雷神の戯れ
モンスターをお留守番させたテイマーは、
想像を絶する強さだった。
１８２話
仮想現実世界に１つ浮かぶ、直径４００m超えの
球体。その中から、重量物同士が絶大な速度で
ぶつかり合うような音が、まるで機関銃の連射の
ような間隔で響き渡っている。
～客席～
「…………ダメだ、残像しか見えねぇ」
「奴もアレウスと同じタイプの戦闘狂。アレウスも
全開で行かなければ、勝てないということだ」
先程、アレウスに撃破されたジャンヌ、レイルが、
客席から最強最速バトルを見始めたのだが、攻撃の
手元はおろか、彼らの姿すらまともに捉えられて
無かった。
「…………ふむ、上下左右前後、どこにでも動けるが、
重力がフィールドと変わらないレベルで働いている分、
下方向の移動時に、普段より大きな加速度を得られて
いるのだな」
アレウス程、速くは動けないが、仮にも同じギルドの
メンバーが、彼の動きを捉えられなかったのは、彼が
普段よりも速く動き回っていたからである。
～闘技場～
『ギィィィイイン！！！！』
「ヒャッハァ！！」
「フォーーゥ！！」
アレウス、コタロウ両名が、その身体能力のみで
居合技を繰り出し、速度を得た大質量同士が衝突したの
だった。
「煙遁術！」
「すげぇ、発音が大分上達してる！」
アレウスは、コタロウの発音が上達していることに
驚きつつ、煙が発生した場所を中心に、鞭のような
剣を連続で振り抜いた。
「そこだっ！」
「イェア！」
コタロウの一閃を、身を反らして回避しつつ、
横蹴りをカウンターで放った。コタロウも左腕で
蹴りの威力を激減させた。筋量と骨密度に恵まれて
初めて成せる技である。
「ヒヒヒヒハハハハ！！」
「ホホホホハハハハ！！」
互いに頭がイカれたような発音をしつつ、コタロウは
無情な程正確な太刀筋で攻め立て、アレウスは惚れ惚れ
する精度の剣捌きで、ダメージを回避している。
「ホアッ！」
コタロウは、徐に足刀蹴りを放った。
「ニャゴロッ！！」
アレウスは、空中であることを活かして、
落下しながらしゃがんで回避しつつ、左腕を
軸に回転蹴りを放った。
「スピニンッ！！」
コタロウは前宙で回避しつつ、踵落としを
繰り出してきた。
「オラァッ！！」
アレウスは更に落下して回避しつつ、ビロー
ブレイドを竜巻のように自身の周囲で旋回させ、
ミキサーのようにコタロウを切り刻まんと展開
し始めた。
「爆斬刀！」
コタロウは爆発する斬撃を繰り出し、爆発の
反作用で凶刃から距離を取った。
「フッ！！」
アレウスは手元に響く衝撃から、相手に対応された
と知るや否や、ビローブレイドを棚引かせながら、
一気に加速した。
「スティル、ファスターザン、ミー…………」
コタロウは、アレウスの挙動を視認して追跡こそ
出来ているが、肉体的な速度がまだ足りず、距離を
引き離されているようだ。
(随分速くなってる…………次回はもっと差が縮みそうだな)
コタロウが、忍者騒動で出会った時と比べ、
かなり速くなっていたので、アレウスは、今後も
楽しくなりそうだと思った。
「とうっ！」
「！？」
アレウスが下へターンを行ったことで、コタロウは
その姿を見失った。
「ウェアーズ！？」
様々な方向に視点を巡らせ、レイル並みには敏感な
殺気感知も駆使して探した。
「ホワーーーット！？」
次の瞬間、全身の至る部位に殺気が締め付けてきた
感触を感じ、咄嗟に回避・防御行動を取った。
「激烈雷神旋風！！」
肩・肘・手首を脱臼させ、筋肉とビローブレイドの
しなりを活かしつつ、それでいて筋力も最大まで発揮
した一撃が、フィールド中を駆け巡った。
周囲には一瞬にして大規模な旋風と飛ぶ斬撃、高熱に
プラズマの滞留が巻き起こり、正しく地獄と呼ぶに
相応しい環境が出来上がった。
(アム、アイ、アライブ…………？？)
SS級モンスターであっても、即死するかもしれない
連撃だったが、コタロウは右足と左腕を失いつつも、
忍者刀のガードで命だけはどうにか保っていた。
「とどめ！」
アレウスもちょっと想定外だった為、MPポーション
を片手で飲みつつ、もう片腕でとどめの一撃を放った。
「アーユーデッド！！」
が、コタロウも渾身のMP消費を行い、高速移動技で
回避を行った。そして、回復ポーションを飲んで、
なけなしの余裕を確保した。
「雷轟斬波！！」
アレウスは、再び両手で放つ大技を繰り出した。
無数の極超音速の飛ぶ斬撃が向かってくるだけでなく、
その斬撃から熱と電気が不規則に放出される。
「ふぉおぉお！？ ベリベリデンジャラッスス！！」
ガードをしても属性でダメージを受けるし、かすれば
最後即死なので、勘だけで致死を回避するしか無かった。
「(MP回復して～)雷疾穿！！」
「！？」
が、攻撃が止んだ瞬間のヘロヘロになったタイミング
を見計らい、ビローブレイドに蓄積した電気エネルギー
を雷が落ちる速度で放ち、呆気なくコタロウを沈めたの
だった。
優勝、アレウス。
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５/１９ お待たせしています。本日の２２時
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