黒炎の闇竜VS光速飛行魚
頂上を決する者は!?
168話
「紫電の頭突き・瞬!」
「ガード!」
開幕早々、フラッシュの時速600kmの頭突きが
炸裂した。ドレイクは両腕をクロスし、どうにか
急所を守ったのだった。
「もうicc…」
更に攻め立ての指示を出そうとしたアレウス
だったが、フィンチが悪そうな笑みを浮かべた
様子を見て、踏みとどまった。
「黒炎繭! うーん、決まら
ないか~」
悪い予感は的中し、ドレイクの周囲に黒炎の繭が
現れた。突っ込んでいたら、即死しなくても呪いで
追い詰められていただろう。
「マッハウォーター!」
『バジュッッ!!』
近距離攻撃不能と見て、遠距離かつ、威力・
貫通力に優れた超音速水鉄砲を繰り出した。
『グゥゥッッ!!』
「うわ! 貫通したし!?」
フィンチは、半端な水は黒炎繭で蒸発すると踏んでいた為、貫通した上で結構なダメージを受けたことに驚きを見せた。
「連続マッハウォーター!」
『バジュッッ!! ジュッッ!! ジュッッ!!
ジュッッ!…………』
「直撃を避けて!」
効果抜群と分かるや否や、アレウスはフラッシュに
連打を命じたため、フィンチはドレイクに、直撃を
回避するように命じた。
「荒ぶるフラッシュ選手の猛攻は、暗黒竜ドレイク
選手をも防戦一方に追い込んでいる~~!」
『グオオオッ…………』
「もう少しよ! フラッシュの貯水量は後少しで
空になる!」
ドレイクが弱気になっていたが、アレウスの
準決勝を見ていたフィンチは、フラッシュの弱点も
記憶しており、少し先の勝機を見ているようだ。
「ウェイブを飲み込m…」
「させるな! 黒炎放射!」
「避けろ!」
ドレイクのブレスは予備動作も早ければ、
到達速度も速いため、ウェイブを中断して
ジェット噴射で回避するしか無かった。
「シャドウヘイズ!」
「薙ぎ払えーーー!」
影分身の撹乱も、ブレスの薙ぎ払いで完封され、
再びジェット噴射頼りの回避に移行した。
「クッ…………詠唱速度がブレスに速度負けしちまう。
マリリンさん、フラッシュにはフリスビーだけ
じゃなくて、早口言葉を教えてほしかったぜ…………」
~観客席~
「ヘックチョォン!? 誰~? あたしの噂してるのは」
ありきたりにも、観客席で応援していたマリリンが
くしゃみをした。
「おーおー、マリリンはボディサイズに似合った、
可愛いくしゃみをしやがるんだな~~」
レイルは、ここぞと言わんばかりにマリリンの
低身長をネタにした一言をかけ、頭をわしゃわしゃと
撫でた。
「レイルにしては褒め上手じゃない。後でビリビリ
するご褒美あげちゃおっかな~♪」
煽りに対し、マリリンは目元に影を作りつつ、
宣戦布告をした。
「そりゃ嬉しいな。貰いっぱなしは悪ぃし、
首から背中のコリを解してやるぜ」
レイルも目の奥に邪悪さを孕みながら、
宣戦布告を受諾した。
(試合が終わったら鬼ごっこ確定だな)
(あはは…………避けられない運命だね)
(でも、2人とも本当に仲良しで、ちょっと
羨ましいわ)
この様子に、高校生トリオは三者三様の
反応を見せた。
~天空フィールド~
(考えろ…………避けつつも、水分補給する方法を!)
「万事休すかな? ドレイク、黒炎連射!」
とどめとばかりに、速度と手数に優れた技を
放ってきた。
「これだ! かわしながらウェイブを詠唱しろ!」
「えっ!?」
アレウスは土壇場で閃き、回避しつつ呪文詠唱を
指示した。
『バシュシュッ! ヒュオオオオオ…………』
紙一重で掠りすらせずに、着実に詠唱していく。
「今だ! 飲み込め!」
前進による回避と同時に水塊を産み出し、即座に
吸引した。
「くっ、良く見てカウンター決めるよ!」
エアロ戦と比較して、総じて高出力の加速を
見せているため、相手の目も相当に慣れてきた
ようだ。
「2時の方向にウェイブ!」
「!」
突撃するというフィンチの予想に反し、
フラッシュは明後日の方向へと水塊を
放った。
「行くぞ! 紫電の頭突き・爆速!!」
フラッシュが加速したと同時に、先程のウェイブが
右側へと弾けとんだ。それと同時に耳をつんざく音が
鳴り響き、同時に硬い物が凄まじい速度で何かに
ぶつかったような音が聞こえてきた。
「ナイス…………ドレイク」
ドレイクは生命の危機を感じ取ったからか、
咄嗟に右腕でガードしており、何とかHPを2割程
残していた。
「本気出すよ! 黒炎魔装!」
『グオオオオオッ!!』
黒炎繭とは違い、顎、翼、尾、四肢、丹田に
集中的に黒炎を纏ったバフ形態となった。
「火力は圧倒的に上ぇ! 基礎速度も肉薄して
やったわ!」
「そうか! 更に気が抜けねぇぜ!」
7秒、両者ともが残心を取った。
『『ボッッッ!!』』
両者ともが急加速し、それぞれに突撃を試みる。
ドレイクの突撃は、突撃で返したら絶対に競り負ける
ので回避し、隙を作って自身の加速で突撃する。
しかしドレイクの基礎速度もフラッシュと殆んど
同じくらいに上がっているため、体裁きで回避され、
爪や突撃を切り返してくる。
「「「うおおおおおっ!!」」」
観客のほぼ全員は、2匹の動きを全く追えていない。
歓声が意味する様子は、青紫色の黒炎が、フラッシュが
精製する水に反射し、煌めいている様子に美的感覚が
刺激されている状態の事だ。
『シュッッ!!』
『グゥッ!!』
フラッシュの突撃が、ドレイクの首筋をかすった。
しかし、いくら速くても、弱点にピンポイントヒット
しなければ、倒しきることは難しい。
更に…………
(今、頭や鳩尾等の弱点は、黒炎の
アーマーに覆われていやがる。半端な一撃だと、
フラッシュが先に死ぬぜ)
弱点部位が、ことごとく黒炎に覆われており、
一撃で沈めなければ負けてしまうのだ。
「良いぞ! その調子で押しきれーー!!」
ドレイク達の挙動を完璧に追えているアレウス。
挙動を追えるからこそ、優勢とは言い切れない
事実を知っている。この状況を、勝ち気すぎる
フィンチに悟られでもすれば、たちまち士気が
上がり、主人の想いを受け取ったドレイクの
動きのキレが上がりかねない。
「ドレイク、あなたはデキる子よ。この状況だって、
きっと勝ちを掴める!」
そうでなくても、フィンチはドレイクが勝つことを
信じている。そしてドレイクも…………
『グオオオオオオオアアッッッッ!!!!』
図体に見合わないにも程がある神速の爪、脚、尾の
連撃を絶え間なく繰り出し、フィンチの想いに答えて
いる。フラッシュは、最早回避も攻撃も最低限の
キレしか維持できていない。
「俺達は常に神の7秒間を無限に広げてきた!
極限の集中力は圧勝だぜ!(まいったな…………
決定的に状況を返す策が思い浮かばねぇ…………)」
アレウスを持ってして、フラッシュに出来ることは
鼓舞する事のみである。
「じゃあ私達は7秒以内にケリつけるわよ!
ドレイクーーー!!」
『グオオオオオオオッッッッ!!!』
フィンチとドレイクは、まるで心が完全に
シンクロしたかのように昂り、ドレイクの
纏う黒炎が更に大きく、熱くなった。
(黒炎がヤベェ! フラッシュもウィントや
アイツみてぇにバフをかけれりゃ! ムリでも
速くなれれば!)
技は色々と存在するが、今は兎に角、速度が
欲しい。
(じゃあどうする! 速くなる! パワーごり押し!
硬い足場弾く! 抵抗を軽減! 魚! 水! 流線型!
…………流線型ッッ!!)
アレウスは何かを思い付いたらしい。直ぐに
フラッシュへと伝達した。
「ウェイブを操って、ラグビーボールみたいに包め!」
『シュパッ!』
扱う規模が初級故、細やかな操作はお手のもの。
ドレイクの一撃を回避しながら、水を纏うことに
成功した。
「だから!? もう終わりよっっ!!」
「終わりって所だけは同意だ! シャドウヘイズ!!」
フラッシュが影分身を作った瞬間
「「「「え!???」」」」
ギャラリー全員が度肝を抜かれた。約30体の
水ラグビーボールが、超速度で動き回った為に、
まるでいきなり15mの水球が現れたように
見えたからだ。
「全部焼き斬って終わりよ!」
『グオオオオアッ!!』
ドレイクの猛撃により、水球が時に紫色に
変色するが、直ぐに元の様子に戻る。それほど
圧倒的に、フラッシュは速くなっていた。
(水は抵抗にならず、それどころか空気抵抗を減らす。
その上、尾びれを打ち付けるもってこいの流体に
すらなっている。そして…………)
アレウスの目には、ドレイクの一撃をすり抜ける
ように回避するフラッシュの姿が映っていた。
「(静かだ…………)終わりだ。紫電の頭突き・爆速」
そして、フィニッシュにありったけ弾け飛んだの
だった。
『グオオッッッッッ!!!!』
フラッシュがドレイクの頭に直撃する寸前、
ドレイクは大きく口を開いた。
「「「うわああああっっ!!?」」」
辺りは信じられない程の爆風に見回れ、黒い蒸気が
辺りを闇へと包み込んだ。
最後までお読み下さりありがとうございます。
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