表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/241

アグロブーメラン

速攻VSライトニング…………

112話


「ピカリン様…………ユニークさは日本トップクラス

ですが、お強さはどれ程のものでしょうか?」


 イシュタルは真剣そうな表情で、船首にハゲ鷹が

型どられた金ぴか船を見ている。


「う~ん、以前はディノニクス相手に遁走(とんそう)して炎上

してたけど、この1月半でスゲー強くなっていても

おかしくはねぇな」

「それとな、対モンスターに弱くても、対人も弱い

とは限らねぇぜ」


 アサシン系上級job・グリムリーパーになった

レイルが話しかけてきた。


「と、言いますと?」

「例えば俺、バカでかいモンスター相手だと、まず

殴り合いでは勝てねぇし、急所にも得物が刺さら

ねぇから相性が最悪だ。だが、対人戦なら急所は

得物で刺し放題。何なら物陰から相手が気づかない

内に刺し殺すことだって可能だ。例え真正面からの

斬り合いで勝てっこなくてもな」


 イシュタルはその話を聞き


「今の話だと、レイル様は私にとっての天敵と言って

差し支えありませんわ…………」


 少し戦慄してしまった。


「ま、確実に殺せるのは気づかれていない状態の

時だけだし、それこそ巨大モンスターにとっては

イシュタルが天敵だろうから、三竦みって表現が

あってそうだな」


「しっかしガチな準備をしたものですね~」


「ん~、何か嫌な予感がするんだよ。例えば開戦と

同時に」


 レイルは音を立てずに一瞬でマリリンの

背後を取り、


「気づく間もなく()られる。みたいなことが

あるんじゃないかと」


 首筋にダガーを()えながら語った。


「…………レ~イ~ル~、後で丸焼き黒っ焦げ、四肢(しし)

爆散(ばくさん)の刑に処してあげるわぁ~~~」

「…………ダガー当てただけでそこまでする?」


 と、その時、2隻の中央に配置された発煙筒から、

開戦の花火が撃ち上がった。


「さぁて、まずは接k…」

『ブシャッ…………』


 レイルがこれからの動きを考えていると、まばゆい

光が見えた。同時に、彼の首筋にはダガーが刺さって

おり、鮮血が飛び散った。


 そしてその身体は死亡した証明をするが如く、消滅

した。


「いやああああっ! レイル様!?」


 突然のレイルの死に、イシュタルが錯乱(さくらん)状態に(おちい)った。


「こぉんの、ど阿呆(あほ)ーーーー!! 開幕早々に(なぁに)フラグ

回収しとんのじゃーーーーーーー!!!!」


 マリリンは逆に、怒りで冷静さを失っている。しかし、

彼女達が冷静さを失ったお陰で、この男は冷静でいられた。


「しゃがめ!」


 叫び散らす魔法系女性2人を強引にねじ伏せ、甲板に

這いつくばった。それとほぼ同時に、敵船と自分達の

延長線上にあるマストにダガーが3本刺さった。


「ハッ、アタシとしたことが! 助かったわアレ君」

「ありがとう!」

「礼は後ッス。次は前にほふく前進!」


 アレウスは低い隙間を通る猫のような動きで、素早く

手すりまで前進した。2人もアレウスの動きに吹き出す

のを我慢しつつ、顔を合わせて苦笑いしてから後に着いて

いった。


『ボゴォン!!』

「くっ! マストがやられた!」

「ジェルマン先輩! 離脱ですっ!」


 狙撃主としてマストの上に居たジェルマン、ミューが、

倒れ行くマストの上から飛び降りた。


(まぶ)s…へ??」

『ボゴォン!!』


 ミューが光を知覚した瞬間、胸の上の辺りに爆弾が

出現しており、コンマ1秒で爆発した。ジョン少年に

爆薬を食らわされた時より顔面に近かったからか、

即死だった。


(かたき)は取るぜ!」


 相手の攻撃をある程度把握したジェルマンは、空中で

ライフルを構え、超遠距離投擲を行っていると思われる

ピカリンに狙いを定めた。この分野が得意なのは、彼も

同よu…


「嘘っ!? ジェルマンまで!」


 ピカリンの方が何枚も上手だった。ジェルマンの

首筋にはレイルの時同様にダガーが突き刺さっており、

即死していたのだ。


「無防備なミューには威力の高い爆弾、狙った直後に

瞬殺してくるジェルマンさんには、早く刺さるナイフ

…………相手、撃ち分けてますねぇ…………」


 アレウスは、攻撃者が敵の状態を把握して攻撃手段を

変えている事を推察した。


「うおおおっ!!」


 面積の広いシールドを使っていたクラフトが、驚愕の

声を上げた。


「お前が慌ててどうす…………無理もねぇな」


 何と、クラフトの盾には車輪が着いた大砲が

密着していたのだ。この距離を飛ばしてきた以外に、

この現象は考えられない。


「けど分かったぞ! 相手は光の速度で物体を"移動"

させている!」


 そう、眩い光が見えた瞬間にダガーだの爆弾だのが

当たっているのは、それらが一瞬にも満たない光速で

到達しているからだと言うのだ。


「けどおかしい! そんな速度でダガーを投げたら、

断熱圧縮で溶けるだろ!」

「それどころか宇宙を(つかさど)る物理法則が壊れることに

なる。だけどそうはなってない! 何故なら、相手は

物体を"質量の無い光子に変え、何か質量のある物体に

当たったら元に戻る魔法"を使っているからな!!」


 つまり、ダガーを光に変える→光は直進する

→人間の首に当たる→光がダガーに戻る→首筋に

ダガーが刺さる。といった事が起きていたのだ。


「まず回避は不可能! 幸い隊長、副長は生き残って

いる。伊達にギルドを引っ張っていないよ…………」

「そりゃ良かった! けどよ…………光が飛んでくるなら、

せめて跳ね返す位はしてぇよな…………」

「それだ! アレウス、これで"反射"しろ!」


 クラフトは半透明のシールドを、フリスビーの要領で

投げて、アレウスに渡した。


「…………な~るほd…」

『ボグォォオオン!!』

「きゃあああっ!!」

「アレ君、何とかして!!」


 船の手すりが爆ぜ散り、3人の姿が相手から丸見えに

なった。


「さぁ、撃って来やがれ!」


 アレウスはしゃがんでから僅かなタイムラグを

設け、ミラーシールドを構えた。

最後までお読みくださりありがとうございます。

ブクマ、評価をしてくださると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ