光と獣の一騎打ち、ここに決する。
おさらい:アレウスとピカリンは、前後真っ二つに
なった船の後方で戦っております。前方は前話で
消し炭になりました(・∀・)v
114話
「ヘイヘイヘーイ!」
「あらよっとっとぉい!」
ピカリンがダガーを投げ、光に変えて光速で直進
させる技を、アレウスは悉く避け続けている。
「流石はアグロフラッシュの裏のリーダーと言われて
いるだけはありますねぇ~…………光速の連撃をここまで
回避し続けたのはあなたが初めてですよぉ!」
ピカリンは攻撃しながら、アレウスの回避能力を
称賛した。
「お褒めに預かり光栄ッス!(へぇ~、セケンでは
俺ってそんな認識なんだ)」
アレウスも、避けながら1つ返事を返した。
ピカリンの言うように、彼がここまで回避できた
要因は3つあった。
1つ目は、ピカリンの挙動を確実に目で追っている
こと、2つ目は、聞こえてくる金属音の高さから、次
に飛ばしてくるものが、ダガーなのか爆弾なのかを
把握していること。
「ふっ!」
アレウスは右斜め前に大きく動きつつ、身を捩った。
次の瞬間、最初に居た場所で小規模な爆発が起こり、
アレウスの右斜め後ろの床にはナイフが転がり落ちて
いた。
「食らえ!」
「隙あり!」
3つ目は、ピカリンが攻撃する度に、彼の行動
パターンを把握していたこと。蓋を開ければ単純な
攻撃故、パターンさえ読めれば接近は容易いのだ。
アレウスはピカリンの攻撃を避けつつ死角へ潜り込み、
カトラスを握った右腕を関節を外した上で最大限しならせ、
超音速の斬撃を繰り出した。
「ヒエエッ!」
ピカリンも情けない声を出しつつも、通常は絶対に
回避不可能な一撃を、"光の速度で移動する"ことで
回避している。
「そこだあっ!」
「わあっ!」
アレウスは、先程のピカリンの悲鳴が途切れる
直前の悲鳴が聞こえた方向を便りに、返しの一撃を
振り抜き、更には関節外しで左腕をピカリンが立って
いる上階に乗せて、ピストルを発砲した。
しかし、ピカリンはもう一度の光速移動で船尾の
手すりまで移動して回避した。
「逃すかっ!」
アレウスは、腕全体の関節を外すことで、約40cm
程リーチを傘増しして、2階の段差を両手で掴み、両腕
の関節を戻すための筋収縮を活かすことで、全身を家族
してピカリンの正面に躍り出た。
「チェックメイト!」
が、ピカリンはここ1番の集中力を発揮し、アレウス
が見えた瞬間に物体を光速射出した。
(爆弾!)
しかし、アレウスはこれも計算に入れていたようで、
光速化直前に、ピカリンの持ち物の1つが爆弾だと認知
したや否や、敢えて関節を外したまま、段差に掴まって
いた腕で身体を引き、紙一重で爆風を回避した。
「…………ダガーが向こうにある。避けられましたね」
計算していたのはピカリンも同様で、爆弾は床に置く
ことで、命中率を上げて毒入りダガーを首筋ではなく、
丹田…………即ち避けられた場合は、真っ二つに両断された
船の境目の手すりに刺さるようにすることで、攻撃後の
状況を一瞬で把握したのだ。
(ライトムーブ!)
ピカリンにしては珍しく、技名を心だけで叫んだ。
そして斜め上という微妙な場所に移動を行った。
『バキザクッ!!』
「手応えなし!」
そう、先程次の状況を声に出してしまったので、
そこを目掛けてアレウスのカトラスが一閃するからだ。
斜め上への移動は縦、横の斬撃を確実に避けるためで
ある。
袈裟懸けは角度次第で命中したが、これは最早
当たらないことを祈るしかなかった。
『トッ……』
「おるゥあ!!」
ピカリンが着地した足音に反応し、今度は壁の内側
から、滅多斬りを繰り出した。
「あわわ……わっ!」
2連続で光速移動を行い、今度は境目側へ移動した
ピカリンだったが、「あわわ」の声を聞き取られ、
ピストルを発砲されてしまった。
そしてアレウスは試合を終わらせに向かった。
「ヒヨって光になったが運の尽きィ! あんたの攻略法
は完全にマスターしたぜぇ!」
「うわわあっ!」
真っ直ぐと超加速を開始するアレウスに、ピカリンは
慌ててダガーを突きだした。
「無駄ッス!」
が、慌てたピカリンは首筋を狙うと踏んでいたアレウス
は、カトラスの面で首を隠し、光の反射を利用して逆に
ピカリンの肩にダメージを与えた。
「"何かに当たるまで直進する"光速移動で逃げ延びれ
ますかな!?」
そう言って、半月状に広がる飛ぶ斬撃『ハーフムーン
カッター』を繰り出した。
(上はダメだ!)
ピカリンは直感的に跳んではダメなことを理解した。
何故なら、跳んでから2階に光速移動したところで、その
直後に2階に斬撃を放たれることが分かっているからだ。
反撃でダガーを放っても、カトラスの一閃で真っ二つに
されるだけだ。
そこで彼が取った策は
「ヘヴンッ!」
マ◯◯ッ◯ス回避で地下1階に潜り込み、アレウスが
降りてきたところを迎え撃つ作戦だった。
「さあ…………来い!」
「こっちです」
「うわああっ!?」
が、ピカリンの予想とは裏腹に、アレウスは背後に
降り立った。
「最初に俺が登場したときの穴、再利用させていただき
ました~」
背後は海、ごちゃごちゃ物や壁にまみれた場所で
光速移動すると、移動可能な範囲内の最遠方であっても
カトラスの一閃で即死する運命が決まっている。
正真正銘、背水の陣だった。
「フッ…………西部劇の早打ちじゃあありませんが、
光速と音速(?)で、勝負s…」
『カチッ』
(あれ?)
何か聞こえたと思った次の瞬間、ピカリンの目の前が
真っ白になり、そこには先にやられたスタッフ達が立って
いた。
「やっぱこうなれば何とか出来るもんだな。何とか
勝ったぜーーーー!!」
そう、アレウスはピカリンが反応する前にピストル
を抜き、早打ちガンマンの名を体で表す一発を脳天に
おみまいしたのだった。
「おお、船に戻ってらぁ」
勝ったからか、自分達の船に戻っており、バケツを
両足で持ったカモメ達が、空から紙吹雪を振りかけて
いる。
「アレウス! よくぞ私達の仇を討ってくれた。恩に
着るぞ!」
ジャンヌはアレウスの両肩に手を落としながら称賛
した。
「へへ、副長のビーム反射剣術、役立ちましたぜ」
アレウスも海に潜る寸前に見た、ジャンヌの
剣の側面に光を当てて反射する技を参考にした
ことを伝えた。
「いやぁ、今回初っぱなからやられて悪かったなぁ…………」
「いえ、あのt…」
「そうよ! 仮にもグリムリーパーなら、1人くらい
暗殺してほしかったわ!」
マリリンがレイルに放った一言で一瞬、間が空き
「ゴ、ゴホン、ですがあの時レイルさんが受けて
くださったから、俺はマリリンさんとイシュタル
ごとダガーを回避できました。もし俺に飛んできて
いたら、あの時死んでいたのは俺でした」
「何せ光速だもんな。文字通り、見えた瞬間首が
無くなっているってことだ」
クラフトが付け足した。
「そ、そうねぇ。アレ君を救うことで勝利への歯車を
回したってことにしておくわ」
「ええ、マリリンさんも派手な奇襲、お疲れさまでした。
副長、イシュタル、クラフトも」
「まぁ、アレウスが居なければその奇襲も出来なかった
がな」
レオナルドはアレウスの派手な人間投擲を思い出し
ながら語った。
「半分はモンスター達がやりました。ウィント、
ウッディありがとな。そして隊長、俺が動きやすい
ようにカメラマンさんを倒してくださりありがとう
ございました!」
アレウスは、写したユーザーを止めれるカメラマンの
脅威を船の地下1階で何となく把握しており、レオナルド
によって討伐された時には、胸を撫で下ろしていたのだ。
「それを活かしたのはお前だ。礼を言うのはこちらだ。
ありがとう、アレウス」
レオナルドも立場を傲らず対等に礼を述べた。
「あの~…………」
「私達は…………」
殆んど活躍できなかった(ジェルマンの狙撃成功は
誰にも見えてない)2人が、気まずそうにこちらを
向いている。
「あー、えっと…………ジェルマンさん、威嚇狙撃
ありがとうございます! ミュー…………は…………」
「アレウス……君………………」
今回のミューは、壊れゆくマストから脱出した瞬間、
爆撃をもらって退場してしまった。
「爆弾の威力検証お疲れ!!」
「……………………」
5秒間、沈黙が流れた後
「な、なんか嬉しくないよぉぉおおお~~~~!!」
ギャン泣きしてしまい、アレウスは慌てて海賊風
ロングコートで彼女をくるむこととなった。
「…………隊長、今回ミューが活躍できなかったのは、
仕方ないことだったと思います」
「それくらいは分かっている。先読み抜きでは
回避不能だったのだ。たまたま運が悪かったと
いうことで、立ち止まっていないで先へ進もう」
レオナルドは、今回の戦闘で活躍できなかった
人物は不運なだけで悪くないと結論付けた。裏を
返せばこの勝利も偶然が重なったもの。
しかし、勝利を掴んだのであれば、船を先へと
進めるだけである。
最後までお読みくださりありがとうございましす。
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