天空メインディッシュパート1
イベントはピークに達する…………!
185話
『バトォルゥ…………スタァトォォオオオオッッ!!』
青空イベントのメインディッシュその1、
ギルド対抗要塞バトルが始まった。
各ギルドには不動の空中要塞が振り当てられており、
1時間の制限時間内で多くのユーザーが生き残っている
ギルドが勝利となる。ただし、要塞が破壊された場合は、
その時点で生き残り全員が強制死亡させられて敗北となる。
「ぶっぱなせー!」
宙を舞う魔法系job軍団が、1つの要塞に集中砲火を
浴びせ始めた。ユーザー達は、前日の個人サバイバルと
同様、空中をアスファルトのように蹴れる靴を装備し、
空を駆けていくのだ。
「迎え撃つぞ~!」
対する要塞は、オプションとして着いていた迎撃砲で、
軍団の半数程を討伐した。
「唸れ、俺様のキル・ゼウス!!」
ユーザー犇めく中間地点では、厨二病
極振り男のレオンが高速居合技の"紫電一閃"を、
相変わらず改名して叫びながら炸裂させていた。
「納刀時の隙を突けー!」
「ショウの仇を食らいな!」
「舐めやがって!」
「ギャアアアアッ!!」
しかし、死に戻らせた男の仲間達からリンチを受け、
人知れず死に戻りさせられたのだった。
少し離れた場所では…………
「絶対にミュー……いや、あのク○○ッチを
討伐するまで、何としても切り抜けるぞー!」
ミューに振られたと勝手に思い込んでいる
ウィルソンが、復讐に燃えていた。
「団長…………本当にあの娘に入れ込んでいたんだな…………」
「けど、採取ばっかしてる俺等で、あのアグロ
フラッシュに食らいついてるミューを倒せます
かねぇ?」
普段、団長の意向で戦闘を殆どやらない団員達は、
早くも腰が引けている。
「大勢で攻めりゃあどうにでもなる! 上下から
見られたくないとこ覗きながら、ボッコボコni…」
「団長! 大勢来まs…ギャアアアッ!」
「やられ…!!」
「ああん!? クソッ!!」
「ホラ見ろ…………」
棒立ちで下心を見せていたものだから、何処ぞの
ギルドの砲撃部隊によって、蜂の巣にされてしまった。
そして、アレウスがSAFで最も嫌うあの男は…………
「怖い怖い怖い怖い…………」
部下達を要塞から追い出し、1人要塞の奥で震えていた。
『ドドドドドド!!』
「ヒィイィィーーーー!!」
敵の攻撃が聞こえたとたん、まるで現実の
ミューが現実のアレウスに追い回された時の
ように、物凄い悲鳴を上げ始めた。
『ボゴォォォオオン!!』
(あ、死んだ)
そして、アレウス所か自分達と同じくらいの戦闘力の
ギルドによって、カモにされてしまったのだ。
そして、まともなユーザー達はというと
「「おおおっ!!」」
2人の近接物理系ユーザーが、ロングソードで
つばぜり合いを行っている。
(援護は任せな)
片方のユーザーの同僚の狙撃系ユーザーが、
ライフルを構えて相手の射殺を試みた。
「バビブベッボ??」
が、もう片方の同僚の魔女が落とした雷が直撃し、
死に戻りしてしまった。
「オラァ!」
「無念ッ!」
つばぜり合いも、魔女の同僚の方が勝ち、1つの
ギルドが弱まる一方で、もう1つのギルドの指揮が
上がった。
「んん?」
が、しかし、一喜一憂するギルドメンバー達は、
あまりにも巨大な業火に飲み込まれ、跡形もなく
消えていった。
~とある要塞~
「!!、前方から巨大な炎が接近中!」
「全ての大砲をぶっぱなせ!!」
要塞内の防衛メンバー達が、一斉に大砲を放った。
大航海イベントで培った砲術を遺憾なく発揮し、
中世の船とは比べ物にならない超連射で迎え撃った。
「ダメです! 飲み込まれます!」
「なんだってんだよーーー!!」
しかし大砲の弾は、象の足に頭突きを食らわせる
ノミ位に無力であり、業火はユーザーもろとも複数の
要塞を蒸発させたのだった。
「やー、決まった決まった。悪魔の強火、炸裂ぅ!」
「ううう…………決まったのなら嬉しい…………わ…………」
アレウスは、事前にイシュタルから聞いた技名を
反芻しつつ、その成功を喜んだ。当の
イシュタルは、あまりにも短期間かつ高強度の
加速度変化を受けた事で、目を回しながら顔を
青ざめている。
「弱ったレディに群がるフライ達は…………」
アレウスは、周囲の目視だけでなく、遠方から
聞こえる音や気配で敵の位置を把握し、一旦
イシュタルを軽く投げ上げた。そして、腰に
差したビローブレイドを抜くと
「こうしてくれるわっっ!!」
両腕関節を全て脱臼させ、得物も伸びるように
してから最大限にしならせ、素でマッハ6付近に
達する薙ぎ払いを繰り出した。
((((何が…………起きた…………??))))
目を回した女とそれを抱き抱える男。一見格好の
得物を狙っていた筈のユーザー達は、気付けば乾いた
音と高熱、プラズマ、そしてバラバラに散った人体の
嵐にまみれた環境に放り出されており、自らが死した
理由を認知できぬまま、消え失せたのだ。
「防衛こそ、敵の戦力を削ぐ攻撃チャンスなんだよな。
イシュタル、具合が良くなったらまたぶちかまそうぜ」
「ええ、アレウス君が護ってくれると思うと、とっても
安心出来るわ」
自然落下したイシュタルを抱き止め、宙を蹴って
高速移動を再開したのだった。
~機械チックな要塞の前~
「「「守りが他とは違いすぎだろぉ!!!!」」」
一際、機械まみれな要塞に攻め入ったユーザー達
だったが、人体を軽く蒸発させるレーザーを無数に
食らい、消し飛ばされていった。
「くそっ…………流石にSSS急ユーザーは手強いか…………」
「サイボーグ・アルベルト。本当に単騎で優勝を
狙っているらしい」
レーザーが発射された要塞には、ほぼ全身が
機械のようなユーザーが座しており、彼は両腕と
背中から見える更に4本の腕を駆使し、忙しなく
周囲のスイッチを叩いていた。
「昨日、僕は確かに闘技場に出場することが出来た。
しかし、敢えて参加しなかった。何故か、それは、
強い個人を圧倒するより、強いギルドをいくつも
圧倒する方が、より強いという証明を得られる
からさ!」
機械仕掛けのユーザーと、機械仕掛けの要塞が
組んだ時、その実力は未知数となったのだ。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。
下の星を着けてくださったり、ブクマを着けて
くださると、執筆の励みになります!
5/26 大変お待たせしています。次話は、
明日の12:00~22:30の間に投稿予定です。




