内通者の暗躍
寝落ちで朝になった…………すまぬ。
164話
「ヤ、ヤクザ…………すっかり忘れちゃってた…………」
教室に着き、席に座った美優は、先程起きた出来事を
隆二から聞いたことで、激しく動揺した。
「そうなんだよ。辛ぇ事実だろうが、あいつらは
未だに美優を狙…」
「ハッ…………ハアッ…………」
説明を続けていた隆二だったが、恐怖からか、
美優の呼吸が荒くなったことに気づき、一旦説明を
中断した。
「大丈夫だ。何か起きる前に、降りかかる災いは俺が
破壊する。だから、あまり心配しすぎるな! 筋肉も
萎んじまうぜ?」
美優の肩に手を置き、隆二なりの励ましの言葉を
送った。
「…………うん、落ち着いた。…………ありがとう」
一見場違いな最後の発言が、かえって不安を
取り除いたらしく、手の甲に頬を寄せながら、
笑みを浮かべて感謝を返してきた。
「あ、ああ…………けど、ここ教室だから、あまり
勘違いされるような行動は慎もうぜ…………」
思わぬ反応に、隆二は珍しく、明確にたじろぎを
見せた。
「いいじゃん、隆二は私のヒーローなんだし」
「ヒーローねぇ…………」
以前に美優を助けた時も、助けられるだけの
実力を持っていたから助けたという意識であるため、
隆二的には、格上相手にも挑みかかるヒーロー像に
結び付かない様子だ。
「おはよう。美優は朝っぱらから、色仕掛けで金でも
せびってるのか?」
拓人が教室に着き、状況説明を求めてきた。
「ちっ、違うしっ! てか、聞いて! 私、また隆二に
ヤクザから助けられちゃったの!」
「あー、校門からちょっと離れた所で、デキスギに
通報されてた米泥棒達か?」
「おうよ、俺のちょっとした計らいで、警察に
行きやすいような工夫を施してやったぜ」
「ハハハ、流石だな隆二」
普段の隆二をよく知る拓人故、この程度の説明で
大体の事を察してしまえるのだ。
「そうだ、拓人にお願いがあるんだった!」
「お願い?」
「ああ。今朝、楽しい夢を見ていて、ガッツポーズを
全力でしたところ、寝室の壁を壊しちまったんだよ」
ここまで聞いたところで
「いや、何がどうなったら、部屋の壁ぶっ壊れるん
だよ!?」
拓人は我慢出来ず、突っ込みを入れてしまった。
「あっ、前に昼寝しながら壁を殴り壊した奴だね!」
一方で、美優は2ヶ月前を思い出し、答えにたどり
着いていた。
「そう、それ。今回は見知らぬ山の動物達じゃなくて、
ウィント達だったから、尚更テンション上げずには
いられなかったんだよなぁ」
「まぁ、ウィント達絡みなら仕方無いか…………」
「しょーがない、しょーがない!」
ここまで聞けば、拓人も納得しきるし、美優は
更に深く共感してしまう。
「てことで拓人君。君にはこの画像から、最安値で
修理する術を導きだして欲しいんだ。頼む!」
今朝、撮影した部屋の穴の写真を見せ、合掌しながら
お願いした。
「良いぜ、これくらいなら…………こんなもんでどうだ?」
「成る程、これは良い。サンキュな!」
「私達、手伝おっか?」
「そろそろ期末だし、部停止も今日からだから、
学校終わったら3人で隆二ん家に直行しようぜ」
「おお! そいつは妙案だ!」
隆二が出した拳に、2人はそれぞれの拳を
重ね合わせた。
~帰り道~
「それもそうだな~。寝間着とVRセット、後は…………」
「勉強道具な。一応勉強会だぜ?」
「それとジャージ! トレーナーさんとジムが
揃ってるから、最高のワークアウトしなきゃ!」
隆二宅で最高に楽しむべく、2人は自宅で身支度を
整え、それから向かうことにしたのだ。
(法二はちゃんと通報したようだな。視覚、聴覚、
嗅覚、触覚、各種第六感に異常な~し!)
今朝、ヤクザに待ち伏せされたので、3ケツ中の
2人に危害が加わらないよう、周囲の状況に気を
配りながら運転したのだった。
~留置場~
「だからぁ! 俺達ゃ、米なんて盗んでいねぇんだよ!」
「変なガキに気絶させられてぇ、気づいたらお前らに
連行されてたんだよ!」
「では、お前達の背中に書かれた文字は何だったんだ!!
米を盗んだから書かれたのだろう!?」
ヤクザ達が取り調べを受けていた。しかし、現行犯
逮捕された時の状況が状況だったため、田んぼ荒し扱い
されている。
「それについてはマジで知らねーよ」
「んーな事より、さっさと解放しねぇとテメェの
命ねーぞ?」
「俺達ゃ七罪組・怠惰部隊だぜ!」
「証拠はこれだ」
リーダーの男は、腕に彫られたタトゥーを見せつけた。
「!!」
その瞬間、看守の1人の表情が変わった。
「…………だからどうしたのですか? 全国区で売名を
重ね、日本一の勢力になった組織・七罪組。しかし、
実際は、一人一人の実力は低く、その癖悪質極まりない
行為を繰り返す外道達。逃す道理はありませんね」
「「「チッッッッ!!」」」
若い警部補は、ヤクザ相手に1歩も引かない正義感で
あったらしく、これにはヤクザ達もばつの悪い表情へと
変わった。
「では質問を変えましょう。あなた方が襲いかかった
少年の姿はd…」
『ピリリリリリッ!』
質問中に、警部補のスマホに着信が鳴った。
「こちら、◯◯警察留置場…………分かりました。直ぐに
向かいます!…………事件です。私は現場へ直行します
ので、7人を見張っていてください」
見張り2人に指示を出すと、警部補は迅速に現場へと
駆けていった。しばらくして…………
「ケッヘッヘ」
「「ヒッヒッヒ」」
徐にヤクザ達が笑い出した。
「…………何がおかしい?」
先程反応しなかった方の看守が、ヤクザ達の様子を
不審に思って聞き返した。すると
「ん? コイツらの何がおかしいのかな?」
反応した方の看守が聞き返した。
「おかしいも何も、俺達に見張られていて、どうして
笑ってられるんだ?」
そう、あまりにも、ヤクザ達の様子が不自然なのだ。
「あー、そうだなぁ…………」
「む?」
もう1人が言い淀みつつ、不審がっている方の
差し押さえ棒を掴んだ時に、彼は同僚の様子も
おかしいことに気づいた。
「オルゥア!!」
「ガアッ!?」
しかし、時既に遅し。棒を掴まれて、同僚へと
注意がそれた隙を突き、ヤクザは彼の顔面に拳を
叩き込んだのだ。
「き、貴様らっ!! そんなことしてゴポオッ!!!」
更に死角から、脇腹へとサッカーボールキックが
めり込んだ。
「そぉんなことが、許されるのですよぉ~~」
ヤクザが心底見下し、馬鹿にした様子で看守を
愚弄しながら言い放った。
「なぁ、兄上?」
他のヤクザは、看守から棒を奪った同僚に向かって
そう言った。
「おいおい、目上への口の聞き方がなってねぇなぁ。
ま、ここは既に密室状態。俺さえ密告しなけりゃ、
お前らの脱走も、不遜もバレねぇ訳だがな!」
「いよっ! 兄上の太っ腹ッッ!!」
「ま、まさか監視カメラと音声をジャックしたのか!?」
「はっ! 今さら気づいても遅えんだよっ!!」
「ガアッ!!」
漸く、全てを知れた看守だったが、ヤクザの
袋叩きからは逃げられない運命となった。
「お前ら、コイツが俺に馴れ馴れしい口を聞いた分、
落とし前をつけてやれ」
「「あいあい」」
「やっ、止めっ……ギャアッ!!」
ヤクザだった同僚の一声で、目に見えて暴行が
加速した。
「ごっ、ゴベンナザッッ…………!!」
「良い様だなぁ~~」
「オラオラァ!!」
謝ったところで、暴行を止める訳がない。
「よーし、その辺にしてずらかるぞ。5分後位に
迫真の演技を見せてやるから楽しみにしてな?」
「さっすが兄上~~!!」
「ヒュー! ヒュー!」
看守の顔面が血みどろになり、全身に骨折を負った
タイミングで、リンチは切り上げられた。そしてヤクザ達
は、他の囚人や勾留者達に唾を吐いたり屁をこきながら、
楽しげに署を後にしたのだった。
~その夜・SAFにて~
「よっし、今日はエアロモンスターズバトルか!」
アレウスとなった隆二は、フラッシュ、クロウズの
飛行バトル可能な2人を引き連れて、会場へと足を
運んでいる。
「アレウスー! 食らえーーー!」
「フンッッッ!!!」
ピンク髪の少女テイマー・フィンチが黒い竜・
ドレイクの背に乗って、アレウスに突撃してきた。
アレウスはドレイクの首を抱え、当たり前のように
止めてしまった。
「来ると思ったぜ。フィンチ」
「もっちろん! というか、ルイン送ったのに返事
無いから、風邪引いたかと思ったじゃん!」
「あー、17時にはログインしてたから、気づか
なかったと思うわ」
「むー、それはしゃーなしかな?」
昨日の陸上大会にて、フィンチの中の少女、飛鳥と
連絡先を交換していたのだ。
「ま、何にしても決勝まで上がってくるんだよ」
「勿論だ。フィンチこそ脱落するなよ!」
決勝でのバトルを誓い、まずは1回戦に向かう
2人だった。
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