表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/241

海賊のファンと迷惑な海賊達

イベントの前兆、そして再び迷惑なあいつらが現れるっ!

116話


「うわー、すっげぇ数の船が集まってきてら~」


 見渡す限り青い海…………を、1面中埋め尽くすのは、

全て私掠船である。それらには、現実世界で生きている

人間が操るアバターが乗船している。


「この船一つ一つに大勢の方々が乗っている…………」

「全員、本物の黒ひげを名乗る海賊討伐に向かって

いるんだな」


 そう、ペリーズニュースで大々的に報じられた

黒ひげ討伐の報酬を求め、彼らは集まってきたのだ。


「おお…………あれはアグロフラッシュの船だ」

「本気だしたらさぞ速いのだろうな…………」


 たまたま横に並んだ船のユーザーから、自分達が

ゲーム内で有名な存在であることを指摘された。


「うふふ、私達すっかり有名人だね」

「ま、その分警戒されちまうけどな」


 ミューが有名人になったことに浮かれていると、

レイルが同時に着いてくるデメリットをさらりと

言った。


「デュフフッ! あれを見るどー!」

「おおっ! アグロフラッシュの真の女神と噂されるっ!」

「ミューたんだどぉーー!!」

「こっち見てー!」


 アレウスとは違い、体脂肪を蓄えることで恰幅を

良くした男達が、ミューに向かって熱い声援を

送っている。


「まぁ! ミューちゃんいつの間にやら人気者に

なっちゃったね!」

「…………何だろう…………素直に喜べない自分が居る」


 ミューは基本的に、自らに向かう好意は素直に

受け止めるタイプなので、男達の見た目が気に

入らない等の理由でこんな反応にはならない

…………筈だった。


「まあ…………人気は人気でも、ネタ人気だからなぁ」


 素直に喜べない真の原因は、ピカリンと撮影した

ルーチューブでドジをやらかした事が発端の、ネタ

人気による声援だという点だ。


「ま、人気無いより全然喜ばしい事だと思うぜ。

素直に喜んどけば、こっから更に人気出て楽しく

なると思うぜ」


 アレウスがミューの肩に手を置いてフォローした。


「…………そうだね。前向きに受けとる!」

「その調子だぜ」


 しかし、この様子を見たオタクたちは


「ア、アレウスさん~~、ミューたんに会える機会

なんてこれが最後かもしれませんくて~~」

「もー少し、じっくりと眺めさせていただきたいの

ですわ~~」

「ですので僅かでよろしいので、ミューたんから

離れては頂けないでしょうか~~」


「(殺気だしながらごますりするとか、お願いする

立場の奴の行動とは思えねぇが…………)…………いいぜ」


 アレウスは彼らが何故殺気を出しているのかは

分からなかったが、"殺気を出しているから自分が

そこに居るのが嫌なのだろう"と自分なりに相手の

心を読み、退くことにした。


「デュッホォーーー!」

「アザーーーーッス!」

「あ、イシュタルちゃんは差し支えなければ、

ミューたんの隣に来てほしいなぁ」


「これでよろしいですか?」

「えへへ…………」


 唐突にイシュタルがミューの腕に腕を滑り込ませた

ので、ミューは少し照れた。


「「「ウオオオオオッッゥゥウウウッ!!」」」


 そして男達は謎に狂乱した。内、1人は鼻血を

出したのか、強制的に現実世界に戻されている。


「ったく、2人の人間が並んだだけで、何で

あそこまで喜べるんだろうなぁ…………??」

「全くですよ…………」

「言われてみれば不思議極まりありませんわね…………」


 所謂オタク的感性を全く理解できないレイルの

感想に、オタク達から好意を向けられた2人も

同感だった。


「えー、何々? 何で嫌にうるさいの~?」


 イベントで人が大勢集まっているとはいえ、

それでも嫌にうるさかったので、マリリンが

様子を見に来た。


「お、丁度いいところに来たな。"ミューの隣"で

あの船の連中を見てみな」

「??」


 レイルが意図を察されないように、マリリンを

ミューの隣へ誘導した。


「ん!? ぬぼおおおおおっ!!」

「おおおっ! 我々の最強の女神はあの美少女で

ゴザルゥッ!!!」

「忘れてはならない最強の女神! ロリ神

マリリン様ぁっ!!!」


 そしてマリリンコールが始まった。彼女が

オタク男子の好意を受け止めるタイプかは

分からないが、こういう状況自体は嫌いでは

ないと思われる。


「…………」


 彼女のステッキに、巨大な火球が生成された。


「だ・れ・が! ロリ神よーーーー!!!!!」


 そう、最後のオタク男子の発言が、彼女の逆鱗に

触れたのだ。


「ストップ!! ルール違反で俺たちをBANする

気か!?」


 レイルがあわてて羽交い締めにする。


「だって! あいつら少しの風で吹き飛ばされるほど

小さい私の気持ちを考えずにあんなこと言うもん!」

「そ、そりゃお前にしかわかんねぇ事かもしれねぇ

けどよ…………」


 この様子はオタク達にも聞こえており…………


「あ、あり? 何か怒ってねーか?」

「ロr…マリリン神、何か癪に障ること言っちゃ…」

「だからロリとか言ってんじゃないわよーーーー!!!」


「「「ヒエエッ! 申し訳ありませんでしたで

ゴ・ザ~ル!!!」」」


 3人は息ピッタリで謝った。…………と、多くの

船ではこのように微笑ましい(?)友情が生まれて

いたのだが、一部そんな友情を引き裂こうとする

奴等が居たのだ。


『ドン!』

「何だ?」


 突如聞こえた砲撃音に、レイルが反応した。


「うおおっ!!」


 そしてアレウス目掛けて落ちてきた砲弾を、

彼は受け止めた。


「オラァ! 人様目掛けて砲撃する馬の骨は

何処のドイツだ!!」

「「「ヒィーーー!!」」」

「いや、お前らに怒ってねーだろ…………」


 やはり、アレウスが大柄で陽キャ(リアルでは

陰キャ寄り)だから、彼らからすると怖いの

だろうか…………??


「ヘッヘッヘ! ここであったが100年目!」

「お前達を倒すために、俺達は大海賊団を結成した!」

「名は、すべての終わり…………終末を意味する

ウィークエンド!!」


 SAFでアレウスに一番嫌われている赤髪の男、

中二病を走り続ける金髪男レオン、ミューの元

先輩であり、間違った知識ばかり教えつつ、

いつかは一緒になりたいと思っていたウィルソンが

中心の、迷惑ユーザー連合海賊団といった所だ。


「1つ、お前達は勘違いしているぞ」

「「「ああ!?」」」


 クラフトの指摘に、3人は声を荒げる。


「ウィークエンドの意味は終わりと結末の終末

じゃなくて、1週間の終わりの"週末"だぞ」


「「「何っ!?」」」


「まぁ、あんた達の場合、ウィークエンド

じゃなくて、"弱い"を意味する"ウィーク"の

方が合ってそうだけどね」


 普段良く滑るミューのギャグに


「「ブフォッ!?」」

「「「き、今日のミューたん冴えてる~」」」


 先輩2人は吹き出し、オタク達は感心したの

だった。


「テメェ…………おちょくるのもいい加減にs…」

「ウィルソンセンパーイ! 相変わらず戦士

レベル15なんですねー! 愛らしくてとても

先輩らしいと思いまーす!」

「ぬがーーーーー!!!」


 前回会ったときと変わらず、ウィルソンは

ミューの手玉に取られるだけであった。


「イシュタル! 今俺達に寝返ったら、リンチは

勘弁してやる。俺と愛し合おう」


 レオンはイシュタルを諦めきれないのか、

誘ってきた。


「メリットすら見えない勧誘はお断りですわ。

後、合図も出さずに奇襲する輩は反撃の許可を

得ていますので、私達にちょっかいをかける時は

"程度"をわきまえることをおすすめしますわ」

「!!!」


 事実上の反撃の姿勢を見せられ、ルーチューブ

動画でイシュタルの魔法を見ているレオンは、

顔を青ざめた。


「怯むな! 部下を肉壁にするなり工夫すれば、

格上相手だって勝てる!」

「とかいって、集団で俺1人にすら勝てねぇ

雑魚共が何言ってやがる」

「お前だけは許さんぞーー!!」

「あー、はいはい。せめて戦闘意思標示の花火位」

『ドドン!』


 等と言っていたら、大砲の弾を放ってきた。

勿論花火は上げるわけが無い。


「さて、軽く沈めようか。行こう、2人とも」

「「うん!」」


 カトラスで砲弾を斬断しつつ、2人と攻めに行く

姿勢を見せた。


「ぬおおおおっ! 女神達を危険に巻き込むなで

ゴザルゥッ!!!」

「何だ!? 邪魔するなデブ!!」


 そこへ、オタク達がミュー達を守らんと、

割り込んできた。


「ちょっ…………この程度大丈夫」

「ミュー、援護射撃よろしくなっ」


 アレウスはそう言って、イシュタルを抱えて

新たなる足場、オタク達の船へと跳び移った。


「ま、この距離なら本領発揮できて良いかな?」


 ミューはそう言って、爆破属性を纏わせた矢を放った。


「テメェら! 粉々にしてやるぞ!!」


 迷惑ユーザー達は、手始めに邪魔なオタク達に

砲撃を


「「「「「ぐあっ!?」」」」」

「させねーよ」


 しようとしたが、右手にイシュタルを抱えた

アレウスがピストル早打ちで、前方砲主5人を

瞬殺したことで防がれた。


「カッコつけやがって…………」

「降りてこい! タキオンスラッシュの

餌食にしてや……うわわわっ!!」


 レオンは紫電一閃で仕留めるべく、跳躍中の

アレウス達に威嚇をしたが、ミューが放った矢の

爆発でパニックになった。


「一発で消し飛ばすぞ。今だ!」

「はいっ!」


 アレウスがイシュタルを突きだし、イシュタルは

錫杖を突き出す。この動きによって、ただでさえ

全てを破壊する光線は、一発で船の全体を消し飛ばした。


「お疲れ、黒ひげ戦で邪魔される前に消せて良かったよ」

「結果オーライという状況だったね」

「2人の女神様もアレウス様もスゴかったでゴザル…………」

「アレウス様が彼女達に好かれるのも分かる気がするで

ゴザル」

「足手まといにならないから、着いていきたいでゴザル!」

「俺は良いぜ。けど、隊長に話聞かないとな…………」


 と、その時だった


「おーーい! アレウスーーー!」


 上空から声が聞こえてきた。

最後までお読みくださりありがとうございます!

ブクマ、評価をしてくださると励みになります。


1/9 今日の分は明日の深夜投稿になりそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ