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黄昏の終わりと始まりの世界《ステラ》  作者: ガイハ
銀の姉妹
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動き出す者達

「おっ、さっきより動きがかなり良くなったね」

レイティアは風の斬撃を飛ばしながら呟いていた。

フィデスとリューネは次に駆けてくるときリューネが一歩先を走りレイティアが飛ばした風の斬撃の尽くをはじき後ろのフィデスを守りながら接近してくる。

そして肝心のフィデスは何故か目を瞑り剣を腰の剣帯に収めたままリューネの後を走ってくる。

「今度は楽しめそうかな」

フィデスから発せられている微かな魔力を感じ取ってレイティアはそう言い槍を薙ぐ速度を一段階上げた。

それと同時に風の刃を弾き続けていたリューネは徐々に早くなる風の刃に捌ききれなくなっているのを感じていた。

「くっ、フィオ。もうそろそろきつくなってきた、いけそう?」

その間にもリューネの右足を風の刃が掠める。

「ああ、もう準備出来た。後は間合いに入るだけだ。ただ、済まない。この魔法は間合いが狭いから、近づかなきゃ当てられない。槍の直接攻撃も数発防げるか?」

それを聞いてリューネは最後の気力を振り絞り【身体能力強化(アース)】の出力を上げる。

「良いよぉ〜、任せて」

そう言ってリューネはフィデスより一足分前に走り槍の横薙ぎを受け止め、ニ撃目の突きを体を捻って躱し、横から槍を剣で弾き

「フィオ、お願い!」

と言い横に飛んだ。フィデスは心の中でお礼を言いフィデスも【身体能力強化(アース)】の出力を上げる。

「ああ、任せろ!」

フィデスが目を開けるとその瞬間メイヴを差している剣帯が赤いオーラのような物を纏う。

レイティアは珍しく興味がわいたのか、少し楽しそうな顔をしている。

「へえ、初めて見るね。あれは・・・魔力光かな?」

「【紅閃(ルミナス)】」

魔法名を口にしたと同時にフィデスは常人には視認できないほどの速度で赤い魔力を纏った剣を一閃させた。

しかし、レイティアは常人とは違いアリシディア学園『深層へと至りし者たち(オーダー)』の最高位。この一撃をも視認していた。

だがここまで協力して接近し放たれたのがただ魔力を纏っただけの斬撃だという事に訝しさを覚えたレイティアは最大威力の【身体能力強化(アース)】を発動させ迎え撃った。レイティアの最大出力の【身体能力強化(アース)】の強化量はバトル中に常時発動しているのに比べて約5倍。レイティアの全力の一撃。観戦しているハクアでさえレイティアの勝利を疑わなかった。

しかし一瞬の均衡の後吹き飛ばされたのは・・・レイティアだった。フィデスの一撃は大地を震撼させ、レイティアだけでは収まらず、切り払った方向全てを空気ごと吹き飛ばした。

「嘘っ!」

観客席で見ていたハクアは余りの威力に驚きのあまり思わず叫んでしまった。

「おぉ~、すごいねぇ」

フィデスの少し後ろで見ていたリューネは感心したように吹き飛ぶレイティアを見る。

レイティアはかなりの速度で吹き飛びアリーナの壁に衝突した。

「や、やったか?」

フィオは膝をつき息を荒げながら言う。そこへリューネが駆け寄ってくる。

「すごいねぇ、あれがフィオの隠し玉?」

爽快だったのかリューネには珍しく少し興奮しているように見えた。本来、【魔術黙示録(ライブラルマギ)】に載っていない魔法の詮索はするべきではないのだが、興奮したリューネの頭からそんなことは完全に消失していた。しかしフィデスの方も特に秘匿するつもりもないのかあっさりと種明かしをする。

「ああ、【紅閃(ルミナス)】。好きな量の魔力を剣の一撃に込めて解き放つ。一撃しか放てないが一撃だけでも結構強力だぞ。でも今のは、結構やばかった。この魔法、まだ完全習得してないうえに今の一撃で魔力空になったし、ティリュがレイティアの攻撃を防いでくれてなかったら成功しなかったからな」

実際フィデスの残存魔力はもうほとんど残っておらず、これが成功しなかったら打つ手がない状態だった。

「そっか、役に立ったんなら良かったぁ」

「ああ、ティリュのおかげだ、ありがとな」

レイティア相手に善戦できたことで少し嬉しくなっていたフィデスは自然にティリュの頭に手を当てて撫でる。するとリューネは無邪気な可愛い笑みを浮かべ、フィデスの方を見る。フィデスは花が咲いたようなその笑顔に一瞬ドキッとしてしまった。

「えへへ~。相変わらずフィオは撫でるのが上手いねえ。妹さんでもいたの?」

唐突に投げかけられた疑問にフィデスは

「いや、妹はいない」

一瞬頭に針で刺されたような痛みがはしるが気にすることなく答える。しかしリューネはフィデスが言った妹は、という部分に疑問を持ち質問をつなげる。

「という事はお兄さんとかお姉さんとかいたの?」

「ああ、姉さんがいる」

フィデスは唯一()()()()()姉のことを答えた。頭痛が強くなり顔を一瞬しかめたがすぐに笑顔に戻すとリューネに悟られないよう答える。

「そうなんだぁ。お姉さんはペンタグラムにいるの?」

しかしリューネは気づく様子もなく質問を続ける。

「いや、ペンタグラムにはいない」

「そうなんだぁ、いつか会ってみたいなぁ」

フィデスは一舜悲しげな顔をしたように見えたが、すぐにいつもの顔に戻るとリューネに苦笑する

「まあ、そのうちな。それよりも今は、魔力も少し回復してきたし、レイティアの様子を見に行かないか?」

と言い話題を模擬戦の方に戻した。

「これは正式な模擬戦じゃないから、レイティアが気絶していれば勝ちってことで良いのか?」

フィデスは思い出したようにルールを確認する。

正式な模擬戦であればライフゲージを削り切った者が勝ちというルールになるのだが、今回は普通の模擬戦と異なりレイティアが手続きを踏まず勝手に空いているアリーナを使い行っている模擬戦なので、当然ライフゲージなど出現するはずもなく、勝敗条件が曖昧になっている。

「うん、多分ね。正直今の一撃がダメだったのならもう打つ手ないよぉ~」

リューネは軽口をたたいているが顔には疲労の色が濃く出ている。フィデスも魔力を使い果たしているので人の事を言えた義理ではないが。

二人は疲労を隠しメイヴを構えなおすと、じりじりと土煙が舞っているほうへ歩いていく。しかし歩き始めてすぐ、聞きたくなかった声が二人の耳に入ってくる。

「いやぁ、今のは危なかったぁ」

土煙の中から無傷のレイティアが少し嬉しそうな顔で出てきた。

二人はあまりの規格外さに、驚きを隠せない。

すると、レイティアは笑顔で二人の方を見ると

「今のはすごいねぇ、フィデス君。初めて見る魔法、流石主席だね。今年は今までの新入生と比べても最強クラスだねぇ」

フィデスは褒められ喜ぶべきところなのだろうが、フィデスの意識は別のことに囚われていた。

「レイティア、なぜ無傷なんだ?直撃して壁に衝突したはずなのに」

フィデスがあり得ないといった表情で尋ねるがレイティアは「ん?」と言うと特にごまかすこともなく答えた。

「そりゃあ勿論、確かに驚きはしたけど風で自分を覆っておけば何ともないよ。まぁ、今のは魔法の構築、結構ギリギリだったんだけどね」

その答えを聞いたフィデスは自分の見立てが甘かったことに今更ながら気づいた。フィデスはいくら学園最強とはいえ、今年の主席である自分が本気でやれば勝てはしなくとも傷くらいはつけられると思っていた。フィデスは改めて懸絶した実力差を感じていた。

「一つ質問いいか?」

しかしフィデスにはどうしても確認しなければいけないことがあった。

「今のタイミングでレイティアと同じように、無傷でいられる人は何人くらいいる?」

レイティアは少し考えると、直球に答える。

「うーん、今のは多少良かったけど狙いが単純かなぁ。一撃しか放てないんだったらもう少し工夫して斬らないと。今のくらいだったらちょっと前にフィデス君が戦ったデイトリウム先輩だったら多分防げないと思うけど【深層へと至りし者たち(オーダー)】であれば全員無傷でいられると思うよ。もし本当にそれで勝負を決めたいなら一撃だけしか放てない魔法なんて欠陥魔法だよ」

フィデスはレイティアが無傷だったことから薄々予想はしていたが予想よりもかなり多くの人に防がれるという事実にフィデスは自分が未熟だという事を改めて思い知った。

「そうか、まだまだ遠いな」

フィデスは一瞬物思いにふけるが、自分の顔を二回たたいて気合を入れなおした。

「確かに聞かなかったみたいだが、まだこの勝負は終わってない!」

「・・・うん!」

それに答えるようにリューネも力強く頷く。

そして二人はメイヴを構えるがレイティアは時間を確認すると少し申し訳なさそうな顔をする。

「ごめんねぇ、もっと相手してあげたいんだけど、私この後予定あるんだよね。二人の実力も図れたし。だから、私の予想をいい意味で裏切ってくれた二人にご褒美として少し本気を見せてあげよう。死なないように頑張ってね。【能力開放(アビリティリベレート)】!」

するとレイティアの周囲に風が吹き始め杖全体に光の線が走り杖の先端の宝石が淡い緑色に輝き始めた。

二人は感じた魔力を本能的にまずいと認識したのか即座に防壁魔法を構築していた。

「ふふっ、いくよ。切り刻め【臨界を裂く(キランクレッド)開闢の刃(フェアリース)】!」

「【重装守護結界(ファランクス)】!」

「【結晶壁(クリスタリア)】!」

フィデスは二人の周囲にドーム型の守護結界を張り、リューネはその上を結晶で作った壁で覆った。

その直後全方位からレイティアが飛ばす風の刃の数十倍の威力の風の刃が無数に襲い掛かった。リューネは結晶の壁の強度を残り全ての魔力を使い数倍にまで上げるが

「だめっ、もう持たない!」

数秒ほどで破られてしまう。

残りはフィデスの守護結界だけとなったがそちらも数秒と持たずひびが入り始める。

「無理か、仕方ない。これはしたくなかったけど」

この魔法が後、保って20秒だと判断したフィデスはハクアの首に手刀を入れ気絶させると

床へ横たえ、ハクアが入るギリギリまで範囲を狭め強度を数十倍にまで上げる。

「これで魔法が切れるまでは持つな。さて、あと30秒、耐えきってやる」

観客席の方から静止するような声が聞こえるがフィデスの耳には入っていない。

一秒に4、5発のペースで襲い来る風の刃を致命傷にあたるものだけを的確に弾いていった。

しかし、ただでさえ弾くのが困難なほどの威力と速度の風の刃を【身体能力強化(アース)】を使っているのが限界なフィデスに防ぎきれるわけもなく、フィデスは10秒立つ頃には全身切り傷だらけになっていた。

「これは後20秒持たないな。すまん。ティリュ、シア」

風の刃を弾きながら呟く。

その間にもフィデスの体には傷が増えていく。そして、意識の途切れかけていたフィデスは致命傷になりうる風の刃を一つ打ち漏らしてしまった。

「マズいっ!」

その刹那、風の刃が霧散した。

不思議に思ったフィデスだったがそれを気にしている暇などあるわけもなく、襲い来る風の刃を弾き続ける。

そして永遠にも感じる30秒を乗り切ったフィデスは全身傷だらけで肌のほぼすべてが赤黒く染まっていた。

「フィオ!」

ハクアは観客席から飛び降りると【身体能力強化(アース)】を使いフィデスに駆け寄ると、倒れかけたフィデスの体に抱きついた。

「ばかっ、ばか、ほんとにばかぁ!ごめんね、巻き込んじゃって。ごめんね・・・助けに行けなくて」

そのまま、ハクアはフィデスの胸に顔をうずめたまま泣き続けていた。

数十秒たったころ、フィデスは少し泣き止んだのを見て

「すまん、少し、座っていいか?」

「グスッ。ご、ごめんね、大けがしてるのに立たせちゃって」

「いやっ、良いんだ。心配かけて悪かったな」

フィデスは目元が少し腫れているハクアの頭をなでる。すると突如、ハクアの顔に薄っすらと紅がさしていく。ハクアはフィデスから視線を外すと誰にも聞こえないほどの声で呟いた。

「本当よ・・・ばかっ」

「ん?なんか言ったか?」

「何でもないわよ。フィオはそこで座ってて、私ティリュの様子見てくるから」

何を言われたのか分からず不思議そうな顔をしたまま座るフィデスを一瞥するとひらひらと手を振っていってくるという合図を送った。

「ああ、頼んだ」

そう言ってフィデスは不思議そうな顔をしたがすぐに黙ると、座り込んだ。

ハクアは気絶しているティリュの方に近寄ると、フィデスによって昏倒されたリューネを揺らして起こす。

「ティリュ、起きて、起きて」

すごい勢いで揺さぶられリューネは目をさますと寝ぼけているのかボーとした声を発する。

「ん、ここはぁ?」

リューネは徐々に意識を覚醒させると真っ先にハクアに詰め寄った。

「あ、そうだ、シア、フィオはどうなったの?フィオは?」

「大丈夫よ。傷だらけだけど、今座って休んでるわ」

ハクアはすごい勢いで詰め寄ってくるリューネを抑えると、フィデスの居場所を教え、落ち着かせる。

「フィオっ!」

しかしリューネには逆効果だったのか、リューネは凄い勢いでフィデスの方に走って行ってしまった。

ハクアは二人とも無事だったことにホッとして元凶であるレイティアのほうを睨む。

しかし、レイティアは反省する様子もなく未だ薄っすらと笑みを張り付けたままハクアの方を向いていた。

「姉様、これで満足ですか?」

ハクアはレイティアに苛立ちを込めそう告げるが、当のレイティアは特に反省する様子もなくひょうひょうとしている。

「何の話?」

「とぼけないでください、あの魔法途中で止めようと思えば止められたはずです」

ハクアが不満を隠そうともせずぶつけると、レイティアはさも当然かのように否定をする

「でも、途中で止めたらあの子たちの限界が図れないじゃない」

「ふざけないで下さい!一歩間違えたら死んでいたんですよ」

「まぁ、もし死んじゃったら、あの子がその程度で途切れる運命にあったってことじゃない?」

ハクアはレイティアの滅茶苦茶な言い分に苛立ちがたまっていくのを感じていた。

「っ、いい加減に・・・!」

「そんなことより、もう行っていい?私これから大事な予定が入ってるんだけど」

レイティアがそう言った直後、ハクアは少し俯くと聞こえないほどの声で何かをぼやき始めた。

「・・・けるな」

急に声が小さくなったハクアにレイティアは聞き取ることができず問い直す。

「ん?」

「・・・ざけるな」

「何?もう少し大きな声で言ってくれないと聞こえないんだけど?」

「ふざけるなって言ってんのよ!【土槍(アーススロース)】!」

ハクアは怒りの容量が限界を超え、敵わないとは分かっていたが全力でレイティアに魔法を向けた。

ハクアの周囲に10程の土の槍が出現する。

「いつも、いつも、何様のつもりよー!」

ハクアが叫び、手をかざすと、すべての土の槍がレイティアに向けて襲い掛かった。

レイティアは土の槍をあえて避け、舞い上がった土煙の中に入ると

「怖い、怖い。じゃあ、お姉ちゃんは退散しようかな」

と言い、それ以降レイティアからの声が途切れる。

「っ、待て!」

ハクアは咄嗟に風魔法を発動し土煙をなくすが、その時にはレイティアの姿は完全に消えていた。

「絶対に今度会ったら・・・。でも、それよりも今はフィオを病院に連れて行かなきゃ」

ハクアは血が滲むほど拳を握り締めたが、直ぐに今やるべきことを思い出し、フィデスの方に走っていた。

「フィオっ、しっかりしてよぉ、フィオっ、フィオっ!」

しかし、そこには泣きながらフィオの体を揺さぶっているリューネの姿があった。

リューネはハクアを見つけると泣きそうな顔で訴えてくる。

「シア。フィオが、フィオがぁ!」

ハクアはさっき話した時にどうして気づいてあげられなかったのだろうかと悔やんだ。

フィデスはとっくに生命が危うい状態にまでなっていて、立つとか座るとかの状態ではなかったのだ。

「ごめん…なさい。私が、もっと早く気づいていれば」

「フィオっ、フィオお」

隣ではリューネが泣きながらフィオの体を揺さぶり続けている。

ハクアは後悔の念に苛まれたが、自分がやらねばと、涙を拭い画面を開くとイディスに連絡をとった。

『どうしましたか?ハクアさん』

画面の向こうでは両肘を机につき書類とにらめっこをしているイディスの姿があった。

「イディスさん!同じクラスのフィデス・オービット君が致命傷を負って意識を失っています。緊急転送魔法陣の使用許可をお願いします!」

イディスはその言葉を聞き書類を机に置くと少し考えるようなしぐさをしてから答えた。

『っフィデスが!了解しました。緊急転送魔法陣の使用を許可します。私も今から病院に向かいますので、病院で事情の説明をお願いします』

「はい、分かりました。ありがとうございます」

そしてハクアは緊急転送魔法陣の使用許可が取れたことに少し内心で喜びながら通信を切ると未だに泣きそうな顔をしているリューネに向かって指示を出す。

「シア、今緊急転移魔法陣の使用許可をとったから、三人で行くわよ」

リューネは少し戸惑いながらもハクアの言ってる意味を理解する。

「う、うん」

そして2人は力が入っていないフィデスの両腕を片方ずつ支えるとアリーナ中央にある緊急転移魔法陣に歩いて運ぶ。

そしてフィデスを魔法陣の上に乗っけると

『『縮小座標入替(ファストテレポート)!!』』

と叫び、魔法陣の中へ消えていった。

_________________________________________

「危なかったけど、間に合った!」

夕日が沈み闇が空を覆いつくそうとしていた。

「明日の事考えると使っていい魔力の残量ギリギリだったわ。あの3人だったら切り抜けられるでしょう」

レイティアは誰に言うわけでもなく呟いた。少しだけ沈まずに残っている夕日が男たちの上に立つレイティアの顔を薄っすらと映し出していた。

「私は・・・どうかしらね」

レイティアはそう言うと、周囲に倒れている男を一瞥し闇に溶けて行った。

_________________________________________

闇に包まれた森。一人の大柄な男性が簡易な椅子に座り、立っている男たちに話をしていた。

「何、偵察部隊の通信途絶だと?またあいつか。あいつにも困ったものだ。仕方ない。出来ればこの手段は取りたくなかったが、あの娘を次期当主にするためだ。明日、全部隊を使い、始末する。標的は・・・レイティア・リーフェンシアだ!」

そうして夜は更けていった

_________________________________________

少し時は遡る。フィデスを運び込んだハクアとリューネはイディスに事情を説明していた。

「これは酷い。誰がこんな事を?」

イディスはフィデスの傷の惨状に驚き、手で口を覆ってしまう。

ハクアは少し言いたくなさそうに重い口を開く。

「レイティア・リーフェンシア、私の姉様です」

するとその名前を聞いたイディスはため息を溢してしまう。

「また、あの先輩ですか」

するとハクアは姉が自分に関係のない人たちに対して何かの事件を起こしているという事に意外感を覚え、思わず聞き直してしまう。

「またって、そんな何回も問題を起こしてるんですか?」

「はい、あなた方が入学してきてから既に2件。両方高等部2年の男子で路地裏で普通に話をしていたところを襲われたそうです」

イディスは頭が痛いとでも言うように頭を押さえため息をつく。ハクアはイディスから聞かされた事実にだんだんレイティアという人を見失いつつあった。

「そう・・・ですか。姉様はいったい何を考えているのですか・・・」

ハクアは虚空に向かいぽつりと呟いた。


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