7.学院時代(1/3)
急いで書いたので、後に訂正を入れると思います。
そして申し訳ございません!
戦闘シーンは次回に持ち越しとなってしまいました……
今から四年前、フィールとガルがウェルトルネス学院の戦闘学第一学年次基本課程を終えた時のことだった。
第二学年となると、本格的な実地訓練が導入される。
それはその年も例外なく行われた。
内容は、三人以上でパーティを組み、Eランクフィールド【アルドマの森】にて出現するゴブリン、スライム等のEランクモンスターの討伐部位を定刻に担任へと提出するというものだった。
「三人から四人でパーティを組め」
その実地訓練の男性監督──この時はフィールとガルのクラスの担任の声に校庭に集められた生徒が動く。
一つ、また一つと生徒達は班を作っては担任に報告し場所を移動していった。
時間が経つと、残る者も自ずとはっきりしてくる。残るは五人。そこにはフィールとガルの姿があった。
すると、一人の少年──ガルが監督教師の所に行って何やら耳打ちをする。
耳元から笑みを浮かべて距離をとるガルに担任は呆れ顔を作るも、右の方──パーティ結成後向かう場所に逆手の右手親指を向けた。
そのモーションを見たガルは歯を見せニッと笑うと、「サンキュー先生!」と言ってそちらの方角に歩き出した。その時のガルを、フィールは敵対心の孕む目で見ていた。
ガルが一人で行ったことでこの場に残る人数はフィールを含む四人となり、監督教師によって強制的にパーティを組まされることとなる。
そうして、全ての生徒が(ガルを除いてだが)パーティを組んだのを確認した監督教師はこの場にいる四人を連れて先に進んだ生徒達の方へと向かった。
ちなみに何故、フィールが容姿が優れているにも関わらず一人でいたかといえば、近寄り難い雰囲気を出しつつそれに強さが拍車をかけ、この時には既に【孤高の天使】と呼ばれる存在だったからだ。一方のガルは、フィール同様、容姿そして圧倒的なまでの強さを兼ね備えていたが、フィールのような雰囲気を出していなかったので誘ってくる者が多くいたが、彼はそれを丁重に断り、あえて一人となって実地訓練に望むことにしていた。
◆◆
「これより実地訓練を始める!」
監督教師の声に、皆が一点に視線を集める。
向かう先は当然、監督教師の方で、その彼は生徒全員が自分に注目するのを確認すると言葉を続けた。
「今の時刻は13時だ。この時間は奴らも行動し出す時間帯である」
奴らとは、魔物のことである。
「これは実地訓練。当然、戦闘に入ることを想定したものだ。各班に携帯用の時計を配布する。短い針が15をさす時までに、今いる場所に班でEランクモンスターの討伐部位を10集めてきた場合は順位順で加点17時までに集めてきた場合は合格とする。それ以外は失格だ。もし討伐部位が10集まっていなかったとしてもそれまでには帰還することを原則とする」
その説明に、生徒達は意欲的な姿勢になる。
「だが実地訓練には常に、一歩間違えれば死と隣り合わせになることを忘れるな」
その言葉に浮き足立ってた生徒達は唾を飲み込んだ。
「では必ず油断をしないように。では開始だ!」
開始の合図に第二学年四クラス総勢百の生徒達が一斉に森の中へと走り出した。それは二人も例外はなく、ガルは木の上に跳躍しその上を、フィールは奇しくも組むこととなった溢れものパーティと共に地上を駆け出した。
──
開始から一時間もすると、帰ってくる者がいた。
──ガルである。
「……リターシャ、お前はもう終えたのか?」
監督教師は呆れた表情を浮かべながらに戻ってきたガルの苗字を呼ぶ。
「うっす先生! 詰め込めなくなったので。これを持ってきました」
そう前に差し出す彼のパンパンな袋の中には言葉の通りに、軽く十を超える討伐部位がぎっしりと詰められていた。
「新しい袋を下さい!」
「あ、ああ……」
急かすように次の袋を希望するガルに、監督教師は本来渡さなくても良い二つ目の袋をつい渡した。
それを受け取ると、再びガルは森の中に駆けていく。
「……アイツはいったい幾つ持ってくる気だ?」
監督教師がそう呟いていると、しっかりパーティとして討伐してきた者達が彼の元へと辿り着いた。
その後も時間が経つと大半のパーティは訓練を合格しを、後は溢れ者パーティとガルを残すのみとなっていた。
監督教師は、このまま何も無く実地訓練は終了を迎えると思っていた矢先のことだった。
毎年協力を頼む魔力感知官の1人が監督教師の前へと走ってきた。
「何か異常でも起きましたか?」
「大変です! Bランクモンスターがこの山で確認されましたッ!」
「何だとッ!?」
「そして、その近くに薄らと人の魔力四つ確認できたとのことです!」
「ッ!?」
どうやらこの山で予想外の事態が起きたらしい。
異常な状況だと生徒達にも伝わったのか場が騒がしくなる。
「全員、校舎に戻れ!」
監督教師の声に生徒達が走り出す。
四つの反応が溢れ者パーティの事だとは当然、監督教師は察していた。
生徒達が避難するのを堪忍していると、監督教師はの元に先ほどの魔力感知官が近づく。
「どうやら、常人ではないほどの魔力を持った人の存在も確認できました」
魔力感知官のその言葉を聞いて、絶望だと思われた状況が打破できるかもしれないと、監督教師が顎を抑える。
元Aランクの冒険者もいるウェルトルネス学院の教師陣を軽く圧倒した存在。
正直、情けないと思うが彼に希望を託すしかないか、と監督教師は目を瞑る。
その存在とは一人の生徒である。
やがて監督教師は目を開くとその存在の名をポツリと呟いた。
「お前だけが希望だ──ガル=リターシャ」
◆◆
二つ目の袋も入り切らなくなったことを確認すると、額に浮かぶ汗を腕で拭った。
「よし、戻るか」
ガルがそう踵を返した時だった。
彼が展開していた魔力探知が一つの強大な存在を捉えた。
彼には、元素──火・水・土・風のようなものを生み出す魔法は使えないが、自身や環境に干渉することのできる無属性魔法だけは使える。
その一つが、〈魔力探知〉。
それは魔物感知官のような魔道具を使って魔力を保有するモノを感知するのではなく、無属性魔法特有の魔力を周囲に薄く広げて触れたモノの存在を使用者に伝える魔力運用法である。
同時に探知対象となっていた四つの人の存在に気付くとガルは足を止める。
「何でこのクラスがこんなEランクフィールドにいるんだよ」
彼はそうボヤきつつも、足に魔力を集約させてその強大な魔力観測源へと駆け出した。
ちなみに開始時にも使ったこの部分強化も、無属性魔法特有の運用法〈魔力強化〉といったものである。
「間に合ってくれよッ!!」
そう言葉を吐き出すと、ガルは強化した脚力で一歩目を踏みしめ、歯を食いしばり強大な魔力あるの方へと駆け出した。
──
一方の溢れ者パーティは現在フィールを除いてほかの三人が腰を抜かして肩を震わせていた。
ただ一人立っていたままだったフィールも同様な反応をしていた。
「何で……」
そんな反応をとってしまうのも無理はない。
ドラゴンの頭にコウモリの翼、一対のワシの脚に先端には矢尻のようなトゲを供えた蛇の尾を持つ空を飛ぶ緑色の巨大な魔物。
そう、彼女らの前に姿を現したのはBランクモンスター
──劣翼竜
であったのだ。
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次回は必ずガルの戦闘シーンに入れますので、読んで頂けると幸いです!