厄の7秒間抗争事件
フルバトルです。お楽しみください!
173話
「オラッ!」
「死ねぇ!」
「ヒャッハァ!」
ヤクザのしたっぱ3人が、それぞれ釘バッド、
サバイバルナイフ、鎖鎌を振り上げて襲いかかって
来た。
「フゥゥゥッッ!!」
隆二は一息大きく吐くことで、"ゾーン"に入った。
簡単に説明すると、周囲が遅く、鮮明に見えるように
なったのだ。
(受け技が通じるのはナイフ野郎のみ。他は避けて
殴ろう)
そこに陰キャ時代に培った超加速思考を組み合わせる
ことで、刹那の攻防中も、より洗練された判断を行える。
「ごはぁ!」
「「え!?」」
隆二が、その巨体からは想像できない程の疾さで
左へとずれ、釘バッドを避けつつ右拳を顎に入れた
ことで、驚いた2人に隙が生じた。
(低姿勢で鎌の鳩尾に前蹴りして、返しの後ろ蹴りを
ナイフの丹田にお見舞いっと、ここで舌打ちして
周囲をサーチ!)
「オ"ッッ!!?」
「ゲッッ!!!」
「チッ!!」
思考通りの動きで相手を倒しつつ、2人に
割いていた視覚を代用するかのように、舌打ちに
よる音の跳ね返りを利用して、周囲の状況を聴覚で
把握した。
「舐めとんかワグェッッ!?」
「ゴッ!?」
「後r…がっ!!」
「チッ!!」
勇んで薙刀を突いてきたヤクザには、逆に反応
できない加速で間合いを詰め、ボディブローを
鳩尾に入れて沈めた。真横の片手斧ヤクザは、
そちらを見ずに鋭い裏拳を頭蓋に食らわせ、
失神させた。
そして、すんでのところで右後ろから日本刀を
横に一閃してきたヤクザが居たが、隆二は素早く
しゃがみこむと同時に両手を着き、右踵で刀を
上へ弾き上げると、その反動で持ち上がった左踵を
逆袈裟懸けに振るい、ヤクザの首へ撃ち込んだの
だった。
(先輩、光輝、武三は余裕あり。少し攻めようか)
最後の舌打ちでヤクザの分布を把握すると、地に
着いた両手の踏ん張りを効かせ、胴体と両足を加速
した。そして両足が着くことで、今度は胴体と両腕が
超加速する。神速の四足走行を開始したのだ。
~0.5秒前・陣形中腹~
「かち割ってやらぁ!」
鉄パイプ装備のヤクザが、修人に大根斬りを
繰り出してきた。
「オラアッ!」
修人は最小限の左移動で一撃を避けると、勢い良く
時計回りに全身を捻転。その回転力から凄まじい威力の
裏拳を、ヤクザの顔面へと食らわせたのだ。
(ヒェ~…………俺に当たったら死ぬだろあんなの…………)
普通の男なら、間違いなく死ぬ威力の裏拳に、
光輝は戦慄した。
「オイオイ、1人だけずり~……」
1人、ヤクザの密集地に駆け出した隆二を見て、
ジェラシーに似た感情を抱きつつ、一際身体の
大きいヤクザの両手斧を、身体を反らして回避した。
「回転王は俺様だぁ!!」
そして先程の隆二のように両手を地面に着き、
隆二とは違って連続の回転蹴りを当てていき、
よろけた大男の顔面に鋭い蹴り込みを入れて
倒した。
「クソガキッ!!」
「ウッセ!」
銛を持ったヤクザが修人の手首を狙って薙ぎ払って
来たが、修人は両腕で軽く飛び上がって回避すると
同時に、逆位飛び後ろ回し蹴りとでも呼べそうな
蹴りを、ヤクザの肩に命中させた。
「光輝ィ!!」
「フッ!!!」
「ガッ??」
そしてよろめいたタイミングで、光輝が全速力
右ストレートを顎に命中させ、何とか気絶させる
事に成功した。
「うおおおo…ぐあっ!!」
「野球部次期主将ォォ!!」
2振りのナイフを構えたヤクザが突撃してきたが、
これも低姿勢からの飛び蹴りで虚を突き、あろう
ことか後方の武三へ吹き飛ばした。
「うおああっっ!!?」
喧嘩も殆んどしたことがなければ、格闘技の
訓練も受けてないケンカキックだったが、丁度
背中の中心を捉え、ヤクザを倒すことに成功した。
「良い蹴りだな!」
(もう嫌だーーー!!)
修人は武三キックの勢いに喜んだが、武三は
これ以上暴力を振るわずに、襲撃が収まって
欲しいとただただ思っていた。
~3秒前・前線~
「オラオラオラオラとっととくたばれーー!!」
「がっ!?」
「ハグッ!?」
「い"っ!?」
「……??」
ヤクザ達の隙間を四足走行で駆け抜けつつ、
注意が足りない4人を片手間の拳で倒した。
「こんなもんじゃねーぜ!」
「「「「!!」」」」
ヤクザ達の周囲を回転するように疾走し、更に
加速しつつ、今度は外側の4人を倒していた。
「食らえ、股割り足払ぃい!!」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!』
ヤクザ達が隆二を完全に見失った頃合いを見て、
隆二は時速110kmで突撃しつつ、両足を180度
開脚することで、ヤクザ達の足首を掬って頭から
転倒させた。これで一気に9人気絶した。
「下を狙え!」
残り10人になったヤクザ達は、隆二に何とか
ダメージを与えようと、手に持った得物を斜め下へ
振るおうと構えた。
「舞空」
しかし、隆二は視覚でも聴覚でも触覚でも
第六感でもその動きを"観ていた"ため、間合いに
入る大分前に、鋭角気味に跳躍した。
「連」
ヤクザ達の間合いに入る頃には、丁度拳が
届きそうな高さまで飛び上がっており、
「殺」
彼らが気づく間もなく、下方向・前後左右立体的な
拳と足を頭にかすらせて、
「拳!!」
気付いたら指揮を執る男以外を全て倒していたのだ。
「むん!」
激突と評すべき勢いで、コンクリ壁にぶつかったが、
その衝撃で逆方向へと切り返すことで、リーダーの
男の方へと加速した。
「死ねええええええっっ!!!」
『パン!!』
リーダーの男は、あまりにも人間離れした
速さ・強さを持つ隆二に、最早正攻法での勝利を
狙うことを諦めており、七罪組ですら極力使用禁止
とされている拳銃を迷わず撃った。
「あばよ」
しかし、隆二は相手の手元の動きと突き刺さる
殺気を元に、発砲のタイミングに合わせて左へ
大きく切り返し、あえて威力を落とした伸びる
手刀を首筋に当てて、意識を切り離した。
「ゼェ…………ゼェ…………」
ヤクザ約30名相手に大立回りを果たした隆二
だったが、ここは現実世界。スタミナは殆んど
無くなってしまった。
「あーあー、結局殆んどお前が倒しちまったなぁ。
流石は人外生物だぜ」
修人が暴れ足りなさそうに、隆二の背中をさすった。
「いやぁ…………まぁ、拓人や美優達を守るのが
最優先なので、ケリ着けるなら、早いに越した
ことはないかと思いまして」
「どうにも優等生が身近に居ると、存分に
喧嘩できなくなるよなぁ~~」
(不良でもここまで喧嘩したがる奴、そうそう居ねぇよ)
(てか、足坂先輩、まだ暴れ足りないの!?)
常識人に近い武三、光輝は、修人のクレイジー
ムーブにドン引きしていた。
「これから警察がきt…逃がすかぁ!!」
普通に話していた隆二だったが、突如顔色を
変えて、爆走し始めた。疲れきっている筈なのに、
ツキノワグマ並の速度を叩き出している。
「気付かれた!?」
逃げるヤクザ5人の内、1人に気付かれた。
「くたばれぇ!!」
踏み込みと同時に放った2つの伸びる拳は、
2人の意識を殴り飛ばした。しかし、最早隆二は
スタミナが無くなっていた。
「まてっ…………!!」
「にげろーー!!」
遂にはヤクザ達の速度を下回ってしまった。
「待てや害悪共!」
「ぐあっ!」
突然横から飛び出た蹴りにより、1人が倒れ付した。
「誰だっ!」
「オラァ!」
カッとなり、咄嗟に殴り返した2人目だが、
鮮やかな連続パンチによって、返り討ちに合った。
「クソッッ!」
自分だけでもと逃げに徹する3人目だが、2人
ヤクザを倒した金髪の男は、3人目より速い足で
追い付き、転ばせてしまった。
「とどめを頼む」
「おまかせあれっ!!」
隆二は最後の力を振り絞り、3人目にのしかかって
制圧したのだった。
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