」


 ミューは、アレウスの腕の上から3本の矢を一気に

放ち、3体全てに命中させた。


「迎撃完了!」

「ご苦労! バック・シールド!」

「回収開始!」

『ゴオオオオオオッッッ!!』


 クラフトは、アレウスの首の上で掃除機型の

アイテムを取りだし、落ちてきた人喰いコンドルの

素材を回収した。


「回収完了!」

「ご苦労! これより森に侵入する! 5・4・3…」

『グオオオオオオッッッ!!』


 森に入ろうと、カウントを取っていると、突撃竜(スプリゴン)

此方へ突進してきた。


「マジック・キャノン!」

「アイスランス!」

『ザキュッ!!』


 指示を受けたイシュタルは、直径2mはあろう太さの

氷槍を精製し、突撃竜(スプリゴン)の頭に直撃させた。当然即死だ。


「バック・シールド!」

「回収開始!…………回収完了!」

「ご苦労! 全体、これより揺れに注意!」


 森林地帯に入った事で、木々を避けて進む必要に

迫られるため、アレウスは搭乗者に急な揺れの注意を

出した。


『ウキャキャッッ!!』

『フゴォオォ!!』

『ウオオオッッ!!?』


 人喰いマンキー、猪獅子、スーパーグリズリーと

すれ違ったが、三者共、アレウス達を追従できて

いない。


「先ずは七夕かぐや姫イベントを攻略だな!」

「竹を取りまくるぜっ!」

「かぐや姫に会うの楽しみ~!」

「ねー!」


 現在SAFでは、七夕イベントと夏祭りイベントが、

同時開催されている。これらのイベントは、海賊

イベントや、青空イベントとは違い、ギルドごと別の

マップに飛ばされる形ではなく、期間内に発生する

アイテムを集めることで、特別なステージへの門が

開かれる形式を取っている。


「始めようぜ、俺達の竹取り物語!」

「「「おーーーー!」」」


 そして、アレウス達が取りかかった七夕イベントでは、

アイテム : 竹筒を100個集めることで、特別ステージ

である月へ誘う回廊が開かれるようになるのだ。


「かぐや姫、どこまで作り込まれているのかなぁ?」


 クラフトは、七夕イベントで救出対象とされている

かぐや姫が、どれ程美形、あるいは可愛く作り込まれて

いるかを楽しみにしているようだ。


「あの雲母部長が直々にデザインされたと聞いたわ。きっと、とても可愛らしくなっていると思うわ」


 イシュタルは、北条家の情報網から、イラスト部門の

部長を知っているようで、かなり期待しているらしい。


「あっ、あそこに竹林があるわ! 全部かっさらうわよ!」

「おう!」


 ミューが竹筒を大量に獲得できる領域を見つけ、

アレウスは更に脚を加速させた。


「発言が完全に密猟者じゃねーか」

「フフフ、大々的に行っているから、乱獲者が正しいと

思うわ♪」


 呆れるクラフトに対し、イシュタルは自身の解釈を

加えつつ、楽しんでいる。


「全体、降車!」

『『『スタッ!』』』


 アレウスの号令で、3人とも地面に降り立った。


「伐採開始ぃ! オラァ!!」


 上級job且つ、両手斧専門のバーサーカーとなった

アレウスは、合図を出したと同時に重量感溢れる両手斧

を、軽々しく猛スピードで振るい、毎秒10本のペース

で竹を伐採していった。


「アイシクル・スラッシュ!」


 上級job・フローロードとなったイシュタルも、

巨大な氷の刃を放つ魔法を撃ち、1度に12、3本の

竹を伐採した。


「バック・シールド!」

「あいよ! 回収開始ぃ!」


 もうちょっとで最上級jobになれそうなクラフトは、

アレウスの合図と同時に100本の竹筒を回収した。


「報告! 向こうから竹藪鮫(たけやぶさめ)の群れを確認!」


 ミューが指差した方向から、理屈もクソも無く、

身体が竹で覆われたコバンザメの群れが飛来してきた。


「ボウ・アーチャー! 折角だから流鏑馬(やぶさめ)っぽく迎撃だ!」

「はっ!」


 ミューはアレウスの指示を受け、アレウスの背に

飛び乗ると、アレウスは竹藪鮫の側面に回り込む

ように移動した。


 特攻タイプのモンスターといえど、所詮D級

モンスターなので、アレウスのAGIには遠く及ばない。


「…………名前もそうだが、コバンザメが水棲巨大生物に

片利共生していないことや、魚類なのに普通に飛行

していることとか…………こんな突っ込み所しかない

モンスター、誰が考えついたんだよ…………??」


 クラフトは、万が一に備えてイシュタルを守る体制を

取りつつ、竹藪鮫を思い付いた人物の思考に戸惑いを

見せていた。


(ダイアモンド・run・熊を始めとする変なモンスター

は、大抵(たいてい)社長さんが思い付いているという説が濃厚

でしたわね)


 一方、魔法狙撃の体制を整えたイシュタルは、

その情報力からある程度、納得できているようだ。


「今だっ!」

「連射ぁ!!」


 が、ミューは弓の基本技で、堅実に仕事をこなした

ので、クラフトの回収が済み次第、次の狩り場へと

向かうことになった。


「おっ、爆竹ゴミムシの群れだ! マジックキャノン!」


「アクア・プレス!」


 100匹以上居るであろう爆竹(ばくちく)ゴミムシの群れを、

破壊力抜群の放屁を放つ間もなく、巨大な水の塊で

押し潰してしまった。


「これぞ速攻だね!」


「回収完了!」


「では、あそこの竹林を伐採しに行こう!」


 現在、竹筒は約260本集まった。4人が月へ行く為

には、残り約140本必要だ。


「何かドライブしている気分ね」


「アレウス君が速いから、そう感じるのだと思うわ」


 "人間"の走力では、決して味わえない対象への

接近感覚に、女子2人は気分が盛り上がってきていた。


「車か~、今度現実で並走してもらったら、面白いかも

な~」


 隆二が、数台の車を置き去りにして走る姿を

思い浮かべ、クラフトも楽しい気分になった。


「いいな、それ。現実でピカリンさんに会えたら、

動画投稿出来そうだけどなー」


「フフフ、撮影なら私にお任せをっ♪」

「絶対バズると思う!」

「いっそ、俺達もルーチューブアカウント作るか?」


「…………等と言ってたら、到着! 俺一人で十分だな」


 アレウスは、勢い任せに旋回を開始し、竹筒40本

程を確保した。


「目が回るぅ~~」

「急なグルンは酔ってしまうわ…………」


「そういうことするなら…………回るぜの一言を言うべき

だぞ…………」


「ははっ、悪ぃな! 一先ず休もu……………ちょっと

大物をぶっ飛ばしてくるぜ」


 一旦全員を下ろし、休息を言い渡そうとしたが、

巨大なモンスターの足音を聞き取り、タイマン勝負に

向かっていった。


「…………よく聞こえるよね~」


「アレウス君は、隊長のクエスト補助やソロでの放浪(ほうろう)

よくしているけど、それが五感の強化に繋がっていると

言っているわ」


「常に死と隣り合わせでモンスターと殴り合っているから

こそ、覚醒し続けられるんだよな。…………確かにデカい

振動を感じるぜ」


 アレウスとモンスターの戦闘が始まり、彼等の存在が

クラフト達にも感じられるようになった。


「オラオラオラオラオラァ!!」

『グオオオオオオッッッ!!』


 アレウスの両手斧5連撃は、全身が硬い竹の鱗で

覆われた10m程の竹竜…………ドラグル・バンブに

真正面から有効打を入れていた。


 関節を外す(まで)も、急所を穿(うが)つ迄もなく、A級ドラゴンの

HPを半分以上削るのは、彼のSTRが全ユーザーで頂点に

位置していることの、何よりの象徴である。


『グシャオオオオオッッッ!!!』


 両腕、首、尾を激しくしならせ、遷音速(せんおんそく)に達する連撃を

繰り出してきた。


「このしなり、正しく日本が誇る竹だな」


 しかし、手練れ視点で十分な予備動作を確認できる

この攻撃は、アレウスにとって、容易く回避できるもの

であった。


 最小限の体捌き、運歩による華麗な回避が、その事実

を物語っている。


「オラッ!!」

『シャアアアッッッッ!?』


 リアルフィジクスモード故、最強防御力の装備でも

ほぼ即死してしまう尾の1薙ぎだったが、アレウスは

最大パワーの一閃により、逆に竹竜の尾を切断して

しまった。


『グシャァァアアアアアッッッッッ!!!!!』


 (まさ)しく、爆竹ゴミムシのオナラが可愛く見える爆撃

ブレスが、前方20mを(しょう)()に変えた。


『シャアッ、シャアッ。…………グシャ?』


 曲者を葬りさり、清々した様子の竹竜だったが、

消えかけの亡骸が無いことに違和感を感じた。


「あばよっ!!」

『パッッカァァァアアアン!!!!』

『!?』


 頭頂部に命中したとどめの一撃により、竹竜は見事、

幹竹割りで真っ二つになったのだった。


 そう、アレウスは、爆撃ブレスが放たれる寸前に、

竹竜の股をくぐり抜け、切れた尾の断面スレスレを

全力で跳躍したのだった。


 そしてそのまま、最高到達点に達したと同時に、

前方回転を開始し、丁度間合いに入った頭頂部に

一撃を加えたのだ。


「おー、中身スッカスカだなー! 3人ともー、もう

安全だから来てくれー!」


 クラフトの負担軽減を図り、回収しながら3人に

号令をかけた。

「やっぱSAFは全力で暴れても、筋肉痛にならない

から、最高だぜ!」


「何せ、俺達を担いで永遠に全力疾走をしても、

息1つ切れないもんな」


「けどさぁ…………竹系モンスター? 変なの多すぎ

ない!?」


「言葉遊びのモンスターが多かった風に見えたわ♪」

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