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爆報 & 勧誘!

事件は早速クローズアップされる…………

134話


「おっ、武三に美優、先に来てやがったか」


 隆二が教室の扉を開けると、野球部エースの武三と

弓道部エースの美優が、通り道スペースを挟んで

何やら話していた。


『ザザッ』

「あ? 何か変な感じだぜ」


 隆二が入ってきたや否や、教室中の生徒の

挙動が一瞬おかしくなり、その違和感は隆二も

感じ取った。


「おはよ…………ちょっと来て」

「??」


 いつもよりかなりテンションが低い美優の

呼び掛けに応じ、武三の前に座る法二の椅子を

借りて話しに参加した。


「隆二、周りの有象無象が俺達に嫌な視線を

浴びせている原因は、これだ」


 武三は1ページを覆い尽くす内容の記事を

指差した。


『美嶺チア部乱闘事件!!』

 6月◯日(土)、美嶺高校チアリーディング部

全員と、他校の高校生2名が客席で乱闘を起こす

事件が起きた。美嶺チア部が応援していたところ、

他校の女子高生がチアコス姿で1人の同校選手を

応援し始め、これに腹を立てたチア部主将が

女子高生に平手打ちを入れたことが乱闘の

原因だった。

 事件の規模は小さいものの怪我人は多く、乱闘を

止めようとした女子高生の友人の男子高生は、全身に

擦り傷・切り傷を負い、チア部の全員に1ヶ所以上の

痣・打撲が見られ、女子高生のみが冒頭のビンタに

よる軽い腫れという軽傷だった。

 乱闘は同日、美嶺高校と対戦した並月高校の選手に

よって鎮圧された。同選手は本試合に置いて、打席に

出ればホームラン、守備に置いては圧倒的俊足と

跳躍力による防御で、本来ならホームランとなったで

あろう打球すら捕球して見せた。


「まー、こんな面白ぇ事件、マスコミが取り上げねぇ

訳ねーよな」


「そうだぜぇ、的場ぁ。お前が変な応援するから

よぉ…………」

「だ、だって! 私は2人に頑張ってもらいたくて、

隆二の応援が終わってからは宇海の歌も歌おうt…」

「俺達のコールド勝ちの快挙が、乱闘の半分以下の

スペースしか無くなったじゃねーかぁ!!」


 武三は、『弱小並月、まさかのゴールド勝ち!?!?』

という記事を指差しながら、その小ささを嘆き始めた。

 因みに左下は、『強豪美嶺校野球部顧問、

体罰発覚!!』という見出しになっている。


「し・か・も!! 俺のインタビューが中央左端に

こじんまりしてるのに、お前ら暇人トリオは下一杯に

デカデカと載せられやがってよぉ!! 隆二は兎も角、

応援に来てただけのお前ら2人よ!!」


 乱闘記事ページの下には、『荒ぶる韋駄天。武の

心得の出所とは?』、『彗星の如く現れた筋肉野郎。

獣のパワーの秘訣はここだ!!』、『踏んだり

蹴ったりの彼。韋駄天と獣を操作するブレイン

だった!?』という見出しの元、3人のインタビュー

が多めに記載されていたのだ。


「フムフム、美優の記事が、チア部に無双した時の

武術を誰から学んだかと、弓道大会への意気込み。

俺はあの時話した筋トレしてゲームしたら強くなった

よーって事がほぼ原文まま。拓人は…………なんじゃ

こりゃ? この記者思い込みであることないこと

書いてやがるぜ。後で拓人に聞こっと」


「私、弓道界隈で韋駄天って呼ばれてるなんて

初めて知ったよ? しかもこれからは妖魔の凶射手

って呼ばれるの? ヒドすぎるよ…………」


 自身の記事の最後の一文、『筆者は今後、彼女の

事を「妖魔の凶射手」と呼ぶことにする』を指しながら、

泣き始めた。


「「いや、部外者の俺らにそんなこと言われても…………」」


 筋肉2人は返答に詰まる他無かった。


「3人とも来ていたんだね!」


 そんな折りに法二がやって来た。


「何だ? 行方不明の親友が見つかったような

反応してよ」


 らしくない雰囲気に、隆二が問い掛けた。


「その記事だよ。こんな事件があったんだ、3人とも

心に大きな傷を負ってないか心配で!」


「あ~あ、俺はある意味傷だらけだぜ! なんたって、

美嶺相手に投げきった勇姿がこんなに小せぇ見出しに

なったからな! いっつも新記録期待されてるお前にゃ

わかりっこねーよな!」


 武三が自分のショボい記事を指差しながら、

その気持ちを法二にぶつけた。


「ううん、分かるさ。誰だって、自分の活躍を

不十分に評価されていたら、心が痛むものだよ。

武三はこの内容に憤りを感じられる感性が残って

いる。つまり心は正常なままだってことさ!

良かった!!」

「良くねーわぁ!!!!!」


 心から安堵する法二に対し、武三は心から

否定した。


「金子くんは…………」


 自分の席に座る隆二を見てみた。


「何かいつもと変わらずって感じだね。良かった!」

「おう、席変わらねぇとな」


 隆二が退き、法二が座った。


「問題は…………的場さん、あんな書かれ方は不本意

極まりないよね…………」


 泣いている美優に同情するように語りかけた。


「う"ん…………あんなのヒド過ぎ…………もうやだ…………」

「そう、あんなヒドい事を書けるのは、的場さんの

事を何一つとして知らない、どこぞの馬の骨だから

だよ。金子君や武三なら、あの事件をインタビュー

したとしても、ああは書けないさ。勿論、僕や道先君

もね」

「池中君…………」


 法二の弁論で、美優は泣きつつも顔を上げた。


「だから気にすることは1つも無いのだよ。顔を

上げて前だけ向いてこう!」

「うんっ! ありがと、池中君っ」


 美優は完全に立ち直ることが出来た。この様子を

見ていた2人は


「さっすが法二。陽キャ+国語力の賜たぜ! 俺じゃ

ぜってー、こんな言葉思い浮かばねぇな」

「全校の女が惚れるわけだ。何せ今は亡き絶世美女(ぜよびめ)

軍団もアイツに釘付けだったからな。今まで一目惚れ

しなかったのは、地位とかに興味ねぇ的場位だろうな」


 法二の完璧ぶりを称賛した。


「何よ、宇海の癖に私の事安(やっす)い女みたいに言って~。

宇海なんてギャル先輩達に絞り尽くされれば良いのよ」

「縁起でもねぇこと言うなよ…………」


 貶されたのを気にくわなかった美優は、武三を

貶し返した。内容が内容だったため、武三は頭を

抱えた。


「あー、やっぱこうなってるよねー」


 拓人も教室に入ってきた。


「道先君、良かった。頭の良い君の事だから、こんな

記事気にしてないとは思っていたけど、実際会うまでは

心配だったよ!」


 これにより、法二は完全に安心した。


「法二って純粋に感情豊かだよなぁ~。この通り俺は

全く堪えて無いぜ。ケガだって美優と隆二が助けて

くれたから大したこと無いし、あんな妄想で固まった

デタラメ記事なんか真に受けないさ」

「デタ…………ラメ?」


 拓人の発言に、美優が反応した。


「ああ、デタラメだ。特に俺の記事を書いた記者は、

面白半分に脳筋だの操るだの書いてるけど、ハッキリ

言ってセンス皆無だな。そのうち業界から干されると

思うぜ。だから美優、お前も変な肩書きを気にする

ことはねぇ。逆に本人の前でこんな呼び方出来るか?

って感じだぜ」

「…………そうだよね。拓人もありがと!」


 美優の不安は更に消えた。因みに拓人担当の記者は、

この先実際に隆二達の目に映ることは無かった。

 そしてこの様子を見ていた筋肉2人は


「流石拓人。似た過去を持つもの同士だが、尖った

部分でのパフォーマンスを見比べたら、圧倒的だぜ」

「俺達、国語力皆無だもんな」


 国語…………特に現代文は、武三は赤点ギリ回避の

日常、隆二は勉強会が無ければ赤点まっしぐら

なのである。

 そして昼休みが始まった時だった。


「さ、今日も屋上に行こ! 詩音と青羽も待ってると

思うし!」


 何時もの屋上昼食会を開こうとすると


「見せ筋……じゃなくてカネコリュウジクン!」


 以前、運動神経抜群を謳い、隆二の事を見せ筋と

バカにしていた男子の1人が隆二に声をかけた。

 隆二を呼び慣れてないのか、片言になっている。


「…………何だ? まさかとは思うがまた俺を

馬鹿にする気か? なぁ、律」


 同じグループで動けるデブとして活動していた

律に、話を振った。


「それは完全に違うド。ほら(りゅう)()(すけ)、ちゃんと

誠意を持ってお願いするド」


 律は否定し、同時に友人を促した。


「隆二君の人智を超えた運動能力を見越し、お願いが

あります! どうか、サッカー大会のお手伝いをして

ください!!」


 竜之介は、隆二の机に頭を『ゴチーン!』と

ぶつけてお願いした。


「オデからも、お願いしますだド!」


 律は机にぶつかる寸前で、頭に制動をかけた。

…………つもりだったが、少し及ばず軽くぶつけた。


「取り敢えず2人とも顔上げな。律、なんて

事しやがる。俺の机が油マシになったじゃねーか

コノヤロ」

「すまないド」


 今度は両手を会わせ、軽い会釈ポーズで

謝罪した。


「(なんか地味に可愛らしいのがなんか地味に

ムカつく…………)そんで竜之介…………だっけ?」

「あ、ああ…………」


 本人としては部が残す大会の成績に関わるので、

ガチガチに緊張している。


「試合はいつ始まる?」

「あ、明日だ」

「んだとゴルゥア!? 明日かよ!!?」

「ウヒャア!?」


 思わぬ短さに、隆二は動揺した。そして竜之介も、

そんな隆二に驚いた。


「明日…………あ、何もねぇ日だ。しかも国語系の

授業が目白押し。良いぜ! ココ1番で超ロング

ゴールでも100人抜きでもしてやらぁ!!」

「サ、サンキューーーーーー!!!!」

「良かったな、竜之介!」

「ああ、律、紹介してくれてありがとう!

てわけで隆二君、放課後グラウンドに来て

ほしいんだ」

「分かったぜ(都合が良い。たまたま柔道部も

休みになっていたんだった)」


 そんなわけでサッカー部に行ってみると


「オラァ! グラウンド20週じゃあ!!」


 耳にジャラジャラピアスを(なび)かせた

白金色の髪をした不良の主将が竹刀を片手に

スパルタな特訓を行っていた。


「無心で行くぞ。途中で倒れたら練習すら出来ん!!」

「ああ!!」


 部員達は、超ヒソヒソ声でこの場を切り抜ける

方法を試行錯誤している。


「…………おい、助っ人とやらぁ、何してる? 走れや」

「言っちゃ何ですが先輩。コレ、何の特訓ですか?」

「男は黙って走らんかい!! お前らは「はい!!」

だけ言って従えば良いんだよぉ!!」

「いや、どう見ても過剰な有酸素運動ッス。速筋

由来の瞬発的な加速力とスピードががた落ちしm…」

「死ねぇえ!!!」


 清々しいほどのパワハラを行い、清々しいほど

容赦の無い竹刀の一撃が隆二の腰に入った。


「は??」


 先輩は間の抜けた声を発した。


「よしよし、骨は確実に硬くなってるな」


 隆二の腰の骨が硬すぎて、竹刀が折れたのだ。

勿論、当人はノーダメージである。


「このくそマッチョ!!」


 今度は左手を地面に置き、高さを増したアクロ

バティックな超上段回し蹴りを繰り出してきた。

190cmを超える隆二の頭に届く辺り、腕っぷしは

強そうだ。


「ギャアアアアッ!!」


 しかし、脳震盪を危惧した隆二がスレスレで

回避した所、更に勢いが増した状態で爪先を地面に

強打。まさかのケガを負ってしまった。


「……………………皆さん! 走り込みを中断して、

練習試合に移るというのはどうでしょう?」


 大きな声で提案した所


「「賛成!!」」


 1つ返事で練習試合に移行した。


「おっ、おい!! 走れゴミカス共ーーーーー!!」

最後までお読みくださりありがとうございます。

ブクマ、評価をしてくださると励みになります。


ブクマ525人&評価ポイント1900pt誠に感謝

申し上げます!

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