現実でも無双する筋肉だるまDK
完全にギャグ回ですね
12話
とある高校のとあるグラウンド。大勢の生徒達が並んで
体育座りをしている。
「全員並んだな。今から50m走の試技を始める」
前3列のみ立ち上がり、それぞれ動的ストレッチを
開始した。
「位置について、よーい…………『パァン!』」
スタートと同時に1列目の3名は全力で加速し、
3名とも大体7秒前半でゴールをしていた。
しばらく平々凡々とした記録が取られ続け、
次の3名が登壇した時に、空気が変わった。
「本命…………来たか」
「デキスギvs盗塁王vs筋肉だるま」
「誰が勝つと思う?」
「デキスギじゃね?」
「ドベなら既に決まってるぜ」
「誰だよ?」
「筋肉だるまに決まってんだろ!」
座っている男子生徒にどっと笑いが広がった。
「…………」
が、当の筋肉だるま、金子隆二はそんなことには
耳を傾けず、今朝の事を思い出していた。
~回想~
「おっ、隆二! 今日の体力測定楽しみにしているぜ」
「ああ、せめて50mで盗塁王には勝とうと思うよ」
「何言ってんだ。デキスギだって抜けると思うよ」
「マジで?」
~回想終了~
「さてと…………やってみますかな」
「隆二、俺は今日のために50m走を極めてきた。
絶対に負けないぞ!」
盗塁王が勝利宣言してきた。
「2人とも、僕のことも忘れちゃダメだよ。
今回も1番になってみせるよ!」
デキスギも勝利宣言してきた。
「そうか。2人纏めてぶっ飛ばしてやるぜ!」
この声で2人の表情は引き締まり、後ろからは
ゲラゲラとした嘲笑が聞こえてきた。最も、この
3人には聞こえてなかったが。
「金子、お前は運動不足だから、怪我だけは
しないように抑えておけよ」
あろうことか、体育教師が無理するなと念を押してきた。
が、これは隆二の身体を気遣っているわけではなく……
(コイツ…………俺に負けて欲しいだけだな。どんだけ
ボディビルダーが嫌いなんだよ。それと俺は昨日
死ぬほど重てぇバーベルを挙げたばかりだ。誰が
運動不足だ!)
身も蓋もない言動に、怒りのボルテージがMaxまで
上がった。
「位置について、よーい…………『パァン!』」
スタートの反応速度は3名とも互角だった。
「うおおおおっ! 盗塁王! デキスギに勝t…えっ!!?」
男子勢は盗塁王を応援するも、何かを見た瞬間固まった。
「キャーー! デキスギくーーn…えええ!?!?」
イケメン・秀才・スポーツ万能のデキスギを応援する
女子勢も同じくである。
彼ら・彼女等が見たものとは…………
(行ける……! SAFで走っていた感覚で走れるぞ!)
金子隆二。圧倒的な加速力で、2秒後には2名と
大きく差を付ける。
「行けーー! 隆二ーーーー!!」
男子の少数派、拓人は全力で応援する。
3秒後、更に2名との差が開く。
「デキスギ君……負けちゃダメッ!!」
4秒後、隆二の加速力は落ちること無く、女子の
願いを壊さんとする勢いで差を開く。
「嘘だろ…………何であの使えない筋肉が1位に
なるんだぁ!!?」
5秒後、隆二は最後まで加速を止めず、
もはやゴール間近!
「『ピッ!』5.4!…『ピッ! ピッ!』5.9、6.0」
……結果
金子隆二 5.4秒
デキスギ 5.9秒
盗塁王 6.0秒
「信じられんが金子、お前がダントツでトッ……」
超珍しく、体育教師が褒めようとしたのだが……
「イデーーー!! 脚つったーー!!!」
"現実世界"では走ったことの無いフォームで
走ったからか、ゴール間際で盛大に脚を攣った
らしい。
「隆二、俺はお前が本当に出来る奴だと思っていたぞ。
よく頑張った!」
あからさまな手のひら返しに
「ハッ、おいおい、今まで散々ビルダーの俺をバカに
しといて、恥ずかしくな…」
体育教師の落ち度を指摘してブーメラン返しを
しようとするも……
「あ"あ"あ"あ"脚がぁあ!!?!?」
競技前の教師の発言が現実となってしまい、何とも
言い返し辛い状況になってしまった。
「金子君! 大丈夫かい? 僕の肩に掴まってよ」
「俺の肩にも掴まれ」
デキスギと盗塁王に助けられ、最後尾までゆっくりと
歩いていくことになった。
「す、すまねぇな……」
「気にしないでよ。それにしても本当に凄かったよ。
どんな練習したの?」
「あー、自分の身体能力をフルで使えるVRゲームで
全力疾走しまくったんだよなぁ~」
「VRゲーム?? まさかとは思うが2年くらい前に
開発されたSAFってゲームか?」
「そうなんだ。信じられねぇかもしれねぇがよぉ…………」
俊足3名で花のある話をしていた頃、野次馬達は……
「クソッ……あんなの見せつけられたらもう2度と
使えない筋肉ってバカに出来ねぇ…………!!」
「金子は使えない筋肉だから存在価値があったのに!」
悔しがる性格の悪い男子達と
「私は認めない! 全ての頂点はデキスギ様って
決まっているのよ!」
「そうよそうよ!!」
「頭脳の道先拓人も、身体能力の金子隆二も要らない!」
デキスギが負けた事を納得できない女子達と
「ね、ねぇ…………金子君ってよく見たら顔も
悪くないしさぁ…………」
「ちゃんと運動も出来るから、悪くは無いよね…………」
「うん……私結構好きかも…………」
ちょっと隆二に興味が沸いた女子達に派閥が分かれた。
「あ……れ……な…何で私……震えてるの…………??」
1名、何故か震えている女子が居たのだが。
因みにその後行われたハンドボール投げも、
隆二はボールをグラウンドの遥か彼方まで
投げ飛ばしたそうな。
~掃除時間~
「えっと、確か2階の音楽室前廊下掃除だったよな」
掃除場所が変わったので、早歩きで向かう。
隆二的には早歩きも有酸素運動なので、
出来れば控えたい。
「ありゃ、皆集まってら。遅れてゴメン、
俺は余りで構わねぇから、分担を決めようぜ」
遅れた身なので決定権を先に来た人たちに譲った。
「ヒッ!……あ……あっ……」
「あの~? どうかしたか??」
急に1人の女子が怯え始めたので、訳を聞いてみる。
「イヤーーー!!」
火事場の馬鹿力を発揮したとしか思えないスピードで
逃げ出した。
「…………どういう事だ?」
身に覚えが無さすぎて、首を傾げる。
「どういう事だはこっちの台詞よ!」
級友のただならぬ様子に、やはり疑いの目を
向けられた。
~自宅・隆二の部屋~
「…………的場さん。何で俺から全力で逃げるように
なったんだろうな??」
実はあの後も、武術を体験すべく、柔道部の
先輩に指導してもらいに弓道部の脇を通った
のだが、そこでも的場さんと遭遇してしまい、
今度は矢を放たれた上、逃げられた。
「あれは完全に殺す気だった。俺じゃなきゃ
死んでいたな」
残念なことに、脚の肉離れがまだ痛かったので、
追いかける気になれなかったのだ。
「明日聞くか」
今回は少し覚えた柔道の技を試すべく、SAFの
世界へと潜り込んでいった。
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