10.床に突き刺さりしモノ
十日連続投稿!!
ギルドマスターであるサシャに最初のクエストを言い渡されて一週間、ガルはあの場所を訪れていた。
今、彼の目の前にある建物。
「あいっ変わらず、ボロいな此処……」
築何年経ったかも検討のつかないボロッボロの木造建築な一週間ぶりの街外れにある掘っ建て小屋。
そう、ガルが新武器を依頼したトールの鍛冶屋である。
「入るぞ……って暑っ!?」
そう言ってガルは扉を開けると、学院時代の学生寮にあったサウナを彷彿とさせる暑さが彼の体を襲った。
思わず瞑ってしまった目を開くと、ガルの目に床でうつ伏せになるドワーフの姿が目に入る。
近寄ってみると、トールがうつ伏せでいびきをかいて寝ていた。
「うつ伏せって寝苦しくないのか……?」
ちなみにガルの寝方は仰向けである。
取り敢えず大事ではないことが分かったので、というより扉を開けた時から魔力を保有する存在を確認していたので生きていることはわかっていたがひとまず安心する。
死した者は魔力を失う。それは世の常である。
こんなに穏やかそうな横顔で寝ているやつが死んでいるはずがない。
そう思ったガルは、敢えてこう言って寝た状態からはみ出る長い髭を引っ張った。
「生きてるか〜!?」
当然トールの反応は
「ウグッイッイタタタタッ、イタッ────
(割愛)
髭を優しく伸ばして整えるトールが口にする。
「何故、お前はことある事に俺の髭を引っ張る?」
「花を見つけた蝶と同じ反応だよ」
「今後もそうだってか!?」
「おう!」
間をおくことなく頷くガルにトールは頭を掻き毟る。
「で、今日来たってことは」
「出来たんだろ?」
「……あぁ」
「何でそんなに声が小さい?」
トールのなんとも言いがたい反応にガルは首を傾げる。
「取り敢えずこっちに来てくれ」
「了解だ」
そうして室内の隅に行くと一つの棒が床を突き破って刺さっていた。
「……コレだ」
「……コレ?」
「武器」
「……コレが?」
トールの言う武器は、確かに見える部分が剣のように改良された柄である傘らしき姿ではあった。
「で、なんで刺さったままなんだ?」
そのガルの問いかけに苦い顔を作るトール。
「それはその、な?」
「で何だ?」
「……抜けないんだ」
「……抜けない?」
「重すぎて持ち上がらないんだ……」
なんと、片手で扱う武器を重すぎると言い出すトール。
「ドワーフの力でか?」
「ああ、だから扱う者が抜けないと話にならん。てことで試してみてくれ」
その言葉に思わず呆然の顔を浮かべるガル。
「……これはさしづめ王都にある聖剣かなんかか?」
「言い得て妙ではあるな」
「……はっ?」
ガルは、自身が冗談で言った呟きに、即ちかの伝説の武器である聖剣と同等の武器であると言ったトールに真顔で反応した。
「物語で聞くような例外級越えのモンスターすら屠れる聖剣と同等とでもいうのか?」
「その通りだ。試せてはいないが俺が寸分の狂いなくしっかりと作り上げていたならば、例外級の素材、無用の長物と言われていた最強鉱石、そして我が父から受け継いだ世界最高峰の鍛冶技術だ」
トールのいつにもなく真剣な表情に、ガルはゴクリと唾を飲み込む。
「故に政権と同等、もしくは防御もできるという点ではそれ以上やかもしれん。さぁ抜いてみよ」
「ゴクリ……」
もはやガルはあまりの事に音を口で表す始末。
ゆっくり床に突き刺さる全貌の見えない傘に近づく。
そして、ガルは両手を柄へと持っていった。
「ゴクリ……」
再度口にする唾を飲み込む音。
どれだけ重いか分からない。されど必ず抜いてやる。
そんな想いを一心に、一思いに傘を抜き去る。
──スポッ
「……へっ?」
あまりにも簡単に抜けたことにガルは呆気に取られ、勢いよく抜き過ぎたために尻から地に落ちていく。
確かに、ガルは五年間の山でのサバイバル、そしてその後の五年間の学院での日々の鍛錬。その全てに妥協せず全力を尽くして今日まできた。
力だってそれなりに得たつもりだ。
だが妙にもあっさりし過ぎている。
そんな感想を抱いてガルはゆっくりとトールの方へ向く。
するとこちらも呆気に取られていたトールは何かを思い出したかのように手を打った。
「……そういえば、ガルの残留魔力を記録していたのを忘れてた」
(…………はて? 何のことやら)
「……残留魔力ってなんだ?」
「あ、あぁ、残留魔力っていうのはな、要は初めてお前さんがここに来た時、針に糸を通してもらっただろう?」
そう確認をとってくるトールにガルは頷きを返す。
「その時、ガルは魔法を使ったはずだ」
「へぇよく分かったな、その通りだ」
あの時のガルは、腕に無属性魔法〈魔力強化〉を使って試験を成功させた。
「我の家系は代々、魔力を目で見ることが出来る。そして、それを収集する術も持っているのだ」
「それが、俺がこの傘を抜けたのとどう関係が?」
「それはな、お前の残した魔力を保存し、武器作成の際に練り込むことでその魔力の持ち主──今回の場合は、ガル専用の武器と化したのだ」
その後のトールの説明を要約すると、ガルの手に持つ傘は彼以外が保有する魔力を弾くようになり、逆に彼自身が持つと武器が同一の魔力であると認識し適合者と認め武器本来の能力を昇華させることができるという事だ。
「凄いなそれは……だがそれなら、何故鍛冶業界はこれを行ってこなかったんだ?」
「言っただろう? 我の家系が魔力の見れる家系であると」
「でも残留魔力ってのは、空気中に残るわけだろ? それなら集める術もあるはずでは?」
ガルの考察にトールは首を横に振る。
「確かにそれは出来る。だかなガル、空気中には異なる魔力が多く漂っているんだ。その事なる魔力を一緒に武器へ込めたものは脆くなる。普通にやるなら魔力が込められることは無い。だが込めようと思うなら一種の魔力でなければならない。もう分かるな?」
「つまりは、その限られた魔力を収集出来るからこそスティード家──お前の親父さんが世界最高峰の鍛冶師となるに至った理由ってことか……?」
「そういう事だ」
(流石、最高峰と言われるだけのことはあるな。やっぱりそこまでに辿り着くにはオンリーワンな何かを持ってなくちゃならないって訳か)
そう素直に感心するがそれよりも、ドヤ顔でガルを見ているトールに彼は物申したいことがあった。
「何故、それを忘れてた?」
その言葉に、トールはダラダラと汗を流し始める。
それからは数々の弁解の言葉がトールの口から漏れ出し初め、その間のガルは一切表情を変えることなくジト目をトールへと向けていた。
次回、本格的な武器である「傘」の説明回!!
ガルとトールの絡みが若干ネタ化してますね。
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