8.学院時代(2/3)
戦闘シーン……戦闘シーンがァァァッ
前触れまでしか書けませんでした。
申し訳ございません!!
違いは間違いなくガル無双ですので!!
──防戦一方
現状はまさにこの一言に尽きた。
ギシリと音がなる程に歯を噛み締めて、ミーシャは目の前に存在する強敵──劣飛竜を相手に成せるだけの防御魔法を展開する。
彼女の背後に居るは、もはや一縷の戦闘機能も為さない気絶寸前の男子二人に女子一人。
今状況で何もモーションを起こさない三人にフィールは腹の据える思いであったが、それを指摘する余裕がないほどに劣飛竜の猛追は劣悪極まりなものだった。
──先生と訓練してた時はBランクモンスターなんてって思ってたけどッ
この時の先生とは、7歳の頃から彼女個人を指導をしてきたフルーラの事である。
前方に展開した今も壊れ続ける防御魔法を修復で繋ぐフィール。
──まだ一人では対処しきれないなんてッ
しかし、どれだけ直してもすぐに壊される魔力障壁を見て、彼女は心が折れ掛ける。
──ックッ!? マズイッ!! 保有魔力がッ
何度も何度も壊されては再生をしてきた彼女にとって、その消費魔力は相当なものでありもう既に底を尽きつつあった。
そして今、最後の魔力で張った魔力障壁を劣飛竜の棘有りのヘビの尾が捉え破壊する。
そのままフィールの体を打ち飛ばそうとするその頑丈そうな緑の尾。
──イヤッ! 死にたくないッ!! 誰か……誰かッ
その鞭のような撓り間近で目にしてフィールは、今まで人生で一度も発したことのなかった救いを求める言動を口にした。
「助けてェェェェェッ!!!」
その叫びが届いたのかフィールの体を捉えようとしていた尾が迫る、既に彼女が死を覚悟してカウントダウンに入ろうとしていたスローモーションに映るその光景に今までの抗争とは異なる新たな介入があったのだ。
その介入によって劣飛竜が吹き飛んで行った方向を眺め、その飛んで言った方向とは反対の方にゆっくりと頭を動かした。
そこに立つのは、長い銀髪を後ろの下で結んだ美青年。
その彼はフィールの状況を把握し、彼女のいる場所へと歩み寄る。
そして、地に腰を落とした彼女の目線に合わせると、そのまま彼女の頭に手を置き言葉を発した。
「よく頑張ったな、フィール=アスタリア。後は俺に任せておけ」
そう笑顔で言い切ると立ち上がり、彼が飛ばした劣飛竜を鋭い目線で睨み付ける。
「女の子を傷つけた代償は高くつくぞ、このトカゲ野郎ッ!!」
その声とともに少年——ガル=ナターシャは劣飛竜の方へと走り出す。
そんな彼の背中を見つめるフィールの瞳には、学年最強と呼ばれていたガルを敵対視するのではなく、まるでお伽話に出てくる白馬の王子様を見るような熱の篭った恋慕が浮かんでいた。
──
ガルがワイバーンを探知し終えた頃に遡る。
ガルはこの場所から三十キロは離れているであろう索敵地に無属性魔法の〈魔力強化〉を脚部に発動させ、分速一キロと言ったペースで山道を駆け抜けていた。
──おそらく感知の感触からして竜種……いやその中でも雑魚の劣翼竜か
ガルの〈魔力探知〉は、術者を中心に半径三十キロまで確認することができる。無属性魔法の使い手は大体この魔法を使う時、半径五キロ精々である。
故にガルの魔力量は常人の魔法師とは一線を画するものだということは明らかである。
そんな〈魔力強化〉〈魔力探知〉の二つを同時に発動するガルははっきりと言って異常だ。
齢十二にしてその異常の塊へと至った少年は遠回りすることなく常に一直線に走り続けた。
走り始めて三十分近くになる頃だった。ガルの目に一体の劣飛竜と一人の白髪美少女がせめぎ合っている場面が遠目に見えた。
ガルは〈魔力強化〉を使い視力を強化する。
──やはり、劣勢か……それにしても彼女、魔力運用が上手いな、だがその魔力がそこを尽きようとしてる
ガルは歯噛みし更なる強化を脚に施す。
距離を、一キロほどから徐々に近づき百メートルと詰めていく。
ガルがちょうど百メートルを切った時だった。彼女の展開する魔力障壁が遂に再生されなくなっていた。そして最後の魔力障壁を破壊した劣飛竜の尾がそのままに彼女の体を打とうとしていた。
「クソが」
ガルは、二重に脚に掛けていた〈魔力強化〉に更なる重ねを行使する。
通常、魔法の二重行使をするのにも相当な技量、それこそ冒険者の一線に位置する魔法師レベルの経験や技術が必要となる。
だがそこはガル=リターシャ、一応世界最強のサシャ=フォレスバルタの弟子としてSランクモンスターを主とする山を五歳から十歳という幼い時期の五年の間に制覇した少年である。
その期間には、普通に冒険者として過ごすこととは隔絶した経験が発生した。
ならば、魔法の三重行使など彼にとっては、何ら難しいことではない。
「助けてェェェェェッ!!」
その少女の救済を呼ぶ声に今、少女に尾を打ちつけようとする劣飛竜の懐へと〈魔力強化〉三重行使の脚力を以て達する。
そこでガルは勢い殺さずに回し蹴りで異常に強化された脚が劣飛竜の腹部を捉えた。
そのガルに蹴られた衝撃で何本もの木をへし折って飛んでいく劣飛竜。
そんなありえないような光景に先まで死と隣り合わせだった少女は飛んでいく劣飛竜を眺め、その原因を起こした者の方を見る。
ガルはそんな白髪美少女と、その後ろにいる三人を見て状況を察する。
少女は、女であるにも関わらず身を賭して男を含めた三人の命を守ろうとした。
正直ガルにとっては、この少女のことを見直す必要ができた。
ことある事に、学院最強と呼ばれるガルを敵対心剥き出しの目で睨みつけ唯我独尊な行動をしてきた少女。
そんな奴が、それこそガルがこなければ死んで亡くなるレベルにまで、格上の相手にあたる劣飛竜にへと立ち向かった。
今も、虚ろながらも強い意志が瞳に宿っていた。
だからこそガルはそんな座り込んだ彼女に近づいて目線を合わせるようにしゃがみこんで彼女の頭に軽く手を置きこう口にした。
「よく頑張ったな、フィール=アスタリア。後は俺に任せておけ」
その自身の言葉に、彼女の体が弛緩したのを確認したガルは立ち上がると腰に携えた武器──地から自身の肩ほどの長さのある長い細剣を鞘から引き抜き、起き上がろうとしている劣飛竜を見据えて言葉を発する。
「女の子を傷つけた代償は高くつくぞ、このトカゲ野郎ッ!!」
それと同時に、ガルは上体を低くして一歩を踏み出し〈魔力強化〉を行使し加速する。
一方の劣飛竜も腹が立ったのか大きな咆哮を上げてがるのほうにと地を走り出す。
今より互いが衝突しようとしていた。
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次回は、無双シーンをお楽しみください!