10年を捧げて叶える
寿命を10年払うことでどんな夢でも叶えることのできる世界。そんな世界に僕は住んでいる。
僕には2つ秘密の夢がある。1つは僕の隣の席の彼女と僕の間にはある夢で、それは「あの遠い星へ行こう」と言う夢だ。僕らは夏休みに決行しようと決めている。
彼女とは小学校からの友達で今年で11年間一緒にいることになる。彼女は静かな人で星が好きだ。小学校の自由研究でプラネタリウムを作るくらいに、だ。余談だがそのプラネタリウムは彼女が自由に星座を作ったらしくデタラメだった。
そしてもう1つは彼女とおとづれた星で彼女に告白をするというものだ。
この世界には沢山の国があってその数だけ法律がある。しかしその中にいくつか共通のルールがありその中で特に重要なのが「人の権利を侵害するような夢を叶えてはならない」「時間旅行をしてはならない」というものだ。これはある戦争の後決められた世界共通のルールらしい。
都市伝説のようなものだけど時間旅行をすると、時間旅行を行なった日まで時間旅行を行なった人は行なった瞬間までは存在し時間旅行を行なった時間になると存在が消えるという事態が起こるらしい。
僕らは夏休みにどの星へ行くのか相談する。「あの星がいい。」とか「あっちがいい。」とかだ。元々僕も彼女も星を眺めるのは好きでも星自体には詳しくないから、結局恒星へだけは行かない方にする。ということになった。
あっという間に日々は過ぎて夏休みの初日となった。
僕らの住む日本にはある伝統がある。それは身内が夢を叶えるとき親戚一同が集まって宴会をするのだ。僕と彼女は一緒に叶えるためどうせならと2家族一緒に行っている。その宴会では親戚のすでに夢を叶えた人たちが「自分はどんな夢を叶えた。」っという話をしてくれる。
死ぬ寸前の飼い犬と1日だけ会話した。とか
両親の遺品の過去を見た。とかっていうおもしろいものや現金を大量に貰ったとか美人になったとかっていうおもしろくないものなど様々だ。その中でも僕のお気に入りは僕のおじさんの「好きな人の夢を叶えてあげた。」という話だ。なんでも世界旅行を好きな人とともにしたらしい。そしてその相手と旅行先で結婚した。って話だ。
そのおじさんが僕に「うまくやれよ。」と声をかけてくれた。僕は「うん。任せてよ。」と言った。
その後僕は一緒に行く彼女の両親にも挨拶へ行った。彼らに挨拶すると辛そうな顔をしながら「娘をよろしく頼む。」と言われた。話していると彼女がやって来て「明日は楽しみだね。」と笑いかけた。僕は「ああ。」と答えた。
翌日、高揚感によりほとんど眠れずあくびをしていると彼女に「おはよう。寝てないの。」と聞かれた。「わくわくしてさ。」と返すと「私もなの。」と返された。なんだか嬉しかった。
「我が人生の内の10年を捧げ願う。我が〜〜という願いを叶えたまえ。」これが願いを叶えるための呪文だ。そうすると叶えられるらしい。またこの呪文は正午から13時までの間に言わなければならないという制約がある。そのため僕らは向こうに少しでも長くいるために12時ちょうどに呪文をいうことにしている。
そもそもなぜ2人で行くかというとある理由がある。それはどこかへ行く場合、1人では片道しか行けないのだ。それが地球上ならばなんとかなるかもしれないが宇宙となると話は別だ。もし1人で行ったなら絶対に帰ってこれない。だから2人なのだ。ちなみに呪文は彼女が先に、僕が後に言うことにしている。
僕らは宇宙服を着た。なんでも「宇宙へ行くという夢を叶えたカップルが、宇宙服を着ずに宇宙へ行き死んでしまう。」という事件が一昔前に多発したためだいたい県庁ほどの役所には必ずある。そこから借りて着たのだ。
正午を僕らは待つ、10、9、8、....時間は過ぎて行くそして正午になった瞬間彼女が「我が人生の内の10年を捧げて願う。我があの星へ行きたいという願いを叶えたまえっ!」と唱えた。その瞬間僕らは宇宙へいた。僕は彼女に「好きだ。付き合ってほしい。」と伝えた。しかし返事は返ってこない。20秒ほどしたとき彼女の声が返ってきた。「ありがとう。嬉しい。けどね、私、、、。」そこで彼女は息を引き取った。
僕は認めたくなかった。彼女が死んだこと。夢を叶えても叶えれなかったこと。そして決めた。彼女を救うのだ、と。そして俺は唱える。「我が人生の内の10年を捧げて願う。我を今日の3年前、彼女とここへ来ると決めた日に戻りたいという願いを叶えたまえ。」と。