表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

158/241

走り抜いた先のゲームとのコネクト

お待たせしました。もう一話上げれるかは運次第と

いった所です。

156話


「隆二~~~~!」


 隆二が振り替えると、美優が若干ふらつきながら、

全速力に近いペースで走ってきた。


「うおっ…………ととと」


 飛び付いて抱き付いて来たので、脚を踏ん張って

転倒を防いだ。100m走を正真正銘の全速力で

走り抜いた後なので、力が出ないのだ。


「近くで見たら、もう、本ッッッ当に速くてビックリ

したよ~! 優勝おめでとおめでと~~~!!」

「ぶはぁっ、サンキュ! 美優も、結構な大差つけて

1位になってたな。おめでとさん」


 両腕で美優の脇を抱き上げ、顔から胸を剥がしてから、

お礼を言った。


「ワーイ! ワーイ! ほめられた~!」


 美優は隆二にほめられたことで、兄に抱き上げられた

幼い妹のごとく喜んでいる。


「よっ、2人とも、マジで凄かったぜ! 特に隆二!」

「よぉ、拓人に武三。差し入れ持ってきてくれたのか?」


 隆二は観戦しにきていた友人2人に挨拶をした。


「俺らが料理できそうな男に見えるか? にしても

的場、スゲェ走り方でぶっちぎってたから、ビビった

ぜ!」

「走り方、ねぇ。私が部外者なのもあると思うけどさ、

先輩達、称えるどころかフォーム悪かったってばっかり

言ってうるさいのよ。負けて嫉妬してるからって、

こんな言い方、頭に来るわ!」


 美優が男子席側に来ているのは、その辺の軋轢も

理由の1つだ。


「まぁ、確かにフォームも疎かには出来ねぇけどさ、

あの人達は根本的に筋肉不足だ。後、普段の姿勢が

踵重心なのはマジで論外」

「そうよ、せ~~っかく隆二が筋力改善するよって

言ってるのに、馬鹿にするような人たちだもん。

程度が知れてるわ!」

「…………まぁ、確かに美優以外の人達、大体ビリから

3番目以内だったな」

「数名、腹の肉ダルッッ! ダル!! の女居たけど、

思わず"マジかwwwww"ってなっちまったぞww」


 武三が女子100m走の様子を回想し、ケラケラと

笑い出した。


「まあまあ、武三。彼女らの生活習慣の乱れが原因の

自業自得とはいえ、女性は見た目に対する評価に敏感

なんだ。あまりにも酷いこと言ってると、そのうち

襲撃されちゃったりするかもしれないから、気を付け

るんだよ」


 遅れて弁当を持ってきた法二が、笑いこけている

武三に注意換気を行った。


「おおー、流石は池中君。女子の心理把握も

完璧だね~~。ま、今回ばかりは武三の意見が

真理だと思うけどね~」

「やっぱどんな形にしろ、デカい何かを持ってると

見せたくなるものなんかな?」


 隆二は筋肉でも脂肪でも、人間、何かしら大きな

モノを持っていると、他者に見せびらかしたくなるの

だと解釈した。


「デカいモノ。ね~」


 美優は自身の胸の谷間を見た後、男子4人の下半身を

一瞬だけ流し見た。


「やー、筋肉はまだしも、脂肪とか見せられる側は

たまったもんじゃねーって」

「中年のおじさんが上裸で昼寝して問題になった

事件があったよね~」

「あれかー、けど筋肉も筋肉だろ。俺達、間近に

スゲーの居るから麻痺してるだけだろうし」

「こんなもんじゃねーよ、今にもっとバルク・カット

共に極めてやるぜ!」

「そのいきだー!」


 常人男子枠の3名は、デカブツを見せる行為は

見せる側のエゴと結論着けたが、隆二は勝手に肉体

改造のボルテージを上げ、美優は更に後押しした。


(はぁ、流石にズボン越しじゃ分かんないや)

(にしても一瞬、股間に視線がぶっ刺さったが、

何だったんだろう? チャックとかねーから事故る

訳が無い筈だが…………??)


 美優はサイズ確認に失敗し、感覚が鋭い隆二は

視線こそ的確に感知したが、飛ばした人物の意図は

理解できなかった。


「てか、飯だ! 俺と法二はまだ走らんと駄目だからな。

美優、午後から応援よろしく!」

「よろしくね」

「モチの論!」


 ワイワイガヤガヤ昼飯を食べ、更に話に花を

咲かせた。その頃客席では


「いやー、あのお姉さんマジでヤベェよな~」

「ああ、顔も良いし、何よりあのナイスバディ!

一瞬、本当に日本人か? って思ったぜ」

「たなびくポニテ、揺れる胸、爆発する尻!

そして括れ! そんでもって、素人走りが抜けねぇ

フォームでブッチギリ1位!」

「あー、どっかの誰かさんみてぇに、年収2億以下の

男はゴミとか思ってるんだろうな~~」


 陸部の男子中学生が、走っていた美優について

話していた。


(ったく聞こえてんだよ。けど、あの身体能力に、

あの選手名…………読みが正しければ、きっと2人は

あの2人だ)


 どっかの誰かさんと噂されていた女子中学生が、

グラサンを外して隆二達の方を見た。


「これは閉会式の後、ヒアリングだな」


 隆二達…………とりわけ隆二を見るその表情は、

期待に満ち溢れていた。


~午後・200m走~


『セット…………パァン!!』


(行くぜ…………!!)


 スタートダッシュは完璧。両足が伸びきった頃には

時速40kmにまで加速していた。100m走より加速を

抑制することで、ほんの僅かだけ走れる時間が伸びる。

既に消耗している以上、重要なテクニックなのだ。


(食った後、ショートナップしながら呼吸でATP

作りまくった甲斐があったぜ!)


 4歩で時速65kmまで加速した。隆二の肉体は

ATPを生産することに特化している為、数時間

呼吸を繰り返せば、全力の8割程度の運動を行える

程度まで回復する。


(長く動けるつっても、やっぱ6秒位でスッカラカン

だな~)


 現在1.5秒経過。8歩目にて時速85kmで

23m強進んでいる。因みに法二を初めとした

一般の選手は、まだ最高速度の半分も加速出来て

いない。


(さぁて、ここからはどれだけこの速度を維持できるか

だな~)


 そして2.2秒が経過した時点の時速90kmを

今回の最高速度とし、ゴールまで走り抜く事にした。

現在41m地点に居るので、残り約160mの辛抱だ。


「ヤベェ! ヤベェ! ヤベェ!!」

「カーブ減速せずに回り始めたぞ!!」

「砂ぼこりヤベェ! チーターかよ!?」


 カーブだろうと、本来の8割以下の力なら、

正確な動作で回れるものである。


「フフッ、やっぱり私がゲームにも関わらず、つい

うっかり惚れちゃった男なだけあるわ…………」


 そして…………


(このままッ!! このまま突っ切るぞおおおおッ!!!)


 現在150m。とうとうATPーCP回路の駆動に

限界が訪れ、減速し始めた。ここまでにかかった時間は

6.5秒。


「(最小限の力でッッ! 減速を最小限に抑えるッッッ!!)

うおおおおおおおおッッッッ!!!!」


『ゴーーーーール!!!』


 流石に8秒もあれば白線はセット出来ており、

隆二は心地よい勝者の快感を味わうことが出来た。


 記録…………8.16秒!


「ハアッッ!!…………ハアッッ!!…………ヴッッ!!?

は、は、腹から…………内容物がッ…………ヌグググ……………」


 しかし、あまりにも短期間で肉体を酷使した為、

全身の疲労が吐き気として現れた。


「タンカー!」


 スタッフが直ぐ様タンカーの指示を出した。

慌てて数名がタンカーを持ってやって来た。


「大丈夫だ、直ぐに保険部に運んでやるからな」

「お…………ねが…………いし………………ムググ…………」


 リーダーのおじさんの言葉には、2つ意味が

込められていた。1つ目は隆二を迅速に助けること。

2つ目は、迫り来る一般選手達の邪魔にならないことだ。


「せーのっ!」

「「「ぬううううっっ!!」」」


 しかし、140kg超えの巨体は、男4人掛かりで

あっても重たいものであった。頑張り空しく、どこから

どう見ても迅速に運べていない。

 そして不運は重なり…………


『バキッ!』

「でゅふぅぅうっっっ!!?」


 古いタンカーが、隆二の体重を支えられずに破損。

隆二はパニックになってのたうち回り、最終的には

グランドのど真ん中で地上に放られた魚のごとく

ピチピチしていた。

 結局、この様子を見ていられなかった拓人達の

助けも入り、紙一重でリバース及び晒し者にならずに

済んだ。


「隆二、落ち着いた?」


 隆二に膝枕をし、頭を撫でている美優が問いかけた。


「おう。…………持つべきモノは親友(マブダチ)。はっきり

するもんだな」


 競技中とはうってかわって穏やかな表情の隆二は、

更に笑顔を足して返事した。


「ッッ!!…………うんっ!」


 真っ直ぐな笑顔を向けられ、美優は盛大に赤面した。

客観的に拓人とかのほうがイケメンなのに、こうなる

のは、ある意味奇跡と言える。


「ッオラッ! 負け犬の分際で調子乗ろうとすんじゃ

ねぇ! 消えろっっ!!」

「畜生! 覚えてろ、薬漬けの偽物筋肉共!!」


 ユニフォームを着た数人が、武三に追い返された。

どうやら会場中の全員の視線が注目した隆二の舞いに

より、調子が狂って成績が振るわなかった為、弱体化

した隆二をストレスの捌け口にしようとしたようだ。

 隆二には及ばないが、並外れた巨体の武三は、

そういった連中を門前払いしているようだ。


「なんつーか、数ヵ月前までこんなに友に恵まれる

って思わなかったな~~」


 隆二は高校入学してからも、友人は拓人しか

出来なかったので、今のこの状況は未だに実感が

沸かない様子だ。


「確かにな」


 それは拓人も同様だった。

 

 そして何とか閉会式にも参加し、今は薄い本程の

厚さになった賞状を持ち歩いている。


「やっほー、アレウス~」

「フィンチk……………いや、誰だ??」


 目の前の、大人びたショートカット少女に

問いかけた。声は完全にSAFの友人のフィンチで

あるが、姿は結構違う。


「フィンチであってるよー、正確には中の人ね。

ねー、金子選手だっけー? さっきアレウスって

呼んで反応したよねー?」

「あっと…………(ヤベェ…………あまりにも声そっくり

だったから、ついつい反応しちまったぜ…………)」

「その動揺はイエスと見た! こんなところで会えて

感激だよー!」


 当人と見たや否や、すかさず全力で抱き付いた。


「まてぇい! 手……身体が速すぎだぞ(これは…………

新手のオレオレ詐欺。何かチゲぇな…………あっ)テメェ、

美人局(つつもたせ)だな!?」


 引き剥がしつつ、冷静に考えを巡らせる。


「むぅー、人聞きの悪いことを言うね~。そんなに

私の事、信じられない? じゃあテイムしたモンスターを

順に言うね。ウィント、スパロウ、ウッディ、フラッシュ、

ブルー、そしてクロウズ。完璧でしょ?」


 隆二に抱き上げられながら、生えるどや顔で

勝手に述べてきた。


「……………………そうだな。一先ずフィンチの中の()

って事にしておこうか」

「やったぁ!」


 美優よりは控えめな動作で喜びを表現した。


「ちょっと!!」


 美優の声が響き渡った。

最後までお読みくださりありがとうございます。

評価、ブクマをしてくださると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ