鋼鉄の鞭
大変遅くなって申し訳ありません。
アレウスの真髄が垣間見え…………始める。
160話
「今すぐにでも隊長達を追いてぇ…………が、
よく見なくてもわかる程に、邪魔が多いな」
先程、レオナルド達が圧倒的なパフォーマンスを
見せたことで、前方を飛行していたユーザー達が、
次に迫る隆二&拓人ペアを標的にしてきたのだ。
「今こそ俺達の出番だな」
「ああ、頼んだぜ」
魔方陣が描かれた床に立っていたアレウス達は、
忽然と消えてしまった。
~外~
「ん? おいおい、アレウスに暴れ猫のウィント
だかが出てきたぞ」
「後は、大航海イベントで見かけたチンパンジーと
…………黒いカラス? か」
「カラスはそもそも黒いって」
クラフトが操る機体の上に、アレウス、ウィント、
ウッディ、そして新入りのクロウズが現れた。
「さぁてぇ! 野郎共、ハエ叩き大会だーー!!」
「ニャゴロッ!!」
「ギィッシャアッ!!」
「ゴロロロッッッ!!」
アレウスの号令で、3匹はそれぞれの技を
出し始めた。
「撃てーー!!」
真後ろの3機がミサイルを発射してきた。
「フシャゴロォッッ!!」
それに対し、ウィントは全身の筋力と魔力で
強力な旋風を真後ろに発動させることで、ミサイルの
軌道を右へと大きく剃らした。
「うおおおおおっ!?」
そのミサイルの数々は、右側で圧力を放っていた
大型機に全て命中し、呆気なく墜落させてしまった。
「ギイッシャシャシャシャシャシャッッ!!」
「「「「ウギャアアアッ!!」」」」
ウッディは、ゴムのように伸びてしなる腕で
ロングソードを振るい、小型機を中心に墜落
させている。見えない所でも修行を重ねたことで、
肘関節を外せるようになっており、リーチと威力、
攻撃速度は以前の比ではない。
「カッカカカッ…………」
クロウズは、カラスの言語で魔法を詠唱した。
周囲に現れた文字が、組み立てられ、呪文と
なって、旋回を始める。
「カーーーーッ!!」
呪文が拡散・消失したと同時に、
クロウズの両目が怪しく、それでいて目映く
輝いた。
「うおっ!?」
「見えねぇ!!」
「どうなっている!?」
「ヤベェ! 俺死んだ!!」
「は!? ざけんなぁ!!」
「ママーーーーー!!」
突如、後方・近辺で生き残ったユーザー達が、
独りでに墜落し始めたり、連携中のユーザーに
狙撃し始めた。どうやらクロウズは、彼らの視界を
暗転させる"闇属性大魔法・キルズブリリアンツ"を
発動させたのだ。
大多数の視界を暗転させるこの技は、リンチ
執行中のユーザーの大敵なのだ。
「流石は俺の相棒達だぜっ!」
現在、アレウスはテイマー系のjobであるにも
関わらず、腕部全体の関節を外し、専用でない
現代チックなロングソードを巧みに振り回している。
成果としては、近距離の戦闘機を始め、勘と殺気と
動体視力を便りに、マシンガンやミサイルをいなしたり
切り裂いている。
「…………それじゃ」
そう言って、脳内で"分離"と念じた。
「へあっ?」
「視界が広がる…………」
「熱っ!?」
「お前上下別れて…………墜落してる!?」
前方280度、半径20mの戦闘機が、刹那の間に
解体した。遠方の戦闘機は、次の瞬間に断面が熱で
溶け、12m以降の領域には、プラズマの滞留すら
巻き起こった。
「な、何が起きたんだ…………??」
「知らねぇよ…………」
「人間が挑んで良い相手じゃねーのは確かだな…………」
一瞬にして起こった壮大な破壊。全滅した前方を
見ていた後方のユーザー達は、ただただ1人だけの
ユーザーに畏怖するしか無かった。
数秒後。
「あれ? 前方の電磁波(?)が無くなってねーか?」
超後方で見ていたユーザーが、アレウスが
引き起こしたプラズマが消失していることに
気づいた。
「おーおー、摩擦熱に、プラズマを
吸収するのか。んで、元の剣に戻すと、熱伝導と
通電で、刃全体に炎と雷の属性が纏わる訳か」
ビローブレイドと名付けられたこの武器は、
鞭とロングソードに分類されている。先程のように、
リーチの限界で破壊力が極まる鞭状態は勿論の事、
刃を納めた近距離用のロングソード形態でも、
鞭専門jobにも違和感なく扱えるクラフトの
良作である。
「ハッ!!」
アレウスは、全速力の突きを繰り出すと同時に、
上半身の関節を外して腕を伸ばした上、ビロー
ブレイドを鞭状態に変えて、接近してきた2機を
貫いた。
「貫通した!?」
「熱すぎて溶けたんだよ!」
最先端の刃先は2機を軽々と溶解・貫き、更に
奥の機体にもかすった。
「危なバババッ!?」
安堵の一声を発しようとした瞬間、機体全体を
電撃が襲った。
『エンジンシステム、ダウン』
「「は!?」」
高圧電流によって、奥の機体は搭乗者2人の声を
無視するかのごとく、墜落していった。
「おっとぉ! ここからは俺が後ろを守るぜ」
ビローブレイドでマシンガンを溶かしつつ、
後ろとの対決に備え始めた。
「アレウスの野郎、今度は戦闘機を凌駕する気かよ」
「どこからでも狙い撃つのは簡単だが、届く前に
溶かされちゃあ厳しいね」
レイル・ジェルマンペアが、敵として追撃
してきたのだ。
「ウッディ、状況次第だが、本当にあの作戦を
やっても良いんだな?」
「ギキッ!」
アレウスの問いに、ウッディは気持ちの
良い返事を返した。
「何か知らんが、お前らは撃ち落としてやるぜ。
ジェルマン!」
「フッ、任せな!」
意気込むレイルに、ジェルマンも答える形で
スイッチを切り替えた。
「鉛の嵐を味会わせてやろう」
正確無比なマシンガンの嵐を撃ってきた。
「マシンガンじゃ、俺達は倒せませんぜ」
「それだけな訳ねーぜ?」
すかさず、素早いタイピングにより、両翼根元から
ミサイルが発射された。
「ホアッ!!」
アレウスは狭い範囲で盾のように操っていた
ビローブレイドを、広範囲に展開してミサイルの
迎撃に当たった。
「取って置きを食らいな」
とどめのエンターキー的なノリで、ジェルマンが
力強いタップを行った直後、他の弾の倍以上速い
砲丸のような弾が発射された。
「行くぜ!」
しかし、アレウスはウッディの背中を引っ張り、
同時にクラフトが機体を下降させたことで、弾丸は
ウッディの凹み中の腹の中央に直撃した。
「「…………は??」」
背中側に、大きく肉体が伸びる。摩訶不思議な
この現象に、2人は目が点になった。
「お礼砲のおみまいだぁ!!」
「ギシャオッッ!!」
伸びたゴムが縮もうとする力に筋力を加え、砲弾は
先程よりも僅かに加速して返された。
『ピッ…………』
「おっと…………2%損傷したぜ」
「こんなん安い方だぜ」
機体の速度はごく僅かに落ちるが、さほど深刻な
影響は出ない。
「イヤァァアアアッ!?」
「左翼吹っ飛んだんですけどぉ!?」
が、その後ろに迫っていたマリリン、ミュー
ペアの機体は、左翼がごっそりと消えていた。
「くっ、ミューたん! こうなったらレイル達
だけでも落とすわよ!」
「了解!」
ミューはレバーをガチャガチャと操作し、
最後に"DANGEROUS"と書かれたボタンを
押した。
「くぁwせdrftgyふじこlpッッッッ!!!」
マリリンは最早、早口すぎて聞き取れないテンポで
色々な魔法…………計20発を詠唱し、魔力注入管に
送り込んだ。
「「切り札・ヴィジャヤ発動!」」
無数の加速装置が着いた矢が放たれた。その周囲には
膨大な魔力が拡散しており、回避が困難な一撃となって
いる。更に、機能している砲門全てを前方に向け、
追撃をも放った。
「さあさあさあ! 避けられるものなら避けて
みなさい!!」
「ジェルマン先輩、ジ・エンドですっ!」
最強最速の畳み掛けをしたことで、2人は男ペアの
撃墜を確実視した。
「甘ぇぜ2人ともぉ…………」
レイルはおもむろに"avoid"と書かれた
ボタンを押し、レバーを勢い良く切った。
「「直撃!」」
切り札が直撃したことで、2人は歓喜の声を上げた。
「いいや、外れだ!」
しかし、跡形もなく消滅させた筈のレイルの声が
聞こえてきた。
「うっそ!?」
「イヤッ!? エンジンがっ!!」
更に、ステルス弾がエンジンに直撃したことで、
これにて彼女らの戦闘機は墜落確定となった。
「悪いねミューちゃん、後でとっておきの錬金法を
教えるから、勝利はいただくよ!」
「くやしーー! レイルもあやまれーーーー!」
ジェルマンが捨て台詞を吐いたのに対し、レイルの
声が聞こえなかったので、マリリンはますます悔しがった。
「…………へへっ」
レイルはそれだけ言い、機体のステルスを解除した。
悔し叫びを上げていたマリリンも、機体の胴体着陸に
よって、死に戻りしたのだった。
「さて…………アレウス達に連続でぶっぱなす筈だったが
使っちまったなぁ…………」
「それよりも…………」
「ああ、隊長達だな」
~上位勢~
「アレウス、加速するぞ」
「あいよ」
帯熱、帯電しているビローブレイドを所定の位置に
差し、その熱電力を推進力へと変換した。
~トップ~
「さて、そろそろアレウス辺りが来る頃かな?」
「容赦なくえいっ! としましょうね」
「うむ」
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