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魔王軍幹部たる威厳

めっちゃお待たせして申し訳ありませんっっ!!

ウィントにそういう動きをさせていますが、筆者

は空中で翻る猫の姿が大好きです。

199話


(いやいや…………俺、極超(きょくちょう)音速(おんそく)でぶつかったよな。

…………この速度なら、大体どんな物質でも貫通(かんつう)

するだろ…………!?)


 マッハ10を超越した超速度。いくらウィントの

体重が軽かろうと、こんな速度で衝突すれば、被弾

した対象は貫通して死に至る。…………この場の誰もが

そう思った。


 ウィゾフニルを除いて。


「素晴らしい速攻だったが、物理攻撃ごときで

我は倒せないよ」


「はっ、物理攻撃無効かよ。まるで地球外生命だな!」


 ウィントは軽口を叩きつつ、猫パンチの

高速ラッシュを繰り出し始めた。


「おや? 意外と学習能力に()ける猫なのか、

はたまた連撃(れんげき)なら通じると一抹(いちまつ)の希望を(いだ)いた

のか」

「後者に決まってんだろぉ!! 次はこうd…」

『バジュッ(まった)!!!』


 ウィントは、無意識の(あせ)りとテンションの

暴走で、攻めに集中しすぎていた。しかし、

猫パンチラッシュの次の攻撃を加えようと

動き出した瞬間、フラッシュが鉄砲水(てっぽうみず)

放ちつつ、ウィントに制止を呼び掛けた。


「うおあっ!!?」

「ほほぅ、荒削(あらけず)りながら見事な(かい)()だな」


 (せつ)()、ウィゾフニルが(せん)音速で翼を()ぎ、

ウィントは辛うじてそれを()けたのだった。

フラッシュの鉄砲水が当たることをガン無視

して攻めてきた辺り、本当に物理攻撃が

効かないようだ。


「サンキュ!」


 フラッシュが呼びかけなければ、ウィントは

確実に死に戻りしていた。直ぐ様それを実感した

からこそ、一言だけ感謝を述べ、再び戦いに

集中を向けた。


「フェザー・パージ!!」

((しまった!!))


 ウィゾフニルが予備動作に入った瞬間、

ウィントとウッディは絶望した。今から

全速力で移動したところで、前方広範囲の

光線攻撃から逃げられないことが確定して

いるからだ。


『ヒュゥゥウ(僕の後ろに)!!』

「「!!」」


 フラッシュだけは何やら対抗手段があるらしく、

2人に後ろに隠れるように呼び掛けた。2人も

友を信じ、光線が放たれる前にフラッシュの

背後へ到達した。


『ヒュオオッ(ウェイブォール)!!!』


 フラッシュは光線が放たれる寸前に、自分達3人が

ギリギリ収まる大きさの水の壁を作り上げた。気持ち

程度に属性攻撃や、軽くて速い打撃を減衰(げんすい)させること

しか出来ない呪文(じゅもん)だが、今回は違った。


「…………おや、思わぬ方法で防がれたな」


「光の屈折(くっせつ)だったっけ? 細かいことぁ、良く

わかんねーや!」

『ゴクゴク(ピンポン)!』


 水の壁内部をうねらせることによって、増大させた

屈折率により、面に当たった全ての光を上下左右へと

拡散したのだった。残った真水はフラッシュが飲む

ことで、ウォータージェット()(こう)の補給に使える

二段構えだ。


(さす)()はフラッシュだな! ウッディ、俺らも

負けてられないぞぉ!」


 度々(たびたび)ナイスプレーを見せるフラッシュを()めつつ、

ウィントは再び突撃していった。


(この位置まで来れば予備動作の段階で光を

()けられる。が、こんなことくらい、奴は

分かってる筈だ!)


 ウィントの読み通り、ウィゾフニルは同じ技を

使う気が更々(さらさら)無かった。


「バーニング・ウィング!」


 シンプルに、それでいて摂氏6000度という

高熱を、翼の()りに乗せて風として送り込み、

突っ込むウィントを(じょう)(はつ)させにかかったのだ。


「エア・バーストォ!!」


 対するウィントは、足首に(まと)う風を全て爆風(ばくふう)にして

解放することで、ウィゾフニルが起こした熱風を

そのまま返してしまった。彼の()(りょう)なら、爆風に

細かい斬撃を加えることも可能だったが、しなかった。


自分(テメェ)の熱で溶けやがれぇ!!」


 自分(じぶん)たちの攻撃が効かない相手に対し、相手の

攻撃をそのまま当てることで、ダメージを与えようと

試みたからだ。


「…………これで物理攻撃が効かないってことが

分かったかな? 無駄(むだ)足掻(あが)きをやめて、魔王軍に

空中都市を明け渡すのだ!」


 やはり、ウィゾフニルは(すず)しげな表情で()(たく)

並べ、今度はこちらに向かってきた。


「うおおおおっ!! 全力で断ってやるぜぇ!!」


 ウィントは走りながら『ゲイルダッシュ』を

4回掛け、ウィゾフニルの(ふところ)(もぐ)り込んだ。


「ブレイクスルー・ライト!」

「スーパーミキサー・クロー!」


 ウィゾフニルは、つつき動作終了時に直線に光線を

放つ(くちばし)攻撃を放った。ウィントはそれを紙一(かみひと)()

かわし、切り返し動作と足首の風圧を駆使(くし)して全身を

旋回(せんかい)させ、ドリルミキサーの(ごと)くウィゾフニルの

首元から全身を切り刻んだ。


「効かんな」

「ウゲェ…………変な手応えだぜ」


 肉質は固めでありつつ、爪が入る程度の強度なのだが、

どういうわけか切り裂けない。しかし、身体のラインに

沿って回転移動を行える程度にはグリップ力を確保できた。


 明らかに物理現象から逸脱(いつだつ)しているのだ。


「必殺デスライト・キルアイズ!!」


 反撃の蹴りを回避し、ウィントは1秒に10回以上

身を(ひるがえ)しながらウィゾフニルの()(けん)(じん)()ると、爪を

立てた猫パンチラッシュを両目に繰り出したのだ。


「先程から(きゅう)(しょ)を狙っているようだが、関係無いねぇ」

「んなこと、さっき気づいたわ」


 そういって、ウィントは迎撃(げいげき)の予備動作を

する間もなく背後に回り込んだ。


「おおっ! そう言うことか」


 先程の()(つぶ)しは、ウッディ達の動きを隠す役目を

持っており、おかげでウッディは最大パワーの飛ぶ

斬撃を炸裂させる事に成功した。


「チッ! 強弱関係無く打撃も斬撃もダメなのかよっ!!」

「フン、チンパンジーは本当に学習能力が欠けてるらしいな」

「何だと!?」

『バジュジュ(挑発乗らない)!』


 効かずとも(おどろ)かすことに成功したものの、しれっと

(あお)られてウッディの理性が飛びかけた。しかしそれも、

フラッシュが(しゅん)()(いさ)めたので(すき)(さら)さずに済んだ。


「その上、各種属性も効かねぇか…………

(氷とか闇は知らねぇけど)」


 ウィントは、半分炎半分氷の鳥と、悪戯(いたずら)大好きな

闇のカラスを思い浮かべつつ、光明(こうめい)が見えない戦闘を

打開する方法を考え続けた。


「蒸発するがいい!」

「ことわーる!」


 ウィゾフニルが全方位に熱風を飛ばしてきたので、

ウィントは早々に退散した。


「面白かったが、これが下級モンスターの限界だな」

「何ぃ!?」

「んだとゴルゥア!!」

『ヒュッ(乗せられない)!!』


 今回はウィント(彼の場合は怒っても大体冷静)まで

挑発に乗せられそうになったが、やはりフラッシュが

良い感じにストッパーになっている。


「ライトニング・フェザーラッシュ!!」


 失明してもおかしくないレベルで発光する翼を

飛ばしてきた。フラッシュの水の壁も、空気抵抗の

低いクナイのような羽毛は防げない。

 しかし


「物理をバカにしたテメェがぁ!」


 ウィントが足首の風圧を全てウッディに纏わせる

ことで、彼を超高速回転させ


「物理攻撃しまくるのかよ!!」


 ウッディが回転斬り系統の技を3段強化して

繰り出した。半径3m程に竜巻旋風が拡散した

時点で羽毛は防げたのだが、剣が直撃した羽毛の

1部はウィゾフニルに返っていった。


鬱陶(うっとう)しいわ!」


(あん? アイツ今…………明らかに風で羽毛の速度を

減速したな…………)


 失明を防ぐため、目を(つぶ)っていた3人だったが、

ウィントは並外れた聴覚によって、ウィゾフニルの

"不自然な羽ばたき"を見逃さなかった。


「だっせぇ羽ばたきwwww」

「やーいやーい、だっせぇのーーwwww(???)」


 レスバのお返しとばかりにウィントが反撃し、

()()を飲まされ続けたウッディも、理解不足

ながら加勢した。


(全くこの2人は考えてることが…………けど、

打つ手の無い相手に、僕たち3人は生き延び

れたんだ)


 フラッシュが、パッと見精神年齢の幼い2人に

呆れつつ、半ば安心しきったような思考を巡らせた

理由…………それは


「どりゃああああっ!! マイ、ファミリー! を、

キリング!! しようとする奴ぁ、こうしてくれる

わぁ!!」


 アレウスが現場に到着したからだった。膨大な

熱と雷を伴いながら、安定してマッハ6を超える

鞭剣(ビローブレイド)の連撃を叩き込んだ。


「ウゲッ! スッゲェキモい(かん)(しょく)だな!! こりゃ

効いてねーし、まるで斬撃のインパクトが異次(いじ)(げん)

すっ飛ばされた気分だぜ」


 アレウスは十数秒前のウィントのような感想を抱き、

自らの一撃が効いていないことを瞬時に理解した。

 

「ニャゴロロッ! ニャゴニャゴ!!」

「だろうな! つーか少なくとも物理は何一つ

効いてねーのか。他に気になったことは?」


 アレウスは、言語が通じなかろうがウィントの

発言を的確に理解し、報告を聞き込んでいる。


「ピィィッ、貴様、モンスターの言葉が分かるのか」


 ウィゾフニルが、何食わぬ顔でウィントの言葉を

解するアレウスに、興味ありげな質問を投げ掛けた。


「おう! 言いたいことはバッチリ分かるぜ!

ってかアンタ今、"人間"って発音を人語に

切り替えそびれていたろ、魔王軍幹部の

ウィゾフニルさんよぉ」

「ニャゴロロロロッwwwww」

「ギーギギーギ、ギッギーーッッッwwwww」

(確かに今のは魔王軍幹部の威厳0だったね…………)


 本来、最強のモンスターたる威厳を見せる(はず)

場面が、台無しになった。


「貴様ら…………今すぐ皆殺しにしてくれるわぁ!!」

「やべ、何か虎の()()んじまったわ」


 こんなことをされたウィゾフニルの怒りは、

当然爆発を起こし、アレウスは原因を理解する

間もなく戦闘態勢に入った。


「ブラスト・スラッシャー!!」


 無数の飛ぶ斬撃を、熱風(ねっぷう)熱膨(ねつぼう)(ちょう)で倍以上に

加速して放ってきた。


「フシャグルルルァッッ!!」


 ウィントはこれに対抗して、4倍以上多くの

カマイタチを繰り出して、相殺した。


「サンフラワー・レイ!」


 全身を回転させて放つ、極太のレーザー光線に

関しては


「あらよっと!」


 アレウスが技を繰り出すまでもなく、ビロー

ブレイドを円形に展開し、柄部分の光沢を利用

して反射した。


「効かん!!」


 無駄だと分かっているカウンターを行う

アレウス達に(いら)()ち、1(まい)()を超音速で

飛ばした。


「ギギギギッ…………ギィエッ!!」


 これに対し、剣を手放しつつ腹に()えた

ウッディが、羽を受け止めつつ両手両足を

空に固定することで、パチンコ砲をお返し

した。


「だから鬱陶しいわ!」


 明後日の方向へと飛んでいった自身の羽を一瞥(いちべつ)し、

無数の火の粉を遷音速で放った。


『ババババババッッ!!』


 フラッシュが鉄砲水ガトリングにより、味方に

被弾しうる火の粉を選択的に相殺した。


(やっぱそうだよ。俺達の攻撃やカウンターには

見向きもしないくせに、ウッディが返した自分の

羽だけは目で追ってやがった!)


 (おも)にウッディとの攻防から、ウィントの()(ねん)

確信へと変わった。直ぐ様アレウスに伝えたい所

だが…………


煙遁(えんとん)(もも)(はな)!」


 現場へと駆けつけたコタロウが、桃色の煙を

放つ煙幕(えんまく)をウィゾフニルにぶつけたのだ。


「ミスターコタロウ! あんたにしちゃあ、リトル

レイトでしたね!」


 コタロウの最高速度から考えて、遅れていると

アレウスは考えた。


「ミスターアレウス。ユーキャンシー、ホワイ」


 すぐに分かるとされた理由は、やって来た。


「お待たせアレウスさん。コタロウさんと

少し打合せしていたんだ!」


 コタロウはアルベルトと歩調を合わせていた

瞬間があり、それによって遅れが生じていた

模様だ。


「光を(ふう)じたつもりか! こんな花臭い煙は

こうしてくれる!!」


 ウィゾフニルはコタロウの煙を全て焼きつくして

しまった。


「ハッ! 毒かよ。下らん」


 煙の主成分は、菊の一種のキョウチクトウから

作られており、燃やすと毒成分が空気中に放出

されるのだ。


「物理もダメ、毒もダメ、ならば魔法だ!」


 アルベルトはそう言って、周囲の電気を吸収して

一気に放つ魔法を繰り出した。


「だーかーらー、効かねぇんだよ」


 苛立ちに(あき)れが混ざった返事が、ウィゾフニルから

返ってきた。


「「「…………」」」


 リアルフィジーカー3名は、どうしたものかと

いった表情になった。


「ニイッ…………」


 だが、風の山猫ウィントだけは、不敵な笑みを

浮かべていた。

最後までお読み下さりありがとうございます。

下の星やブクマを着けてくださると、執筆の

励みになります。

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