討伐! と思いきや?
DEFについて
ノーマルモード : 装備品や、一部の武器で変化する。このステータスを基準に、モンスターの攻撃力と、攻撃が当たった部分でダメージが変化する。
リアルフィジクスモード : 上記の方法で変化させられる他、全身を固めたり、逆に力みを抜くことで上昇させられる。筋肉量の多さや、骨密度の高さ等でも違いが発生する。但し、頭に強い衝撃を受けるなどすると、問答無用で死に戻りするのがリアルフィジクスモードの醍醐味なので、実はあまり重視すべき能力ではないかもしれない
16話
空を舞う飛竜の幼生。幼生と言えども、
大きさは3mはある。空中での戦闘力は
リザードモドキを上回るだろう。
「サンダー・ボルト!!」
そんな飛竜の幼生も、雷に撃たれたとあっては、
一撃で絶命するものなのだ。
「…………スッゲェ、魔法ってやっぱ人智を超えた
技術なんですね」
「ま、まぁねぇ! あたしの魔法にかかれば
ちょちょいのちょいよ!」
胸を張り、自慢げに振る舞った。
(本当は飛竜のSPLが極端に低い点と、電気属性に
弱い点をマリリン様のMAGの高さに物を言わせて
最高威力の雷魔法を撃ったからこその結果だったん
だけどね!)
実際のところはギリギリなし得た結果だったらしい。
「さ、アレ君。あたしは必要なものを拾いきったから、
あなたもさっさと拾うのよ」
「これまた、こんなにもらって良いのですか?」
「護衛能力つき電車の運賃よ」
どうやら雑魚モンスターから守ってくれたお礼も
兼ねているようだ。
「では、遠慮なく頂きます。帰りも送りますので
ご安心を~」
「えへへ、助かるわぁ~」
拾い終え、マリリンを背中に乗せて駆け出そうとした時、
絶望の音が聞こえてきた。
『ギジャァァアアアッッ!!』
「…………大人」
1年数ヶ月SAFを遊んでいるマリリンは、
直ぐに何が近付いているのかを理解した。
『ドォォン!!』
アレウスは普段の数倍力強い踏み込みで、加速した。
5歩地面を蹴った頃には、今まで出したことの無い
最高速度に達していた。
『ジャアアアッ!』
逃走虚しく、回り込まれた。
「ま、追い付かれるわな」
「避けてーーー!!」
マリリンの叫びと同時に、火炎放射が放たれたので、
サイドステップで回避した。
「マリリンさん、さっきの雷もう1発お願いします」
「分かったけど、飛竜の動き止めなきゃ当たらないよ!」
「動きを止める…………」
周囲にあるもの…………焼けた石、木の棒、籠手、
袋の中の低ランク武器。
「全速力で跳躍しても、距離を取られて食われるだけだ。
隙を見て投げまくるか…………」
「波動は?」
「五体満足のHPじゃ通用しません」
「そっか…………」
『ギジャァアアッ!!!』
速かったが、単調な爪攻撃だったので、
避けるだけでなく…………
「砕けやがれっ!!」
今可能な全力の前宙踵落としを決めたのだ。
「おまけっ!」
子飛竜にお見舞いした雷には及ばないものの、
中々の電属性魔法を追撃で放った。
「あっ、今ので2割位削れてるよ!
これなら勝てそう!」
アレウスの打撃も自分の雷撃も効果があったので、
マリリンは喜んだ。
「マリリンさん、ボス級モンスターのAIって、
学習能力がありましたよね?」
「え、ええ……そうよ」
「…………だとしたら、アイツはもう2度と
降りてきませんよ。きっと」
そう、ボスクラスのモンスターのAIは、定型行動を
繰り返すだけではなく、その時戦っている相手から
学習し、相手に合わせた行動を取ってくるのだ。
「やっぱ、頑なに降りてこなくなりましたね」
ひたすら火炎放射を放つ。2人の攻撃……
とりわけアレウスの打撃を警戒しているようだ。
「サンダー! うー、当たらないなぁ」
魔法は良く通じるので、速射性能の高い
初級魔法を放ったが、それでも軽く避けられる。
「やはりタイミングを逃さず一気に決めるしか
ありません。今から派手に暴れますが、どうにか
持ちこたえてください!」
「それくらい大丈夫!(既に吐きそうだけど耐えてやる!)」
マリリンは先刻の前宙踵落としで吐きかけていたが、
覚悟を決めて我慢することにしたようだ。
「まず……はっ!!」
火炎放射を確実に避けつつ、細かい石つぶてを
右腕に握った。
「目眩ましっ!」
無数の石つぶてが豪速球で飛竜に向かう。
「こんなのはどうかしら?」
無数の水鉄砲を発射する、アクアガトリングを
発動させた。
「ナイスアシストです!」
現在のマップは太陽がギラギラと照らしているので、
飛竜からすれば、水から反射した太陽光が眩しくて
仕方ない筈だ。
『グオオッ!!』
が、それも羽ばたき1つで弾き飛ばすことが出来る。
「上々!」
次は2連続で手のひらサイズの石を投げ、翼の根元に命中させた。
『グオアッ!?』
流石にぐらつく。
「サンダー・ボルトォ!!」
この隙を逃さず、大技を当てた。丁度HPゲージが
半分を下回った。
「行くぜぇっ! 舞空連殺拳!!」
自由落下中の飛竜と同じ高さまで飛び上がり、
本来なら多対一用の連打を飛竜1体に集中して
繰り出していく。
『グギジャアアアッ!?!?』
一撃一撃はそこまで食らってないが、手数が多く、
放置すればあっという間にHPが消えそうになり、
焦りが生まれてきた。
「まだまだまだぁっ!!」
当然アレウスは休まずに攻撃し続ける。
「振り切られたっ! けど、後一息ね」
あれだけあったHPも、残り2割以下にまで
減っている。
「そう言うわけで、とどめ刺してきます!」
「え、ちょっとおぉぉおおーーーーー!?!?」
あろうことか、アレウスはマリリンをポーーーンと
天高く押し飛ばし、自らは反作用で地面へ向かって
急加速した。
「先程の倍の威力だぜっ!」
勢いを増して、反動ダメージの発生と共に威力も
増した踵落としだが、飛竜が咄嗟に両腕でガード
したので、残りHPの半分を削るだけにとどまった。
『グギャアアッ!!!』
飛竜はアレウスが着地しようとした隙を突き、
敢えて右腕の鍵爪で攻撃してきた。
「この程度で俺を倒せると……」
アレウスはあろうことか地面を蹴ることで、
飛竜に接近した。そして飛竜の右腕を掴んだ後、
腰を胴体に密着させ…………
「思うなよっ!!」
見事な1本背負い投げで、飛竜にとどめを刺したのだ。
「よし、先輩に習った柔道も役に立ったし、
問題ねぇな! さて、マリリンさんは…………
来た来た。オーライ、オーライ…………よっとぉ!
完璧完璧!」
無事に姫様抱っこで受け止めて、落下ダメージによる
死に戻りも防止した。と言うか、彼女が死んだら
クエスト失敗になって、何もかもが水の泡になって
いたのだ。
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