爆撃大脱出決行
船長の霊に憑かれた幽霊艦隊…………
そこから脱出だ!
105話
『ぐおおおおおおっ!!』
人魚姫は部屋中を旋回する激流を巻き起こした。
「わあっ!?」
泳ぎ始めてまもないスパロウは、たちまち流れに
さらわれる。
「スパロウさん!」
すかさずブルーがスパロウを抱え、安全圏に
避難した。
「アリガトウ。って来るっ!」
人魚姫がマグロ並みの速度で突撃してきた。
「この程度平気だよ。だから反撃の方法を考えよう」
「ワカッタ」
ブルーは人魚姫を容易く回避し、スパロウに
笑顔を見せながら解決策を考え始めた。
「人魚姫ハヤイ。だから動きトメタイ」
「動きを止める…………スパロウさん、糸って
水中でも出せますか?」
「出せるよ! あ、ネバネバのヴィスケス
フレイルは流石にムリ」
「普通の糸で十分です。何とか接近しt…」
「それだったら!…………」
「…………わかりました。やりましょう!」
何かを打ち合わせた2人は、人魚姫を
挑発するように周囲を回り始めた。
『グギャアアアッ!!』
今度は全身を旋回させつつ体表に激流を
纏いながら突撃してきた。
「今ですっ!」
「スパイダーネーット!!」
ブルーが紙一重で回避を行い、スパロウが
糸による捕獲を行う。連携としては完璧だった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
人魚姫の回転速度を計算に入れ忘れ、自分達まで
回転したことを除いては
『グギャアッ!!』
人魚姫は網の間から水流の槍を飛ばしてきた。
「フェイスネット!」
スパロウは両掌に糸の面を
展開し、槍をガードした。
「水衝拳!」
『グオオオオッ!!』
ブルーはその隙に衝撃を纏った拳を放った。
『…………ゴフゥ』
どうやら全身に衝撃が回ったらしく、彼女を
操っていた霊力は抜けていった。
「ブルー、今の動きナイス」
スパロウはこの動きを評価したようで、
かなり明るい表情で褒めた。
「あ、ありがとう…………上手く傷つけずに悪霊を
追い払えたのも、君のお陰だよ。こちらこそありg…」
「アブナイ!」
褒められて喜んでいたブルーだったが、唐突な
木片の飛来に気づいてなかったので、スパロウが
突き飛ばした。
「敵陣、常にシュウチュウ!」
「重ね重ねありがトォウ!?…………ございます」
1、2秒毎に木片が飛んでくるので、ガードや
回避に精一杯だった。
「ブルー! どうなってるの!?」
「分からない…………けど、人魚姫様と関係ありそうです!」
「皆は…………アレウスは…………」
~クラフトサイド~
「やはり外に出ないと埒が明かない!!」
「狙い撃ちは出来ても、私の矢じゃあ人を通す穴を
作れないわ…………」
「あっ、ミューちゃん、私の魔法を弓に纏わせれば!」
「それよ! クラフト!」
「ガードは任せろ!」
「ダブルボム!」
イシュタルが背後の壁を大規模に粉砕し、
数秒間のみ後方の安全を確保した。
「さぁ、受けてやるぜ!」
クラフトの雄叫びと同時に、木材や貴金属等が
飛んできた。クラフトは背後の2人もカバー
するようにガードを繰り返している。
「補填完了!」
「行くわよっ!」
ミューが放った矢が着弾した瞬間、矢の先端が
爆発を起こして壁に大穴が空き、その次の瞬間、
矢の尾羽根から爆発が起きることで再加速した。
「なるほど、鼬ごっこで出口を作るわけだな」
この発想にはクラフトも感心した。
「だけど出口まで魔力がもつか分からないわ」
「だからもう2発ほど打つのよ」
ミューは更に2本の矢を放った。
『バグォ!!』
「「うわあああっ!!」」
突如背後から壁が根こそぎ砕けた音が聞こえて
きたので、ミューとイシュタルが悲鳴を上げた。
「よぉ! 3人揃って無事で何よりだぜ!」
「アレウス!」
破壊者の声を聞き、クラフトは嬉しそうに
返事を返した。
「あれ? スパロウは?」
「分からないわ」
「いっしょじゃありませんの??」
「…………つまりブルーと居そうだな」
そう考えたアレウスは…………
『スパロウ!!! カモーーーーーン!!!!!』
この場の全員の鼓膜が破れかねない声量の
声を張り上げ、"帰還"を命じた。
「…………レウスーーーー!!」
遠方からスパロウの声が聞こえてきた。そして、
大量の木材を引き寄せながら、ブルーにしがみついた
スパロウがやってきた。
『バギボギボキ!!』
「ここは野郎共で止める! ガールズはスパロウ達の
援護だ!」
「うん!」
「既にイシュちゃんのチャージは完了! っよ!」
ミューが6発の弓を連射し、スパロウ達を
襲撃する木材を消し飛ばした。
「よおおおし!穴から抜けるぞぉ!!」
アレウスの号令と共に、アレウスを除く人間
3人組は腕を伸ばしたウッディによってパチンコの
要領で外へ飛ばされた。
「フラッシュも頼むぜ!」
ウィントはフラッシュに乗って脱出した。
「ブルーこっちだ!」
「アレウスさん!」
「アレウスー!」
人類最速の倍ほど速いアレウスに、ブルーは
追い付いていき、全員無事に脱出成功した。
「こいつぁ…………」
眼前には、浮遊しつつある砕けた沈没船が
佇んでいた…………
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