始まりの鐘
私に意識が芽生えたのはいつからだろうか。
つい最近?
いや、もっと前からだろうか?
気づけば試行錯誤し、過酷な生存競争を生き抜いていた。
ある時は、同じ種族を。
ある時は、天敵を。
罠に嵌め、奇襲をおこない、そうして策を弄して生き抜いてきた。
私が何者であるかという問いに対しては、こう答えるしかない。
蛙の魔物…それが私である。
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天井に張り付き、その獲物を観察する。
石よりも硬い真っ赤な鱗、口の上下からは鋭い牙が生え、足から生えた爪は空気すらも切り裂きそうな程に鋭い。
さらに尻尾は以上に長く、途中から四つに裂け、全てが爪のように鋭く、鈍い光を放っている。
さらに厄介なのは、多眼故の視野の広さだ。
あれでは死角がほぼ無いと言っていい。
さらに彼はこの洞窟を縄張りとし、長い年月を生きている竜種…
間違いなく知能も高い。
なんとも厄介な私の記念すべき1万匹目の獲物だ。
ため息がでてしまうがそれでも興奮を隠しきれない。
心臓が異常な程、早く強く私を叩きつけてくる。
これから始まる死闘を我慢できないかのように。
『さあ…やろうではないか。
私が死ぬか君が死ぬか…生を賭けた勝負の時間である!』
天井から手を離し、竜種の目前へ音も立てずに着地をする。
すると多眼が一斉にこちらに向かれ、ピリピリとした空気が辺りを包み込んでいく。
(やはり強いな…