5.ギルドマスター(2/2)
前回の続きです!
ブクマ増えていました。
感謝です!!
「で、何でこんなところに師匠がいるんだ?」
「前ギルドマスターに頼まれたからよ」
ガルはそこで何故と問う。
「ガルを山にやった後、暇でしょうがなくていつものように鎧を着て旅に出たの。絶望の峠、無情の神殿、破滅の小国とまあ色々探索したわけ」
「はい、ストップ! 何でそんな例外級の巣窟に行ってるんだよ!?」
例外級とは、EからSとあるモンスターの階級では測りきれないモンスターのことである。
「先も言ったでしょう、暇だったからよ。話を逸らさないでちょうだい」
サシャに逆ギレされるガルは、何も言えず話の続きを素直に聞くことにした。
「それで、この街に来る道中のことだったわ。何やら強い魔力を感じた私はそこに向かうことにしたのよ。それが前ギルドマスターだったわけ。盗賊達は全員彼の手によって倒れてたわ。けど彼もまた、疲労で倒れていたの。それで馬車を見てみたら冒険者ギルドのものだったから、魔法でチョチョイと街に転移して感謝を言われたの」
「……それでこの現状にどう繋がるんだ?」
さり気なく転移のフレーズが聞こえたことを受け流すガル。
「いやー、この街に来た時、それこそ昔のことだったからこの街関連で転移できるのって属する国の城だけだったのよね。それで転移したら色々あって彼の後釜に私が入ったのよ。もちろん条件付きだけれどね」
そう笑って言うサシャ。
もうガルは何も言えない。
一国の城に転移するとかこの人何言ってんだ状態だ。
「新しいギルマスが世間に知らされてないのは?」
「条件の一つだね。こんなんでも一応、世界最強って言われているからね。面倒ごとはなるべく避けたい主義なのよ、私は」
「それはギルドの従業員であってもか?」
「ええ」
徹底しているなと思うと同時に、なる程とガルが頭の中で頷いていると、サシャの魔の手によって空気と化していたフィールがようやく口を開いた。
「……鎧、転移、例外級の巣窟に行く化物冒険者……。もしかして貴女が世界最強のサシャ=フォレスバルタ様なのか……ですか?」
その言葉にガルとサシャは向き合って、小さく吹き出した。
「なんで笑ってんだよっ!?」
「いや、今更だなと思ってな、ププッ」
「可愛いわねこの子、ふふっ」
そう、フィール=アスタリアは感情と表情の幅が広い。
非常に弄るにはもってこいの対象なのだ。
「……その本人だなっ!?」
「ええそうよ」
まさか中がこんな人だったとは、と言った興味津々の顔へと変わった。
「私に魔法を教えてください! 更なる高みに行きたいんです!」
「止めとけ」
フィールの口にした願望にガルが即座に反対する。
「なんでだよっ?」
「聞いてなかったのか? 俺はこの人の弟子だ。だがまともに教わったのは、基本という基本だけ。それだけで上級モンスターの巣窟に俺をポイッ、だぞ? 悪いことは言わない、せめてアドバイスを貰うに留めとけ」
「私も初めてガルという弟子をひろっ──うグッ!?」
何かを言いかけたサシャの口をガルが右手で塞ぎ、そのまま彼女を睨んだ。
「どうしたんだ?」
不審な顔でガルに尋ねるフィール。
「何でもないよ。この馬鹿エルフが俺の過去をペラペラと話そうとしただけだ」
「気にな「ダメだ、忘れろよ、なっ?」……分かった」
威圧のこもったガルの声にフィールは思わず口籠もる。
その後のガルの一転した笑顔に返事はしたものの、フィールは釈然としない気持ちだけが残った。
「おいっ、クソ師匠。勝手に人の情報をペラペラと喋んなよな」
「悪かったわ。気を付ける」
その言葉を聞いて、張り詰めた空気の中でようやくガルがため息をついた。
「はぁ、サシャ姉。フィーは魔法使いとして必ず大成する。だからアドバイスだけはしてあげて欲しい」
ガルの言葉に二人は驚きの表情を見せる。
だが、その後に見せる表情は違うものだった。
サシャはガルの呼び方とお願いを受け笑顔で頷き、フィールは顔を赤く染め恥づかしがりつつもサシャの頷きに喜びの顔を見せる。
雰囲気がようやく弛緩したな、と彼女らに見えないようもう一度ため息を吐いた。
そこで、ガルは、ここに来た理由を思い出す。色々と予想外の事がありすぎて頭の端に追いやられていたらしい。
「そういえば、そろそろ当初の目的を知りたいのだけど」
ガルの言葉に、二人は忘れてたといったキョトン顔を作る後「あっ」と声を上げる。
ガルの呆れ顔に二人は苦笑いを浮かべると、そこでサシャがコホンっと間をとった。
「取り敢えず、二人共、学院の推薦状によって試験無しに冒険者登録が受理されました。そして二人共、討伐クエストのあるDランクからのスタートです。まずこれに触れて」
そう言い、サシャは何やら水晶を取り出した。
二人は言われた通りに触れると、その数分後、カードをサシャから渡される。
「それが冒険者のギルドカードね。今触ってもらった推奨には個人情報って言っても名前、年齢だけだけど、その二つを読み取ったの。それこそ偽物が偽りのカードを作ったりしないようにね。そのカードは犯罪とか犯したらすぐにこっちの方で停止ができる。ないとは思うけど気をつけてね? ギルドのおおよその概要は把握してるわよね?」
そのサシャの確認に、二人は頷く。
・ギルドはFランクからSランク、そしてサシャのようなオーバーと呼ばれる階級が存在し、大体は中堅と呼ばれるC・Dランクまでは上がることが出来る。
・ギルドカードを使うことによってお金を預けることが出来る。
・犯罪を犯した者には厳罰が処される。
といったものが省略された内容だ。
サシャはガルたちの頷きを確認すると、より一層仕事顔にして口を開いた。
「では、優遇の代わりに一つやってもらいたいことがあります。十日後にて、Bランクパーティの補佐としてAランクモンスター、咆哮地竜を討伐せよ。これが達成出来なければ、一年間はランクの昇格が停止されます」
補佐を強調して口にするサシャの言葉に、ガル、フィール両名の身体に力が入る。
どうやら、この自分達では倒してはいけないと言外に込められたモンスター討伐が、二人の冒険者として初めて行うクエストらしい。
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そろそろ過去話入れようかな?
主人公最強を謳ってる作品に戦闘描写がないのはアレだし……