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10年を捧げて願う
彼の言葉に私は何も言えなかった。ただ、こう思った。彼はもう私のことをあの星へ連れて行ってくれないのだろうなと。
僕は言った後、後悔した。これだけは言うべきでなかったのではないか、と。これで彼女のことを幸せにすることができないのではないか、と。
2人の間に沈黙が流れる。この重い空気を軽くすることなど僕には出来そうにない。いままで彼女に引っ張られて、彼女に頼って生きてきた僕には。
彼女と始めてあったのは小学校の入学式。彼女は僕の隣の席だった。「おはよう。これからよろしくね。」僕が挨拶すると、彼女も「よろしく。」と声を返してくれた。それから月日は流れる。家族ぐるみで仲良くなった僕たちはその年の夏休みキャンプへ行く。始めて彼女が「あの星へ行きたい。」と言ったのはあの日だった。
その時正午を告げる鐘がなった。そして僕は口を開く。
我 が人生の内の10年を捧げて願う。我があの星へ行きたいという願いを叶えたまえっ!」