野球試合(表)
超遅くなってすいませんでした。まだ忙しい時期が
続きそうなので、次回も今回並みに遅くなるかも
しれません…………
132話
「ここが…………甲子園か!」
「いや、地区大会の球場な。勿論、勝ち進めれば
甲子園にも行けるけどな」
現在、隆二を加えた野球部は、地区大会の球場に
足を踏み入れている。
「まぁ、勝ち進めればの話だド。でも、世の中何が
起こるか分からないから、今大会ボロ勝ちかも
しれないド! そんときには隆二に協力してほしいド」
律が楽観的なことを言っていたので
「譜跡、あまり楽観視せずに気を引き締めろ。
金子も初めてで分からないことだらけだろうが、
どうか誠意をもって取り組んでほしい」
「当然です。ピッチング、バッティング、守備、
全てを全力で取り組ませていただきます」
「初戦が美嶺高校か。手強いな」
「確かチアガールが可愛いことで有名でしたよね」
「おうよ、去年は危うく見とれかけて球を
すっぽ抜かしちまったぜ!」
武三が言及した対戦相手の高校に、1年の
波風俊人が反応し、それに対してジョークを
返した。
「宇海、波風、おふざけは勝ってからにしろ」
「す、すいませんでした!」
「ウィッス(守田先輩、3年生だから必死なんだな
…………けど、今回俺達の元には隆二が居るぜ)」
武三は運動部の雰囲気に不思議そうな表情を
見せている隆二の方を見た。
そして、試合が始まった。
一番バッター : 波風俊人 身長165cm、
体重62kg。
作戦 : 兎に角ヒット撃ってから、加速力を
活かして次のベースへ走り抜ける。
『プレイボール!』
相手投手が物凄い豪速球を放ってきた。
「ストライーク!」
ボールと瀬戸際のラインにて、ギリギリ
ストライクとなった。そして間髪入れずに
次の球を投げる。
『キィン!』
俊人は低めのヒットを打ち返した。そして
猫のような爆発的な加速で駆け出す。
「間に合えっ!!!」
相手のサードがファーストへとボールを投げた。
「セーフ!」
すんでのところでセーフとなった。
「オラァッ!!」
「ボール!」
「ヌンッ!!」
「ボール!」
「クッ!」
「いでえっ!」
「デッドボール!!」
相手投手が連続ボールからのデッドボールを
犯してしまった。どうやら打者を1人出して
しまったことで、動揺したようだ。
「…………」
「ストライーク!」
「ストライーク!」
「ストライーク! バッターアウト!」
しかし、冷静さを取り戻して直ぐに制球力を
取り戻し、ファーストを守る1年を三振させた。
「来たか」
そして四番バッター宇海武三が入場した。
四番バッター : 宇海武三 身長184cm、
体重92kg。
作戦 : 投手ではプロ1歩手前の球威で
圧倒する。打者の時は、ホームラン及び、
盗塁を試みる。
「さぁーてと、一丁決めますか」
バットを投手に突きつけるように伸ばし、
それから構えに移った。
「おおおっ!!」
球速では武三にも匹敵しそうなストレートを
繰り出す。
「甘ぇな!!」
対する武三は、プロも見惚れるほどキレイな
フォームで打ち返し、見事ホームランを決めたの
だった。
「「「おおおおーーーー!!」」」
強豪校の1つとして名高い美嶺高校。その投手から
ホームランをもぎ取ったことで、会場全体が沸いた。
「ウフフ、武三も決めるところは決めるのね」
隆二の高校のベンチと正反対の方向、その
客席から美優と拓人が観戦していた。
「いやいや、武三は今まで1人でチームの攻守を
底上げしてきたんだ。こんなものじゃないさ」
拓人もこの活躍に感銘を受けている様子だ。
「アイツ…………やるわね」
「た、たまたまに決まっているでしょう!
令治先輩が負けるわけ無いわよ!」
「里美、先輩の彼女枠を狙ってるもんね~」
近くに居たチア達も様々な反応を見せていた。
「フフン、この程度で驚いているようじゃ、泣きを
見るだけよね」
「まぁな」
そして4点ツーアウト満塁状態で入場した
10番バッター。その名は、譜跡律。
「あっ、ホームランデブだ」
美優からすれば、過去に隆二を貶した奴らの一角。
良い印象は欠片もない。
「隆二は肉体改造に成功したって言っていたが、
どうだろうな」
そしてチア達は
「プププ…………流石弱小高校。あんな見かけ倒しを
出してら…………」
「令治様の餌食になっちゃえ!」
ここまでで4点取られているものの、まだまだ
馬鹿にする余裕を見せていた。
十番 : 譜跡律 身長178cm、体重100kg。
作戦 : 無理してホームランは狙わない。確実に
強く打ち返す。
備考 : 筋トレしてから数週間で5キロ痩せた
(体組成計から見て、全て脂肪と思われる)。
「クク…………お前を潰して攻撃に回らせてもらおうか」
表情で圧をかける令治、汗を流す律。今、
令治の腕からカーブボールが投げられた。
「ドュオオーーー!!」
律はそれを、1塁側へと正確な低空軌道の
ヒットを打ち返した。
「クソッ!」
1塁の守備は球を取り損ねた。当然である、
律は筋トレによって全身の筋力を鍛えた結果、
スイング速度が武三にも届きつつあるのだ。
更に、バッティング練習も行ったことで、
単純に速い球を正確に打てるようになったのだ。
「でかしたぞー!」
既に3塁に居た守田が律を褒めた。そしてまだ
足がそこまで速くない律以外の3人は2塁分進み、
律も1塁まで進んだ。
「フゥ、これで良いんだ。俺がホームランさえ
打てればな!」
そう、なんとかかんとか球を取ったセンターが、
2塁に向かい始めた律をアウトにしようとしたので、
隆二が大声で律を戻らせたのだ。
11番バッター : 金子隆二 身長192cm
体重141kg。
作戦 : ホームラン、バッター三振(ピッチャー時)、
完全防衛(センター時)
備考 : 身長が1ヶ月に約1cm伸びている。
体重も10キロ程増えたが、これは筋肉のATP
貯蔵量増加と骨密度増加によるものと推察される。
それ以上に筋出力が増しているため、スピードは
寧ろ加速している。
「…………もう俺は本気だ」
後が無くなり、いよいよ令治が怒り心頭になった。
「…………あの見せ筋男は終わりね」
「ああ令治さま、ぽっと出のゴリラに思い知らせて
あげて下さい…………」
チア達も令治の活躍を心から期待している。
そんな時…………
「隆二ーーーーー!! ファイトーーーーーーー!!!」
「かっとばせーーーーーー!!」
隆二の親友2人が大声で彼を応援したので、
チア全員が2人の事をゴミを見るような目で
見据えていた。
「ウルゥア!!」
正に全身全霊のストレートだった。武三の
本気と互角以上だろう。
「ドッセエエイッ!!」
が、隆二はこれを苦もなさげに打ち返した。
勿論、観客の誰も捕球不可能な遠方までかっ飛ばす
ホームランだ。
「助かりました!」
3塁から走り出した1年が、途中で隆二に
お礼を言った。
「うおおおーーー! 流石ゴリマッチョだどーーーー!!」
『ドスドスドスドスドスドスドスドス
ドスドスドスドスドスドスドスドス!!』
特に速くもなく、遅くもない速度で足音を
響かせながら、律は爆走し始めた。当然無駄な
体力を使ったとして、後で監督に叱られていた。
「う~ん、現実でもSAFでもかっ飛ばすってのは
爽快だなっ!」
隆二も爆走する律に触発されたのか、わざわざ
高さ2mずつ跳びながらベースランを行った。そして
律と殆んど同時にホームへ帰ってくると
「「イェイ!」」
重量級2人はハイタッチしたのだった。
対して美嶺高校では、万年補欠の脂肪と
ぽっと出の筋肉に打たれたことにより、顧問が
投手の令治を蹴って制裁を下していた。全国中継
されている事も省みていない辺り、相当 癪だった
らしい。
「はーあ、令治も大したこと無かったんだなぁ」
「里美、あんな男はもう狙っちゃダメだよ」
「令治先輩…………」
「てか…………さっきあの筋肉スゲー跳ねてなかった??」
「気のせいでしょ」
チアガール達も、令治への熱が冷めたようだ。
「うーわ、なんか嫌なもん見ちまったぜ」
体罰、そして上部だけの情熱。拓人は美嶺高校
野球部に嫌悪感を抱いたようだ。
「な、美優…………」
「はぁ~~、あの打球音…………正に隆二ならではの
クオリティ…………」
頬を赤らめ、両手で覆い被せた美優が、
隆二のホームランに陶酔していた。
「そうだな。やっぱアイツはすげぇよ」
「うん!」
「お、1回の裏が始まるぜ」
「スリーストライク! バッターアウト!」
武三は、早速1人をアウトにした。
「…………」
(アイツは…………投手の令治って奴だったな。
ここは全力の出し時か?)
相手が放つただならぬ気迫に、武三は心機一転
した。
「オルゥア!!」
まごうことなき最速ストレート。
「雑魚が」
が、令治はそれを容易く打ち返した。軌道からして、
ホームランは確実…………
「出番だなっ!!」
突如隆二が真後ろの観客席側に駆け出した。
そして、観客席を阻む2.5mの壁の角を踏み込み、
更に高く跳躍したのだった。
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