空想上の忍を騙る者
ニンニン!謎のボス。その名は
142話
「いやぁ~、久々に暴れることが出来て、俺は気分が
良いぜ!」
「俺もだ。新ボスになって以降、メインターゲットと
戦闘フィールドの調査を徹底することで、こんなに楽な
蹂躙になるんだもんな」
「その上、雑魚どもからアイテムも巻き上げれて、
懐も満たされる。最高だよな、おい、テメェの望み
通り頭踏んづけてやってんだぞ! 礼品を差し出し
やがれ」
「ゴ、ゴザルでゴザル…………」
くノ一に頭を踏みつけられたユーザーが、ジュエルと
幾つかのアイテムを取り出した。
「ほぅ、結構良いもの持ってんじゃねーか!」
「けど、まだ隠してねーか? 更に俺達に寄越せば、
このねーちゃんがもっとご褒美をくれるぜ?」
「ゴッ、ゴッ、ゴザッ…………ゴザルっ!?」
「オラ! 寄越すのか! 寄越さねぇのか!? 寄越さ
ねぇなら、腕貰うぞ!!」
くノ一は、うつ伏せの相手の側面に回り込むと、
右脇に左足を潜り込ませ、右肩を左手で押さえ、
左腕を右膝に固定してから、左手首を右手で極めた。
「か、勘弁するでゴザルゥ~~!!」
人生で初めて関節技を体験し、ユーザーは
パニックに陥った。
「うるせぇ! さっさと出すもの出さねぇと、手首か
腕を貰ってやるぞ! あばら骨も悪くねぇか?」
「ウゲェ…………折ってからほじくり出すってかぁ?」
「キッショーー! てかその前に死に戻りするんじゃね?」
「あー、こいつ既にHP半分だもんな」
「ヘルプでゴザルゥ~~!!」
「「うるせぇ!!」」
「折るぞ!!」
と、その時
『…………ドドドドドドドド』
「何の音だ?」
「近づいてね?」
謎の音が響いてきている。
「え? 頭吹き飛んだ!?」
くノ一は、50m先の前方を警戒していた味方の
頭が突然吹き飛んだことに、とても驚いた。
「に、逃げっ……」
共に恫喝を行っていた男の1人が逃走を選択した時
には既に遅かった。3名とも首があり得ない高さまで
跳び、世界がくるくると回っていたのだ。
「おいおい…………グラス・コープがチンピラ忍者の
無法地帯になってやがるなぁ…………。誰だよ今回の
襲撃を企画したアホは、全速力で叩ききってやる!」
アレウスは広間の左右を隔てる建物を蹴り、
ジグザグに移動しながら、一般ユーザーを虐め抜く
忍者軍団を切り捨てていたのだ。
「おっ…………この声は」
~300m先~
「ギガグラビティ! サイスリーパー!」
広範囲に超重力を発生させる上級重力魔法を
発動させ、それすら耐えた生き残りの半分を、
中級闇魔法の斬撃で一掃した。
「クソッ、近づきさえ出来ればイチコロなのに、
早口すぎて詠唱速度がべらぼうに高ぇ!!」
「見たところAGIは低い方なのにどうなってやがる!?」
「フン、レイルをゴキブリとしたら、あんた達なんて
ナメクジみたいなものね」
「クソッ! 俺達よりお前らがナメクジだって証明
してやらぁ!!」
「まずはあのタンカーから狙え!」
指揮を執る上忍は、大勢をクラフトへ差し向けて、
自身も居合技を繰り出した。
「親友と比べたら、止まって見えるぜ」
クラフトはどっしりと構え、盾の位置を最適な
場所へ移動させた。
「なっ!?」
「「「えっ!?」」」
上忍、忍者問わず驚きの声を上げた。何故なら、
クラフトの盾から大量の鎖が出現し、自分達が
反応する間もなく捕獲されたからだ。
「痺れる衝撃を、お召し上がれ」
そしてそのまま高圧電流を流された。
「くっ…………広がr…」
「ネット・ボルテージ!」
「「ギャアアアッ!?」」
散り始めた忍者軍団に対し、イシュタルは
広範囲に弱い電圧の網を広げる魔法を唱えた。
「…………これ、捕縛技だったっけ?」
「ええ、説明文にもそう書いてあるわ」
「イシュちゃんに限っては優秀な殺傷技ね」
イシュタルのMAGがあまりにも高すぎた為、
最早超高電圧の網と化していたらしく、忍者達は
即死に戻りだったのだ。
「こ、コイツらは放置だ! 町や別の面子を
襲撃しろー!」
たちまち3人を放置して、別の対象をターゲットに
し始めた。
「逃がさないわよ! サイスリー…」
「「「フェア!??」」」
早口マリリンが魔法を唱える前に、忍者達の
胴体や首が天空へと跳んでいった。
「マリリン様、ストップです!」
「ムグ」
イシュタルは急いでマリリンの口を塞いだ。
「3人ともお疲れッス! マリリンさんの声が
聞こえてきたので、助太刀に入ろうとしていたけど、
要らなかったっポイですね」
「アレ君もおつ~。コイツら逃げようと
ていたから、わりと助かったよー」
「けど、こっからは要らなさそうだから、
また別行動かな」
「アレウス君、隊長をよろしくね」
「おうよ! イシュタルも一般ユーザーの
巻き添えだけ気をつけて派手に暴れるんだぞ」
「ええ!」
そう言って、2秒後には視認することも難しい
速度まで加速してしまった。
「…………いつ見ても、人間とは思えない速度ね」
「今日なんかスクワットとデッドリフトで
530kgを上げてたぜ…………」
「…………成人男性が約9人分の重さということね」
その脚力を、スポーツ選手すら歯牙に掛けない
刹那の瞬間に発揮することで、あのスピードを
生み出しているということだ。
~街の中心部~
「ぬん!!」
「イエー、イッツインチョレスティング!」
忍者軍団の首魁は、レオナルドの音速の
猛進斬りを、いとも容易く見切ってしまった。
「ヒー、ハー!」
独特のテンションを振りかざし、多くの爆薬を
投げつける。
「クッ」
レオナルドは斧で受け斬ることをせず、大きく
横へ回避をした。
『ボコフッ!』
そう、これは高火力な爆弾である上に、大量の
煙幕を張ってくるのだ。とてもじゃないが、受けて
良い代物ではない。
「ヘイヘイヘイヘーイ!」
間髪いれず、投げ続ける。
(あの男…………相当戦い慣れているな。爆薬の
着弾位置を頭だけでなく、足元まで狙うことで、
短調な回避では間に合わなくさせてくる。加えて、
本人も不規則に移動し続けることで、俺の飛ぶ斬撃を
当たりづらくしているな。そして何より…………)
「ヒャオッ!!」
おもむろに瞬間移動を思わせる速度で回り込み、
忍者刀で首を狙ってきた。
(この速度、アレウスにも匹敵する! 奴もリアル
フィジーカーなのか?)
しかし、レオナルドは両手斧を顔面の隣に
配置することでガードと同時にカウンターを
仕掛けた。超速度で突っ込む相手のスピードを
活かし、そのまま胴体を両断するつもりなのだ。
「アンビリッ…バボォ!!」
が、相手は片手に持った日本刀の側面にもう片方の
手を添え、斧の刃先に滑らせるようにして、肉体の切断を
回避。その上鎧越しとはいえ、レオナルドを蹴ったのだ。
「フッ、それでこそ荒くれもののボスだな(当然だが、
パワーもスピード相応に高い。ただの蹴りでこの
ダメージはアレウス位しか出せまい)」
「ユー、相当のテダレだねー! バット、モアニンジャ、
いたらドウカナー?」
スライディングの勢いで立ち上がり、即座に構え直す。
(来たか)
周囲に20名程の上忍が現れた。
「ユー、キャント、アヴォイドデス!! カカレー!」
全員の一斉攻撃、レオナルドといえど絶体絶命だ。
「隊長おおおおおおおっ!!」
突如何かが4人ほどの上忍を瞬殺し、その上ボスに
地面にクレーターが出来る程の一撃を加えたのだ。
ボスは避けきることが出来ず、忍者刀で受け流した
ものの、自身も建物の壁を壊すほどの速度で吹き飛ば
された。
「助かったぞアレウス」
「間に合って何よりッス」
「イッツァ、グレイトブロウ。テルミーユアネーム」
「アレウスだ。マイネームイズ、アレウス!」
「アフタァオール! ヤ・ハ・リ、オマエ、ユーアー
アレウス! ネクスト、ティーチユーマイネーム」
「…………隊長、英語が多くて良く分かんないッス」
「奴は自分の名前を教えてやると言っている」
アレウスは現実だと国語に次いで、社会と英語が
苦手なため、多少会話に苦労している様子だ。
「My name is Kotaro Fuma」
「コタロウ…………フウマ。風魔小太郎か! 色々と
妄想されがちの忍者」
「ザッツライ! アーンド、アイム、"リアルフィジーカー"」
最後までお読みくださりありがとうございます。
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ニンニンニンニンニャンニン!




