天空メインディッシュパート2
本当のメインディッシュはこれからです…………
194話
「美容院で髪の毛を切る?」
「うん。目に入りそうになってて鬱陶しそうだと思うし」
美優は矢鱈と目を輝かせながら、隆二に提案した。
「髪型か…………いつもはボディビルの大会で、筋肉の
見てくれに支障がなければ良いや程度にしか意識して
なかったなー」
目にかかっている前髪を4:6程度に分けつつ、
今まで本格的な美容院に行ってなかったなーと
思った。
「ん~なのボウズで良いじゃねーか!」
特に野球部で強制されてないのにボウズの武三が
気楽そうに言い放った。
「オデも楽チンだからボウズだド~」
律も同調してお勧めしてきた。彼の場合は常に汗を
かいているので、機能面でも合理的なのだろう。
「デーブは分かるけど、宇海は本当にお洒落に無頓着
よねー。小学校の時から何一つ変わってない!」
「変わらんくても問題なかったって事だろ?」
幼馴染み同士故、当時の頃との見比べも出きるのだ。
「そう言うところが武三らしいド。オデですら、
小学生の時はオカッパヘアーだったド」
「オカッパ?…………って」
「うぇ!?」
「お前…………」
「それはなんと言うか…………」
美優、竜之介、武三、隆二が今の顔がパンパンに
太った律がオカッパヘアになった姿を想像し、言葉を
詰まらせた。
「律、それはナイス判断だぜ。当時の自分を誇るのだ」
そして拓人は、そんな当時の律を褒め称えたのだ。
「そんなにナイス判断だったド?」
「ああ、最高のナイス判断だ!」
「ガリ勉拓人がそう言うなら、間違いないド!」
特に論理的な説明をされなかったが、律は拓人の
言に納得した。
(こんなに何一つ理論を語らねぇ拓人は久々だな~)
(あはは…………)
隆二はそんな拓人を物珍しげに眺め、美優は2人の
やり取りを呆れつつ笑いながら見守った。
それから1時間ほど勉強に集中した後、昼ごはんを
食べ、休憩時間となった。
「そーれ、高い高ーーい!」
「本当に高いよーー!」
何故か庭に出て、隆二に3m程投げ上げられて
キャッチされる遊びを行っていた。
「よっとぉ」
「次は俺だな」
「もっと投げてよー!」
「順番回ったらな~」
拓人、竜之介が投げられ…………
「本当に俺も投げるのか??」
武三が心底懐疑的な表情で聞いてきた。
「問題ねぇ。ゲームだともっと重い奴も投げ飛ばして
きた」
「ゲーム…………??」
SAFをプレイングしていない武三は、何がなんだか
分からない。
「ってことでぇ! 高い高ーーーーい!」
「うおおおおおおーーーーー!?」
90kg超えの武三が、50~70kg台の
美優達のような高さまで投げ上げられた。
「やっぱ余裕だったな」
「いや…………的場を投げるみたいに俺を投げ飛ばせる
ようになるって…………どんな内容のゲームだよ!?」
赤子のように両脇キャッチをされた武三は、心臓を
バクバク鳴らしながら、隆二の力の由来を聞いた。
「ん~、ゴブリンの群れを全速力ラリアットで
ぶっ飛ばしたり、翼の生えたドラゴンを背負い投げ
したり、後…………竜人っていう頭がドラゴンの亜人的
なのが時速100km超えで走ってきたのを背負い投げ
で返り討ちにするようなゲームだな!」
「…………わけわかんねぇゲームだな」
隆二流のプレイング方法を教えた所、武三は
理解不能に陥った。
「まぁ、そんな遊び方してるの隆二位なんだけどな」
「全くよ…………」
隆二と共に(別モードで)遊ぶ2人は困惑する
武三の様子に同情していた。
「後は律だけだな」
「お、お手柔らかni…」
「高い高ーーい!!」
「デュオーーーーーー!?」
筋肉量増大と脂肪燃焼が釣り合って、丁度100kgを
キープしている律も、武三と同等の高さまで投げ飛ば
されたのだった。
「う~ん、眠たくなってきたなぁ…………」
午後2時、プロテインを補給した隆二が眠気を
訴えだした。
「私も~~」
「オデもだド~~」
「じゃあ、仮眠大会でも開くか」
「ったく、人の筋肉を枕にしやがって…………」
右腕 : 拓人
左腕 : 美優
腹筋 : 竜之介
右脚 : 律
左脚 : 武三
大の字になった隆二の各筋肉は、皆の枕にされて
しまった。
「1人くらい律のお腹を枕にしろよ…………グゴーー」
午後3時、隆二の肉体が水分を欲して起きたのを
皮切りに、勉強会が再開された。
そして午後5時に終了した。
「お前、武三とご近所さんなんだし、律のチャリに
一緒に乗せてもらえよー」
「やだよ! 武三、汗臭いもん!」
「悪かったな!」
帰りの送迎係で少し揉めている。
「オデも臭いと思うし、隆二にお願いすると良いド」
「武三の風評被害で悪いね、デーブ。お言葉に
甘えさせてもらうわ」
「隆二君、しっかりと美優ッチを送り届けるんだよ!」
「あいよ」
(竜之介君…………もしかして私達を応援してくれてる?)
結局朝と変わらないメンバー割り振りとなった。
一応ヤクザ絡みの危険遭遇率を考えると、妥当な
割り振りとも言えるのである。
「美優…………まだ暑いからもうちょっと離れてくれ…………」
「やだー。隆二の後背筋を肌で感じて、自分の
後背筋の位置を再確認してるのー」
「ワークアウト熱心なのは感心だが、美優にはたしか
好きな奴が居るんだろ? あんまり俺に引っ付いてたら、
ソイツに勘違いされて離れられるぞ~~」
(…………悲しすぎるんですけど)
「美優?」
「あ…………うん…………そうだよね…………」
絶望でテンションがどん底に沈んだのだった。
「後…………マジで暑くて死ぬ…………今朝みてぇに
胸透けてても知らねぇぞ」
「家に引きこもるから良いもん! ってか、隆二こそ
好きな人とか居ないの?」
「居ねぇな。今までも、多分これからも。ま、
少なくとも生徒だか学生だか言われてる間に
そんな奴は出来ねぇさ」
「…………それって、どういう」
「お、着いたぞ~」
そうこう言っている内に、的場家に到着した。
「明日、可愛いにゃんことワンコに会わせてやる。
楽しみにしてな!」
「う、うん。バイバイ」
車のようなスピード感で去っていく隆二を見ながら
「さっきの…………どういう事なんだろう…………??」
何処か達観すら感じられる意味深な返事に
思いを馳せていた。
~SAF~
「…………自室ですらねぇな」
帰宅後、中臀筋を追い込みきってから、ログインした
アレウスだったが、イベント中、外の景色が変わっている
ことはおろか、始まった場所が自室ですら無いことに、
静かな衝撃を受けていた。
「あっ、アレウス!」
「うわっ! 引っ張るな!」
人が集まっている通りに出ると、ミューがクラフトの
腕を全力で引っ張りながら、こちらに来た。
「珍しくログインが遅かったねー」
「中臀筋と飯と風呂を済ませてたら、遅れたんだよ」
「今日は全ユーザーが協力して、魔王軍幹部と空戦を
行う日だぞ」
「今日だったか!!」
イベント内容を聞き、アレウスのテンションが
最高潮に達した。
「グッドイブニング、ミスターアレウス」
「ワオ! グッドイブニング、ミスターコタロウ!」
昨日の敵と、互いに挨拶を交わした。
「アイワズ、アンエネミー、イェスタデー。バット、
レッツファイト、トゥギャザー、トゥデイ!」
「オフコーース! ウィズ…………ミスターアルベルト!」
隣まで歩いてきたアルベルトに話を振った。
「ザッツグッド! ウィーキャンウィン!」
昨日、波乱を巻き起こした3人が、手を組んだの
だった。勿論、彼らだけでなく、アグロフラッシュ
団長のレオナルドやトップテイマーのフィンチ、
ソリッドエントランス団長のキャベン等、名だたる
ユーザー達も一丸となって、魔王軍と衝突するのだ。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。
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